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後日談 クリストフ編 新婚旅行へ行こう!
4 湖上での口付け
しおりを挟む「それで、なんとエミリーったら、恥ずかしくプロポーズを一度断ったらしいんですけど、今度はエミリーから逆プロポーズをして結婚が決まったんですよ」
私はクリス様とお話できるのが嬉しくてつい夢中になってしまった。
「え?! そうか……なるほど……女性は恥ずかしく断ってしまうこともあるんだね。
本当に女の子の心は難しいな~~」
クリス様はずっと真剣に話を聞いてくれた。
私の乾いてひび割れていた心が生き返るように思えた。
「お茶がすっかり冷めてしまったね。
新しいお茶をもらおうか?」
クリス様の言葉にふと時計を見るともうお昼を少し過ぎた時間だった。
「クリス様。すみません。
嬉しく話過ぎてしまいましたね。
もうお昼ですので、お茶はいりませんわ」
するとクリス様も時計を見た。
「ああ、本当だね。
ふふふ。私も久しぶりにベルと話をするのが楽しくて時間を忘れてしまったよ。
昼食は個室になっているレストランがあるんだ。
そこに行く? ここより窓が大きくて景色も綺麗だよ。
今日は晴れているからきっと美しく湖面が光っていると思うよ」
「行きたいです!!」
そうして私たちは手を取って昼食に向かった。
昼食も時間をかけてゆっくりと楽しみ、私たちは船のデッキに出てみることにした。
「わぁ~~。風が気持ちいい~~」
私は船のデッキに出ると思わず目をつぶった。
(ああ~~~こんなの初めてだわ)
「うん。気持ちいいね」
クリス様が隣で呟いた。
なんだかこんな穏やかな時間は本当に久しぶりだった。
私はクリス様の腕に置いていた手をぎゅっとクリス様の腕に絡めてクリス様に身体を寄せた。
「ん? どうしたの? ベル? 寒い?」
クリス様が私の顔を覗き込んできた。
「いえ……なんとなく」
するとクリス様が困ったように笑った。
「なんとなくかぁ~。なんとなくでそんな可愛いことをされてしまうと困ってしまうな~~」
「え? すみません」
私はクリス様を困らせたいわけではないので、すっとクリス様から腕を離した。
「いかないでベル」
するとクリス様に腰を抱き寄せられた。
「……??」
私が驚いてクリス様の顔を見るとクリス様が切なそうな顔をした後に私の耳元に口を寄せてきた。
「ごめん。離れてほしかったわけじゃないんだ。
ただベルがあまりにも可愛かったから、ここでキスしたくなったんだ」
「え?」
私は驚いてクリス様の顔を見た。
「ここでキスはダメだろ?」
周りを見ると人もそれなりにいる。
「……ここでは困ります」
私は小さな声で答えた。
「だろ? 困るだろ? だから、困ったの。ベルと離れたいなんて思ったわけじゃないよ」
クリス様はそう言うと、また視線を湖の方へ戻した。
青い空に負けないくらいの青い色で、ここが湖の上だということを忘れそうになった。
私は体温を上がるのを感じた。
こんなことをいうのは恥ずかしいし、もしかしたらはしたないと思われてしまうかもしれない。
それでも私は心の中で大きく深呼吸して、クリス様に向かって呟くように言った。
「あの……クリス様……お部屋に戻りますか?」
「え?」
クリス様が驚いた顔をした後、また困った顔をした。
「んん~~~~。今、部屋に戻ったらきっとベルが困ったことになっちゃうと思うけど?
ちゃんと夜までは我慢できるし、夕食まで船を散策しようよ。
人目があれば大丈夫だから」
きっと私は耳まで真っ赤になっていただろう。
私はクリス様の耳元に口を寄せた。
「キス……したいです」
恥ずかしくて目をつぶっていると、ふわりと身体が浮く感覚があった。
「え? ク、クリス様? どうされたのですか?」
私はクリス様にお姫様抱っこをされていた。
クリス様は私を抱えると、スタスタとクリス様の長い足で、素早くデッキを後にして、すでに私たちのお部屋の近くに来ていた。
「あの……一体これは……」
クリス様は相変わらずにスタスタとまるで競歩でもしているかの速度で、あっという間に部屋にたどり着いてしまった。
「早い……」
私が思わず呟くと、抱き上げたままクリス様の唇が私の口に触れた。
「……ん……あ」
私はキスをされながらいつの間にかベットに降ろされていた。
ゆらゆらと揺れるクリス様の余裕ない瞳を見ると私も身体が熱くなった。
「……ん、ベル……ごめん……余裕……ない」
きっと私はずっと我慢してくれていたクリス様の我慢のスイッチを壊してしまったのだろう。
でも、私はその事を後悔してはいなかった。
私はクリス様のその言葉に答える変わりにクリス様の頭を抱き寄せた。
皆様には私たちがその日の夕食を食べ損ねてしまったことだけをご報告させて頂きます。
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