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コルネリウス ルート(兄ルート)

Ⅳ 貴族は優雅にごあいさつ(2)

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 リオン王子にあいさつに向かうと、すでに人だかりが出来ていたが、公爵家という地位の高い私たちが行くと、皆が順番を譲ってくれた。

 ――正直、恐れ多い。

 幼い頃から、しっかりと順番を守ることを教えられて育った私には、この地位が高ければ並ばなくてもいいという感覚がわからない!! 譲られても苦痛極まりないのだが、これがルールだというのなら、譲られてしまうのを受け入れるしかない。郷に入っては郷に従えともいうのだ。
 私は恐縮して、胃が痛くなりながらもリオン王子殿下の側に歩いて行くと、私に気付いたリオン王子殿下の方が私の方に小走りで寄って着て両手を取った。

「フォルトナ!! 会いたかった!! もう君の顔を34日間も見ていない!!」

(34日?! そんな細かく覚えてるの?! ……凄っ!! でも……そんなに会いたいって思ってくれたんだ……光栄だけど……みんなの視線が突き刺さって痛い!!)

 私は、顔が引きつらないように笑顔であいさつをした。

「そうですね……本日は、お招き頂きありがとうございました」

 私としては、順番抜かしをしてまで、あいさつをしているので、手短にあいさつを切り上げたいのだが、リオン王子殿下は私の手を離すことなく、楽しそうに言った。

「そうだ、フォルトナ。これまで折角、君に会えても忙しくて中々機会がなかったが、今回の滞在中こそは、君と2人でのんびりと……」

 リオン王子殿下がそう言って、私を見つめながら距離を詰めようとした時、兄が慌てて私の前に入ってきて、手を離させた後に、リオン王子殿下に話かけた。

「ゴホン!! リオン王子殿下。新しい機械のことですが、その後いかがですか? 我が領の技術者も条件の違う場所で、問題なく作動したかを心配しております」

 兄に言葉に、リオン王子は、嬉しそうに言った。

「ああ、問題ない。しかし……あの機械は凄いな!! あの機械を使うと、作業効率は予想を大幅に上回ったとの報告が来ている。本当にコルネリウス殿のおかげだ。また近いうちに……」

 リオン王子殿下と、兄は随分と話が弾んでいるようだった。
 私は、2人の隣で置物になったように会場に描かれている壁画を見ていた。植物や花や鳥や人など鮮やかに描かれた室内は圧巻だった。

(この絵、描くの大変だろうな……首痛くならないのかな……)

 私は折角の美しい絵を見ているのも関わらず、情緒のない感想を持ちながらぼんやりと絵を眺めていた。
 するといつの間にか、兄とリオン王子の話は終わったようで、兄は「それでは殿下また後ほど」と言って私の手を取って、リオン王子から離れた。

「はぁ~~~~~やっと終わったな」

 そして兄はテラスまで私を連れて来て、口から長い長~~~い溜息が漏らしたのだった。





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