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後日談 クリストフ編 新婚旅行へ行こう!
8 些細なことが大きな幸せ
しおりを挟む目を開けるとクリス様の美しすぎる寝顔が見えた。
(まつ毛長いな~~~肌も綺麗……)
私がじっとクリス様を見つめていると、クリス様が目を開いた。
「ベル……おはよう」
いつもの凛々しいクリス様や夜の甘いクリス様も素敵だが、起き抜けの少しぼんやりとしたクリス様も可愛くて私は思わず微笑んでいた。
「おはようございます」
「ふふふ。どうしたの? もしかして……惚れ直した?」
「……そうかもしれません」
「え? あ~~~もう~~~」
チュッ♡
クリス様がぎゅっと抱きしめて私のおでこにキスをした。それだけで私はここ数日のベットの中でのことを思い出して真っ赤になってしまった。
離宮に移動して数日。
私たちは、折角隣国に来ているのに、愛深めることとヴァイオリンを弾くことしかしていません!!
こんな退廃的な新婚旅行でいいのでしょうか?!
今日だって、この国の市場に珍しい物を探しに行こうと話をしていたのに……昨日遅くまで? 朝方まで? え~~。愛を深めていたため、もうお昼になってしまいました。
「ベル~~。今日もこのままここで過ごそう?」
クリス様が私の髪にキスをしたり、肩を撫で始めた。
私は学びました!!
ええ!!
学びましたとも実地で!!!
これは事が始まる前兆なのです!!
私はクリス様の方を向いて真剣な顔をした。
「クリス様!! このままでは、私たちは折角隣国に来たのに、ベットの中しか知らないという旅になってしまいます」
するとクリス様が「クスクス」と笑いながらチュッ♡と音を立てて私の肩にキスをしてきた。
「ひゃ……ん」
「そういう旅行もいいんじゃない?
だって帰ったらこんなにじっくり、ベルの身体を隅々まで堪能……」
クリス様の瞳が段々と色気を放っていてこれはもう、あと一歩でまたベットから出れなくなる事態に!!!
私は急いで、クリス様から離れた。
「あ~~~~~!!! それ以上は!!
もう起きましょう!!
どんな物が売っているのか見に行きましょう!!
お腹も空きましたし街に行ってみましょう!!」
「ふふふ。元々そういう予定だったしね……じゃあ、街に行こうか」
「はい!!」
その日ようやく、新婚旅行数日目にして私とクリス様は出かけることにしたのだった。
+++
「クリス様!! 見て下さい!! 我が国ではここの3倍の値段ですよ?」
「そうだね~。さすがは産地は安いな~」
クリス様と私には護衛がついているものの、少し裕福な商人が着るような服を着てのんびりとお店を見ていた。護衛の人も騎士とわからないように一般の人の服装をしてくれていつので目立たない。
この街は治安がいいらしく、お忍びでのんびりと買い物をしても大丈夫だと実父に言われたのだ。
自国では私もクリス様も皆に顔が知られているのでとてもじゃないけれど、こんなにのんびりとは買い物などできない。
「この食べ物はなんでしょうか?」
「ん~~。なんだろう? すみません、これはなんですか?」
私がクリス様に尋ねると、クリス様も知らなかったようで、店の人に聞いてくれた。
「これは豆を挟んであるんだよ」
「へぇ~豆かぁ~。どうする? ベル?」
「食べたいです」
「うん。じゃあ。すみません、これを2つ下さい」
クリス様がお店の人に注文すると「はいよ」と答えてお店の人が食べ物を作り始めた。
「しっかし、2人とも美男美女だね~~夫婦かい?」
お店のおじさんが機嫌ようさそうに笑った。
「はい。新婚です」
クリス様がご機嫌に答えた。
確かに夫婦なのだが、なんだか照れてしまう。
「いや~~若い夫婦いいね~~~あ、そうだ!! ここでキスしてくれたらおまけしちゃうぞ?」
するとクリス様が私の方を見て含み笑いをしてみせた。
「だって? どうする?」
「え? え? あの、その恥ずかしいので、遠慮させて下さい」
「……だそうです。妻は恥ずかしがり屋なので……」
「えええ~~~~~」
すると、なぜか私たちのやりとりを見ていたらしい他の人からもブーイングを受けた。
「こんな素敵な人たちのキスとか見たら、絶対いいことありそうなのに~~~」
「見た~~~い!!」
「キス、キス♪」
すると護衛の1人が私たちに耳を寄せてきた。
「すみません。たまにこんな風に悪乗りしたりするのですが、黙らせますので、お咎めは勘弁してあげてもらえませんか? なんというか……この辺りではこれは日常の風景ですので」
「いえ。咎めはしませんが……そうですか。こんな風潮がある場所なのですね」
私はあまり参加したことはなかったが、日本の飲み会などでノリで『キス、キス』と盛り上がっている人を見たこともある。きっとこれもその一種なのだろう。
「困ったな~どうする?」
クリス様が全然困っていない顔で私を見ていた。私はクリス様の服の裾を引いた。
「あの……クリス様……どうぞ」
「え? いいの??」
「はい」
「じゃあ、遠慮なく」
クリス様がためらうことなく、私の唇にキスをした。
「キャ~~~~~~~~~!!!!」
周りはまるでお祭り騒ぎだ。
(恥ずかしい~~~)
「おお~~~!! いいもの見せて貰った!! 一つ分タダだ!!
仲良く食べてくれ」
お店の人が豪快に笑いながらクレープのような見た目の食べ物を渡してくれた。
「ありがとうございます」
座って食べれそうな場所を探して歩いているとクリス様が嬉しそうに笑った。
「嬉しいな。ずっと憧れてたんだ。
一度でいいから、こんな風に立場を忘れて、ベルとデートしてみたかったんだよね。
まさか、絶対に叶わないと思っていた夢が叶うなんて」
クリス様は王族だ。
幼い頃からご公務で色んな場所に行っている。
どこに行っても王族としての扱いを受けていた。
それはきっと孤独だったのだろうと思う。
私は嬉しくなって、クリス様と組んでいた腕に身体を寄せた。
「そうですね!! 私も嬉しいです!!」
「ああ、本当に最高の新婚旅行だな~~~」
こうして私たちはデートを堪能したのだった。
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