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コルネリウス ルート(兄ルート)
Ⅸ-2 最高の癒し空間【兄コルネリウス視点】
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※兄コルネリウス視点です。
↓
↓
スタート
――――――――――――
城から戻る馬車の中で私は、ずっとフォルトナの手を握っていた。
私は以前、庭師が『家内が病気のため今日だけ倅を連れて来ました。迷惑はおかけしませんので』と、ずっと幼い息子の手を引いて仕事をしていたことを思い出した。その時の私は庭師が、あまりにもずっと幼い子の手を繋いでいるので、『なぜそんなにずっと手を繋いでいるのだ?』と聞いたことがある。すると、庭師は『お屋敷には高価な物がたくさんあります。うちの倅は活発で、目を放すと、とんでもないことをしでかすので、怖くて手が離せないんです』と言っていた。
その時は、『離れるの怖くて手を離せないなど、親というのは大変だな』と思ったものだ。
だが…………。
私は、今、まさにその状態だった。
――手を放すと、フォルトナを失ってしまいそうで怖い!!
どうやら、私はいつの間にか、すっかりフォルトナの保護者気分になっていたようだ。再び、私の頭にルジェク王子の言葉が浮かんで来た。
『フォルトナのような妹なら、可愛がりたいという気持ちはわかる。だが、お前はあくまで、フォルトナの兄だ。フォルトナをいつまでも妹として、鳥かごにいれて捕らえるのはやめろ』
きっと、そうなのだろう。
私は、フォルトナの兄という枠を越えて、あたかも親のように思っているのかもしれない。
(フォルトナはもう、あの子のような幼い子ではないのに……)
そんなことを思いながら、それでも私は手を放すことが出来なかった。
☆==☆==☆==
それからすぐに、屋敷に着いたので、私はフォルトナをエスコートして馬車を降りた。馬車を降りてしまえば、屋敷で手を繋いでいるのは不自然だ。私は手を離したくないと思いながら、フォルトナの手を離した。すると想像以上に手が冷たくて、手持ち無沙汰で、私は先ほど離したばかりのフォルトナの手を無意識に見つめていた。
「兄上、着替えたらお呼び致します」
「あ、ああ!!」
フォルトナは、いつも様子で短く要点を伝えると、自分の部屋に戻って行った。
フォルトナも先ほどまでは一緒にお茶を飲もうと言ってくれたが、着替えが終わってしまえば、休みたくなるかもしれない。
「はぁ」
思わず溜息を付くと、執事が近付いて来た。
「お疲れ様です。何かあったのですか?」
「そうだな……。今日はもう遅い、明日、公爵に報告しよう」
「かしこまりました」
執事が頭を下げると、侍女が数人近付いて来た。
「コルネリウス様、お召し変えを」
「ああ。そうだな」
フォルトナに呼ばれるかもしれないので、私も急いで着替えることにしたのだった。
それから着替えを終えて、そわそわしながら待っていると、フォルトナに呼ばれたので、すぐにフォルトナの部屋に向かった。
フォルトナの部屋に入って、部屋着を来たフォルトナを見た瞬間、愛おしさがこみ上げてきて、思わず抱きしめそうになった。
――お父様~~だっこ~~!
その瞬間、私の頭に庭師の親子が思い浮かんだ。庭師は『はは』と嬉しそうに笑いながら、息子を抱きしめていた。
(ダメだ……!! これは、親が子に対する感情だ!! 私は親ではないのだ)
私は、頭を振って、兄としての言葉を選んだ。
「ああ、着替えたのか。私がお茶を入れて一人でのんびりするか? 今日は休むか? それとも、私と一緒にお茶を飲むか?」
するとフォルトナは、驚いた顔をした後に、顔を少しだけ赤くして嬉しそうに微笑みながら「兄上と一緒にお茶を飲みます」と言った。
私の心が浮きのを感じた。そして、すぐに人払いをして、フォルトナのためにお茶を入れた。今日選んだ茶葉は、心を解放すると言われ、今、社交界でとても人気のある物だ。なんでも、少し離れた国のグリード侯爵子息殿が妹のために作ったお茶らしい。私は、妹のために作ったと聞いてすぐに取り寄せたのだ。
実際にお茶を入れて見ると、なんだか心を溶かす媚薬のような香りがした。
「今日は随分と甘い香りがしますね」
「ああ。疲れただろう? この香りで癒されるといい」
私は、一瞬『これは…媚薬か?』とも疑ったが、媚薬がそう簡単に手に入るわけではないので、確かに癒される香りではあるので、引き続きお茶を入れることにした。
「いただきます」
「ああ」
そして、お茶を入れると、2人でゆっくりとお茶を飲んだ。香りで媚薬の可能性を疑ったが、飲んでみると普通のお茶でほっとした。
「はぁ~」
「はぁ~」
お茶を飲んだ後のフォルトナの顔が無防備で思わず頭を撫でたくなった。
――えらい、えらい。いい子だ。
その瞬間、またしても、庭師親子の様子が思い浮かんだ。庭師に頭を撫でられて、幼い少年は嬉しそうに笑っていた。
(いや、違う!! 私は、フォルトナの親ではない!! 親ではないんだ!!)
フォルトナから、少し目を逸らして、心を落ちつけていると、フォルトナが隣で嬉しそうに微笑みながら言った。
「私、これからもずっと、兄上の隣で、兄上が入れてくれたお茶を飲みたいです」
「私もだ。私もこれからも、フォルトナの隣で、私の入れたお茶を幸せそうに飲むフォルトナを見ていたい」
そんなフォルトナの言葉に私も無意識に言葉を返していた。
愛おしい! ダメだ。
側にいたい! 無理だ。
抱きしめたい! 私は親ではない。
触れたい! 私は……兄だ!!
あらゆる感情と、理性が混じりあい頭の中に様々な色が混じって混乱する中、フォルトナの唇が近付いた気がした。
――彼女と、離れたくない!!
私は、ためらうことなくフォルトナに口付けていた。
彼女の唇は、とても甘くて、柔らくて、私のこれまで押さえつけていた【兄】という仮面を粉々に砕いてしまったのだった。
――――――
皆様、じれったくてすみません。
お待たせしました。
次回からは……
……糖度高めなはずです。
↓
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スタート
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城から戻る馬車の中で私は、ずっとフォルトナの手を握っていた。
私は以前、庭師が『家内が病気のため今日だけ倅を連れて来ました。迷惑はおかけしませんので』と、ずっと幼い息子の手を引いて仕事をしていたことを思い出した。その時の私は庭師が、あまりにもずっと幼い子の手を繋いでいるので、『なぜそんなにずっと手を繋いでいるのだ?』と聞いたことがある。すると、庭師は『お屋敷には高価な物がたくさんあります。うちの倅は活発で、目を放すと、とんでもないことをしでかすので、怖くて手が離せないんです』と言っていた。
その時は、『離れるの怖くて手を離せないなど、親というのは大変だな』と思ったものだ。
だが…………。
私は、今、まさにその状態だった。
――手を放すと、フォルトナを失ってしまいそうで怖い!!
どうやら、私はいつの間にか、すっかりフォルトナの保護者気分になっていたようだ。再び、私の頭にルジェク王子の言葉が浮かんで来た。
『フォルトナのような妹なら、可愛がりたいという気持ちはわかる。だが、お前はあくまで、フォルトナの兄だ。フォルトナをいつまでも妹として、鳥かごにいれて捕らえるのはやめろ』
きっと、そうなのだろう。
私は、フォルトナの兄という枠を越えて、あたかも親のように思っているのかもしれない。
(フォルトナはもう、あの子のような幼い子ではないのに……)
そんなことを思いながら、それでも私は手を放すことが出来なかった。
☆==☆==☆==
それからすぐに、屋敷に着いたので、私はフォルトナをエスコートして馬車を降りた。馬車を降りてしまえば、屋敷で手を繋いでいるのは不自然だ。私は手を離したくないと思いながら、フォルトナの手を離した。すると想像以上に手が冷たくて、手持ち無沙汰で、私は先ほど離したばかりのフォルトナの手を無意識に見つめていた。
「兄上、着替えたらお呼び致します」
「あ、ああ!!」
フォルトナは、いつも様子で短く要点を伝えると、自分の部屋に戻って行った。
フォルトナも先ほどまでは一緒にお茶を飲もうと言ってくれたが、着替えが終わってしまえば、休みたくなるかもしれない。
「はぁ」
思わず溜息を付くと、執事が近付いて来た。
「お疲れ様です。何かあったのですか?」
「そうだな……。今日はもう遅い、明日、公爵に報告しよう」
「かしこまりました」
執事が頭を下げると、侍女が数人近付いて来た。
「コルネリウス様、お召し変えを」
「ああ。そうだな」
フォルトナに呼ばれるかもしれないので、私も急いで着替えることにしたのだった。
それから着替えを終えて、そわそわしながら待っていると、フォルトナに呼ばれたので、すぐにフォルトナの部屋に向かった。
フォルトナの部屋に入って、部屋着を来たフォルトナを見た瞬間、愛おしさがこみ上げてきて、思わず抱きしめそうになった。
――お父様~~だっこ~~!
その瞬間、私の頭に庭師の親子が思い浮かんだ。庭師は『はは』と嬉しそうに笑いながら、息子を抱きしめていた。
(ダメだ……!! これは、親が子に対する感情だ!! 私は親ではないのだ)
私は、頭を振って、兄としての言葉を選んだ。
「ああ、着替えたのか。私がお茶を入れて一人でのんびりするか? 今日は休むか? それとも、私と一緒にお茶を飲むか?」
するとフォルトナは、驚いた顔をした後に、顔を少しだけ赤くして嬉しそうに微笑みながら「兄上と一緒にお茶を飲みます」と言った。
私の心が浮きのを感じた。そして、すぐに人払いをして、フォルトナのためにお茶を入れた。今日選んだ茶葉は、心を解放すると言われ、今、社交界でとても人気のある物だ。なんでも、少し離れた国のグリード侯爵子息殿が妹のために作ったお茶らしい。私は、妹のために作ったと聞いてすぐに取り寄せたのだ。
実際にお茶を入れて見ると、なんだか心を溶かす媚薬のような香りがした。
「今日は随分と甘い香りがしますね」
「ああ。疲れただろう? この香りで癒されるといい」
私は、一瞬『これは…媚薬か?』とも疑ったが、媚薬がそう簡単に手に入るわけではないので、確かに癒される香りではあるので、引き続きお茶を入れることにした。
「いただきます」
「ああ」
そして、お茶を入れると、2人でゆっくりとお茶を飲んだ。香りで媚薬の可能性を疑ったが、飲んでみると普通のお茶でほっとした。
「はぁ~」
「はぁ~」
お茶を飲んだ後のフォルトナの顔が無防備で思わず頭を撫でたくなった。
――えらい、えらい。いい子だ。
その瞬間、またしても、庭師親子の様子が思い浮かんだ。庭師に頭を撫でられて、幼い少年は嬉しそうに笑っていた。
(いや、違う!! 私は、フォルトナの親ではない!! 親ではないんだ!!)
フォルトナから、少し目を逸らして、心を落ちつけていると、フォルトナが隣で嬉しそうに微笑みながら言った。
「私、これからもずっと、兄上の隣で、兄上が入れてくれたお茶を飲みたいです」
「私もだ。私もこれからも、フォルトナの隣で、私の入れたお茶を幸せそうに飲むフォルトナを見ていたい」
そんなフォルトナの言葉に私も無意識に言葉を返していた。
愛おしい! ダメだ。
側にいたい! 無理だ。
抱きしめたい! 私は親ではない。
触れたい! 私は……兄だ!!
あらゆる感情と、理性が混じりあい頭の中に様々な色が混じって混乱する中、フォルトナの唇が近付いた気がした。
――彼女と、離れたくない!!
私は、ためらうことなくフォルトナに口付けていた。
彼女の唇は、とても甘くて、柔らくて、私のこれまで押さえつけていた【兄】という仮面を粉々に砕いてしまったのだった。
――――――
皆様、じれったくてすみません。
お待たせしました。
次回からは……
……糖度高めなはずです。
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