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コルネリウス ルート(兄ルート)
Ⅸ 最高の癒し空間
しおりを挟む屋敷について豪華絢爛なドレスを脱いだ。
そして、化粧も落として、楽なワンピースに着替えた。
「は~~~解放って感じ~~~」
私がそう言って背伸びをすると、侍女のアイリーンが労うように言ってくれた。
「お疲れ様でした。大変でしたね……。それでは、お嬢様、少し前にコルネリウス様から、お嬢様の準備が出来たら伝えて欲しいとの伝言を頂きましたが、もうお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「ええ。お願い」
「かしこまりました」
アイリーンに頼んで、兄を部屋に呼んで貰った。兄もすることがあるだろうとか、疲れているだろうな、とは思ったが、私はどうしても、今日は兄の入れたお茶を飲みたかったので、甘えることにした。
それからすぐに「コンコンコン」とノックの音が聞こえて、兄は想像以上に早く部屋にやって来た。
「ああ、いつものフォルトナに戻ったな……。フォルトナ、私がお茶を入れて一人でのんびりするか? 今日は休むか? それとも、私と一緒にお茶を飲むか?」
兄がまるで新婚さんのような、『ご飯にする? お風呂にする? それとも、私?』みたいな質問をしてきた。そんなの一つに決まっている。
「兄上と一緒にお茶を飲みます」
すると、兄がとろけるような笑顔を見せて笑った。
そして、私の部屋にいた侍女のアイリーンや、執事に向かって言った。
「皆、今日は下がっていい。ご苦労だったな」
「かしこましました」
兄は、侍女や執事を下がらせると、ソファーに座った。そして、予め準備してあった道具を使ってお茶を入れてくれた。
兄がティーポットにお湯を注ぐと、辺りに茶葉のいい匂いが広がった。
今日のお茶は甘くで、心まで溶かしてしまいそうなほど良い匂いだった。
「今日は随分と甘い香りがしますね」
「ああ。疲れただろう? この香りで癒されるといい」
「ふふ。癒されます」
兄が微笑み、私も嬉しくなって微笑み返した。
「出来たぞ」
「ありがとうございます」
カタリと兄がソーサーに乗せたティーカップを私の座る前に置いてくれた。するとお湯が飛ばないように離れて座っていた兄が、私のすぐ隣に座り直した。
私たちは、お互いカップを持って、顔を見合わせて笑った。
「いただきます」
「ああ」
そして、私はゆっくりと、兄の入れてくれたお茶を飲んだ。正直に言うと、兄の入れてくれたお茶よりも、侍女のアイリーンの入れてくれたお茶の方が美味しい。
だが、なぜだろう。また飲みたくなるのは、兄が入れてくれたお茶だった。
「はぁ~」
「はぁ~」
2人同時に、カップをソーサーの上に戻して、息を吐いた。
そして、またしても兄と顔を見合わせて笑った。
「私……これからもずっと、兄上の隣で、兄上が入れてくれたお茶を飲みたいです」
すると兄が凄く気の抜けた顔で言った。
「私もだ。私もこれからも、フォルトナの隣で、私の入れたお茶を幸せそうに飲むフォルトナを見ていたい」
気が付くと、私の唇に柔らかさと、あたたかさを感じた。
そう――私は、兄と……キスをしていた。
とても自然で、どちらかともなく、まるでそうすることが当たり前のように。
全然、劇的でもなく、全然、お話の中のような華やかさもない、全然、自慢出来る話じゃない。
――でも…………。
とても甘い香りがして、とても柔らかくて、とても――幸せなキスだった……。
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