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その21 事実上のパートナー
しおりを挟む目の前の父の姿は以前とは別人の様。
いつも小ぎれいにしていた父が、ボサボサの髪に無精髭。
身に着けているものも粗末で酔っているのか? 目の焦点も合っていない。
日頃の父はたまに少量のアルコールを飲むだけで家人にだらしなく酔った姿は決して見せなかった。
「おじさん、酔っ払ってるでしょ? 今何処に住んでいるの? まさか、ホームレスじゃないよね?」
「俺か? 安アパートに住んでるが、ホームレスみたいなもんさ。ハハハ!」
噂ではあのことがあって以来、息子たちの不道徳?な行いにショックを受けた母は怪しいカルト宗教に夢中になり父がコツコツ貯めた数千万ものお金を寄付してしまったようだ。
無一文になった父は母とも別れ蒸発。
(それもこれも、父と母の人生を狂わせてしまったのは僕のせいなのか?)
否、違う!
なぜ、父と兄も、、仕事を辞めてしまったのか? 兄と弟が愛し合うことはそんなに異常なことなのか?
世間はなぜそんなことに偏見の目を向けるのか?そんな目に父も母も負け兄まで会社にいられなくなった。
(僕が悪いのではない。世の中の偏見差別が悪いのだ。僕は負けない...)
父は目の前にいる女が、自分の息子であるとまるで分からないようだ。
それは無理もなく、家にいる頃の女装した姿とは別人。あの頃は家族に遠慮もありあまり派手にはしていなかったが、今の陽介は益々女として磨きがかかりセクシーに進化している。
とくに街娼活動している時の陽介はあまりにもエロティックだ。
「おじさん、わたしとやりたい?」
父は焦点の合わない目で陽介(息子)をジッと見つめた。
「そりゃやりたいけどさ、おねえさんみたいな美人は高いからな...」
「いいよ、ただで。ラブホってわけにはいかないけど、あそこの公園の裏に人目につかないところがあるの。スッキリさせてあげるからね」
父は周囲をキョロキョロと覗い警戒している。誰か恐いお兄さんがいると思っているのだろうか? いくら酔っていても父は慎重な性格なのだ。
「大丈夫だよ、誰もいないから、、」
陽介は公園の片隅、藪の中に父を誘い込むとそのズボンを下ろした。
手と、そして息子の口の中で父は気持ち良さそうに射精、二度果てた。
最後まで父は陽介のことを自分の息子であるとは気付かず、その女の股間に立派な男性器があるなんて夢にも思っていなかっただろう。
満足そうに公園から去っていく父の後ろ姿を見て陽介は切なくなった。
(お父さんなら、いつか必ず立ち直れるよ。お母さんだっていつか目が覚めると思う。そうしたら、またみんなで楽しくやろうね...)
陽介は父との遭遇は兄には伏せておいた。兄は自分と違って家族思いのところがあり、知れば自責の念で悩むに決まっている。それに陽介は実の父を口淫により射精に導いたのだ。
(兄はどう思うだろうか?)
それから又半年が過ぎた。
孝介28才、陽介は23才になる。
小さい会社ながら兄に仕事がやっと見つかったのだ。
「いつまでもお前の紐ってわけにはいかないからな。稼ぎはそんなにないけど地道にやっていきたいんだ。お前もいつまでもそんな身体を売るなんてことはせず自分を大切にしてほしい」
「うん、、ニューハーフモデルとか色々誘いもあるので考えておくよ」
ふたりはベッドの上で獣になった。
兄は弟の、弟は兄の身体なくしては生きていけないほどに。
否、身体だけではない、精神的にも普通の男女のように愛し合っている。
(僕とお兄ちゃんはこんなにも愛し合っているのに、なぜ世間は男同士だからとか、血の繋がった兄と弟だからという理由だけで白い目で見るの?)
陽介はそんなことを思う。
妖しくエロティックなランジェリー姿の陽介が、兄の胸に顔を埋めそっとその耳元に囁いた。
「お兄ちゃん、多様化の時代になって同性婚も将来可能になるかもしれないけど、実の兄弟で結婚出来る時代は来るのかな? 僕はお兄ちゃんと結婚したいと思うようになったんだ」
以前の孝介なら、兄弟婚なんて人間の道に背いているだろうとしか答えようがなかったが、最近では弟と同じように “なぜだめなのか?” と疑問に思うようになってきた。
(子どもを作るだけが結婚の目的ではないだろう? 愛するふたりが協力して暮らしていくことではないのか?)
「陽介、お前の言いたいことはよく分かるけど、男同士の兄弟で結婚を認められることはないだろう。でも、なんで結婚という制度にこだわるんだ?そんな形なんかどうでもいい。あんなのただの紙切れだ。俺とお前は事実上のパートナーだからな」
陽介の顔が歪んだ。
「お兄ちゃん、嬉しい!」
それから激しいディープキッス。
兄と弟のセックスは朝まで及んだ。
このふたりは今後どうなる?
つづく???
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