24 / 50
コルネリウス ルート(兄ルート)
Ⅲ 貴族は優雅にごあいさつ(1)
しおりを挟む発光しているかの如く輝く推しルジェク王子と、リオン王子が2人で祭壇に並ぶとかなり迫力がある。
私と兄は、2人からはかなり離れた場所にいたにも関わらず、2人の王子と目が合って微笑まれた。
私は王子殿下たちに笑顔を作りながら、兄の方を向かずに小声で言った。
「兄上……私、やっぱりあいさつに行った方がいいですか?」
すると兄は前を向いたまま表情を崩さずに、小声で答えた。
「……私も……会わせたくはないが……こればかりは避けられない。……心配だが……今日は殿下たちが主催だ。次から次へと人々があいさつに来る。私たちに、あまり時間を取られることはないはずだ」
確かに、王子殿下主催の夜会なら、2人は様々な人たちにあいさつをする必要がある。
ほとんどあの場から動けないだろう。
「それもそうですね……」
「そうだ」
私はほっとしながら、夜会で普段より気合の入った殿下たちを見ていたのだった。
☆==☆==☆==
「では、皆、今宵は楽しんでくれ!」
推しのルジェク王子の言葉で、2人の王子の話が終わり、夜会が幕を開けた。私たちはまず、ルジェク王子にあいさつに行った。
「ルジェク王子殿下、ごきげんよう。本日はお招きありがとうございます」
「ルジェク王子殿下、お招き頂きありがとうございます」
私があいさつをした後に、兄が殿下にあいさつをすると、ルジェク王子がまるで大型犬のように嬉しそうな顔をしながら言った。
「フォルトナ!! 今日も美しいな! 来てくれて嬉しい。ああ、フォルトナと会うのも久しぶりな気がするな。後で私と2人で……」
夜会での推しの破壊力は抜群だった。本気でイケメンだ。顔が整い過ぎていて、近付かれると気持ち悪くなるくらい今日のルジェク王子殿下は美しい。
(カッコよさにお酒飲んでないけど、酔いそう……)
私がルジェク王子殿下のイケメン度合にたじろいでいると、兄が慌てて、ルジェク王子殿下に話かけた。
「ゴホン!! ルジェク王子殿下。先日の議会でのことですが、先方に話を通しておきました」
「そうか!! だが、随分と早かったな!!」
ルジェク王子はすぐに兄の話に乗ってきた。
と言うのも……今、ルジェク王子殿下は、私とリオン王子殿下のダンスに乱入した件で、陛下から叱責を受けて、様々な課題を与えられているのだ。
その課題というは――政務や社交などの分野のいわゆる面倒事を片付けるということだった。
兄は、ルジェク王子殿下から泣き付かれて、ルジェク王子殿下の課題解決に手を貸しているのだ。
まぁ、兄としても何か思惑があってルジェク王子殿下に手を貸しているようだが、きっと公爵家のことだろうから、私には兄の思惑まではわからない……。
そういう訳で、ルジェク王子も、兄から課題の話題を振られれば無視はできないのだ。
「コルネリウス。その件に関しては、すでに終わりが見えていると考えてよいのか?」
「いえ。まだ数人に根回しが必要ですので、その辺りをもう少し………」
私は、深刻そうに話をしている兄と、ルジェク王子をすぐ近くにまるで置物になった気分で立っていた。
(シャンデリア………大きいな……3メートルはさすがにない? いや……あるかも?)
会場内のシャンデリアは、かなりの存在感があり、これだけ着飾った貴族がたくさんいるにも関わらずその大きさと明るさを誇示していた。
「それでは、殿下。後ほど……」
「ああ、フォルトナ! 絶対にまた後で話をしよう」
私が現実感のまるでない豪華なシャンデリアに見とれているうちに、兄とルジェク王子の話は終わったようで、私と兄は「え、ええ」と曖昧に答えて、そそくさとルジェク王子殿下の側を離れた。
振り向くと、すでにルジェク王子殿下の周りには人だかりができていたのだった。
「フォルトナ、次はリオン王子殿下にあいさつに行こうか」
「ええ」
兄はそう言って、私の手を取って優雅に歩きながら、次の王子であるリオン王子の元にあいさつに向かったのだった。
92
お気に入りに追加
1,098
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~
めもぐあい
恋愛
公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。
そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。
家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
悪役令嬢に転生したので、推しキャラの婚約者の立場を思う存分楽しみます
下菊みこと
恋愛
タイトルまんま。
悪役令嬢に転生した女の子が推しキャラに猛烈にアタックするけど聖女候補であるヒロインが出てきて余計なことをしてくれるお話。
悪役令嬢は諦めも早かった。
ちらっとヒロインへのざまぁがありますが、そんなにそこに触れない。
ご都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
悪役令嬢と噂されているので、全力で逃げることにしました!〜できれば静かに暮らしたい〜
矢野りと
恋愛
『ほら、ご覧なさって。あそこにいるのが噂の公爵令嬢ですわよ』
『噂通りのかたで、悪役令嬢という感じですわね』
公爵令嬢であるハナミア・マーズのほうを見ながら、楽しそうに囀っている令嬢達。
悪役令嬢??どうして私が……
ハナミアは幼い頃から病弱で、静養のためにずっと領地で過ごしていた。つまり公爵家の駒として役に立たないから、両親から放置されていたのだ。
――あっ、でもグレたりはしていませんよ。自分でも言うのもなんですが、田舎で真っ直ぐに育ちましたから。
病弱ゆえに社交界に出るのも今回が初めて。だから悪役令嬢になる機会もなかったはずなのに、なぜか悪役になっているハナミア。
立派な両親と優秀な弟妹達はハナミアを庇うことはない。
家族のこういう態度には慣れているので、全然平気である。
ただ平凡で、病弱で、時々吐血することがあるハナミアには、悪役令嬢は少しだけ荷が重い。
――なんか天に召される気がするわ……
なのでこっそりと逃げようと思います!
これは自称平凡な公爵令嬢が自分の身の丈(病弱?)に合わせて、生きようと奮闘するお話です。
もちろん周囲はそんな彼女を放ってはおきません。なぜなら平凡は自称ですから…。
⚠ヒーローは優しいだけじゃありません、一癖も二癖もあります。
⚠主人公は病弱を通り越し死にかけることもありますが、本人は明るく元気ですのでご安心?を。
※設定はゆるいです。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる