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共通ルート

48 未来の可能性(3)

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夕食は実父と父と兄と4人でとった。
だが、食事の後のお茶は父と、実父と3人でのんびりと楽しんだ。

お茶が終わり、夜風に当たりたくなって、外に出た。

(今日は満月か・・。)

月を見ているとチェロの音色が聞こえてきた。
兄のチェロはとても優しく、甘く響いていた。
私は思わずその音色に誘われてダンス練習もできる小さなホールにやってきた。

月明りに照らされた兄は息を飲むように綺麗だった。
曲が終わると私は拍手をしながら、兄に近づいた。

「素敵な音色ですね。」

私が近づくと、兄がチェロをしまいながら嬉しそうに笑った。

「どうやら私は賭けに勝てたようだな。」
「賭けですか?」

私は不思議に思い兄に尋ねた。

「ああ。今日、ベルが私の演奏を聞いて、ここに来てくれたら私は、運命に勝負を挑もうと思っていた。」
「勝負ですか・・。」

兄が切なそうな顔で笑った。

「私の言葉より、チェロの方が愛を囁くのが上手いというのはしゃくだがな。」

私はくすくすと笑った。

「お兄様のチェロは確かに優しくて、甘いです。」

兄は真っ赤になってそっぽを向いた。

兄が無言になってしまったので、私はすぐ近くの窓に近づいた。

窓からは月が見えた。
私は窓辺によって月を眺めた。

「綺麗・・。
お兄様のチェロと月の光は良く似合います。」

私が月を見ながら先程の演奏を思い出していると、兄に後ろから抱きしめられた。

(え?)

驚いていると、兄が苦しそうに囁いた。

「俺の側にいてくれ。」

兄の切なそうな声に私は胸が苦しくなった。
私はこの苦しそうな声に聞き覚えがあった。

(あの夢の中の声だ。)

以前、熱が出た時、誰かが苦しそうに囁く声が聞こえた。
私は胸が痛くて、泣かないで。
ずっとそう言いたかった。

あの時とより兄の声はずっと低くなった。
それでも私は確信を持っていた。

泣かないでと言おうとしたときに兄が口を開いた。


「愛してる。」



私はどこかその言葉を予感していたように思った。
そして、その言葉を恐れていた。

兄からの告白。
私にとってそれは、一番聞きたくなかった種類の言葉かもしれない。

『兄との関係の崩壊』

これまでは、お互い忙しいこともあって、どこかその話題を避けていた。
私は自分がこれほど狡い人間だとは思わなかった。

(兄とは離れたくないくせに、兄との関係は変えたくないだなんて・・。)

私の心情を知ってか知らずか、兄の私を抱きしめる腕に力が入った。

「ベル・・私を・・選んでくれ。」

どうしたらいいのだろう。

私は兄とは、表向きには兄妹だ。
公爵家の外聞にも関わる問題だ。
それに私はクリスの婚約者だ。
クリスから婚約の解消を願い出てくれない限り、私から婚約の解消をすることは難しいだろう。
記憶を無くした時でさえ無理だったのだ。
今更簡単なことではないだろう。

しかも、クリスには先程求婚さればかりだ。
婚約解消されるとは思えなかった。


私の目から涙が流れてきた。

「なんとお答えすればいいのかわかりません。」

私は素直な気持ちを口にした。

そうだ。
わからないのだ。
どうすればいいのか、どう答えていいのかわからなかった。

「ベルが決めた事なら俺はどんなことでも受け入れる。
どんなに苦しくてもおまえが選べ。ベル。」

兄は相変わらず厳しい。
どんな時でも、私を甘やかしてはくれない。
でもいつも抱きしめてくれるし、助けてくれる。

私の意思を守り通してくれる・・。

兄は厳しくて・・そして優しい。

私はしばらく兄の腕の中で涙を流していた。
兄は無言で抱きしめてくれていた。

後ろから抱きしめられていたので、泣き顔を見られずすんでほっとしていたら、窓ガラスがまるで鏡のようになり、優しく微笑んだ兄と目が合った。

「時間を・・・時間を下さい。」
「ああ。」

兄が愛おしそうに私の手に唇を寄せた。
私は酷く早く脈を打つ心臓を抑え、ホールから駆け出した。
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