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共通ルート
49 頼れる人たち
しおりを挟む兄と別れて、私はフラフラとテラスに向かった。
テラスでは、父と実父が窓を大きく開けて月を見ながらお酒を飲んでいた。
2人は私を見つけると、手招きした。
「あれ~ベル?どうしたおいで。」
「ベルナデット。たまにはゆっくりと話さないか?」
私が行くと、実父がオロオロとした。
「ど、どうしたんだい?ベル?
なぜ泣いてるんだ?」
すると、父も心配そうにしていた。
「ベルナデット、どうかしたのかい?」
私は思わず2人に抱きついて泣き出してしまった。
それを2人の父は優しくなぐさめてくれた。
そして、泣き止んだ私は自分で考えても奇妙な状況になっていたのだった。
「なるほど!!
サミュエル君、てっきり諦めたと思っていたのに、ベルの卒業をずっと待っていたのか・・・。
なるほどな。
立場をわきまえ、状況をみて、己の律することのできる男性は信頼できるよ。
ベル。」
「ん~サミュエル君とは私も話をしたが、頭はいいし、機転も利く、しかも人をとても大切にできる青年だ。
彼は見どころがあるな・・。」
「そうだな~。彼はいい男になるだろうな~。」
いつの間にか、父と実父と3人での恋バナになっていたのだ!!
いや、私が全てを白状したのがいけないのだが!!
それはわかっているのだが、私もパニックになっていたのだ。
そうだとしか思えない。
父と恋バナ。
なんてシュールな展開なのだろう!!
「だが、クリストフ殿下には驚いたな。」
「ああ。あの大国との交渉をまとめたのだろう?」
「あの手腕は見事だった。」
父が高級果実酒をグラスの中で回しながら唸った。
「数年前まで、お人形のように可愛い子だったのに・・。
今じゃ、社交界のご婦人の憧れの的だ。」
「ああ。殿下は王立音楽芸術学院に入学されてよかったかもしれないな。」
「そうだな~他のところなら、夜会とか引っ張り回されて大変だっただろうな~。」
「ん~殿下も将来は有望だな・・。彼は間違いなくいい王になるだろう。」
「そうだね~。彼もいい男になるだろうね~。」
私は2人の話を聞きながらチーズを小さくかじっていた。
「だが、エリックだっていい男になったじゃないか。」
「ああ。我が息子ながら感心している。」
「エリザベス様に似て、威厳と美しさがあるよな~。
エリックなら諸外国に行っても見た目も、態度も、手腕も敵うものはいないだろうな。」
「ははは。ああ。エリックの強気な目は、本当にエリザにそっくりで愛おしい。
私がいうと親バカだが、どんどん、いい男になるな~。」
すると、実父が大きく手を打った。
「それに相手がエリックならベルと離れなくてもいいな!!
それは最高かもしれないな~~♪」
「気持ちはわかるが、ベルナデットの将来のことだ。
トリスタンの想いなど気にしなくていいよ。」
・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
2人の父の話をまとめると3人とも『いい男』だということがわかった。
(知ってた・・。
それ、知ってた・・・。
だから、私こんなに悩んでるんですよ。父、実父よ。)
私が思わず遠い目をすると、2人が優しく微笑んだ。
そして、実父が口を開いた。
「ねぇ、ベル。君はね、誰を選んでもいいんだよ?」
「え?」
私は驚きのあまり目が丸くなった。
「ですが!!公爵家のことを考えればそういうわけにもいかないのでは?」
私は思わず拳に力を入れた。
すると、父が楽しそうに笑った。
「ふふふ。確かに数年前まではそうだったかもしれない。」
「数年前まで?」
「今はね、君のおかげで状況が全く変わったのだよ?ベルナデット。」
「状況が変わった?」
すると、実父が楽しそうに頷いた。
「そうそう。もうね。ベルは好きに生きて大丈夫だよ。
全ての準備は整ったからね。ふふふ。」
「全ての準備が整った・・?」
そして、真剣な瞳で、父と実父から見つめられた。
「さぁ。ベルナデット。誰を選ぶんだい?」
「ベルが決めていいんだよ。」
「え?
ええ?
えええ~~~???」
私が未来を決める???
あの・・ちょと甘やかし過ぎじゃないですか?????
応援ありがとうございます!
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