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第1章
181話 領地開発Ⅱ
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冒険者ギルドや商人やスフィア伯爵夫人から派遣された人々が次々と僕が切り取った領地、アットナイド地方に入ってくる。
元山賊団が基本労働者なので食事は元より服や寝床など用意しなければならないことが多い。元が山賊なので隙を見せると反乱を起こす危険性があるからだ。そうした連中には飴と鞭を使い分けてうま~く原石採掘に勤しんでもらう。
『ユウキ様。ご命令により参りました』
僕は家臣であるガオムを除く五人を呼び寄せて今後の領地発展のために基盤づくりを始めていた。
「忙しいところごめんね。正式にスフィア伯爵夫人の寄り子になりここの領地を運営していくことになるんだけど」
今後はここに本拠地を置くことになるので現在経営している店などは支店化してしまう。
「リシュラはここに残って宝石商両替商に師事して目利きを磨いて。リシュナは移転した店を任せるから。今後は宝石を主力商品とした展開で行く方針で」
「「了解しました」」」
「私にはどのような命を?」
「リナには、ここで衣食住足りるようにしないとならないからもっと従業員集めて。こっちにもお店建てないとならないからね。もちろん直営で」
「畏まりました。すぐさま選抜を行います」
「私には!」
「ミオは当分の間はユーラベルクで解体のお仕事と修行。この領地にもンスターは多いからね。ある程度見込みが出来たらこっちに来てもらう」
「わかったよ」
「僕には」
「ウルリッヒにはそうだなぁ、このままでもいいけど。スフィア夫人との連絡役もしてもらおうかな」
「わかりました」
そうして、各員に役目を割り振り上手く領地を運営していく。
しばらくの後。
「産出される原石の方はどう?」
川辺で土を掘り石をさらっている元山賊―――もとい、労働者らのを尋ねる。彼らの近くには武装した兵士らがペアを組んで巡回に当たっていた。
「これはこれは、よくおいでくださいました」
専属で担当をしている両替商や宝石商が建物、というか。掘っ建て小屋から顔を出す。
「等級は三級~四級の間ぐらいのものが多く出ております、二級の物も少なからず出ております」
「ふむ~」
「この近くにあるアルヴェラス宝石鉱山の等級が六級以下しか出ないことを考えれば非常に良い場所ですよ」
「じゃ、伝手を使って客を呼んでも問題ない、かな?」
「はい」
両者は満面の笑みで答える。
「寄り親には現物を確実に送っておいて。それと、通貨交換率の進法を間違えないようにね」
「それについては間違いなく。しかしながら、古来の進法を変えると周囲から非難されますが?」
「古来の通貨の進法のままだと商人らに原石を買い叩かれてしまうし通貨取引もここでしか行えないようにしないと境界線ぎりぎりで通貨交換をしかねない。第一古来の法は慣習であり国法じゃないよ」
「それはそうなのですが。やはり四進法をいきなり十進法に変えるとなると」
「だから、ここでは通行税は無料にしてるの。どうせ塩を始めとして商人らが無数にここを通るんだからそれでイチイチ税を取っていては時間がかかりすぎる。通行税を無料にするからその分だけここでの買い物でお金を落としてもらうの」
その分だけ自分らの懐に入る利鞘は儲かるのだから文句は言うな。
「当面はスフィア夫人に現物送り届けて周囲のやっかみを封じてもらうしかないか」
何しろ兵隊があまりにも少なすぎる。周囲が連合を組めば容易く奪い取られるからだ。そのためにはスフィア夫人の後ろ盾が絶対に不可欠であり彼女を盾替わりにして兵が揃うまでは戦いは避けなければならない。
まぁ……、僕がその気になれば単独でも敵兵をみんな倒すということも可能だがそんな俺TUEEEなど何度もしたくはない。総大将が敵陣に突撃して大勝首を上げるという古典的な解決では限界があるのだ。
とにもかくにも、兵士らはスフィア夫人から派遣してもらっているし冒険者ギルドのほうでも援軍を予定しているとの報告が来ているのでそれをあてにするしかないか。
「はぁ…、面倒だなぁ」
この異世界に来てからというもの戦いの連続ばかりである。平和な暮らしに戻りたいなぁ…。
冒険者ギルドからの援軍に期待を寄せていたのだが、
「貴女が派遣された隊長さん?」
「は、はいっ!冒険者ギルド防衛小隊長四位のシャルティエと、申しますです!よろしくおねがいしますです!」
女ばっかりで構成された部隊がやってきた。
隊員の半分以上、いや八割以上は女だった。なんでこんな女ばっかりの部隊を?その疑問に答えてくれる人がいた。
「私は副隊長のマリーダと申します。こんな女ばかりの兵隊に驚かれているかと思いますので」
「あー、うん。どうして?」
単刀直入に言えば、女の兵隊が余っていて困るからだそうだ。冒険者ギルドの審査では男女による能力差を無くし審査試験を通過すれば問題がないとされているが実際には男女の性別差から上官と部下が肉体関係となり審査を甘くしたり素通りさせたりとした問題が起こることは必然だった。
冒険者ギルドでもそのような前例がある、しかし、男女差によって優劣をつけてはならない。そのため、女性の身で兵隊長の資格を取ることは可能なのだが感情移入が強い女では隊長として差配するのは疑問があるとされている。
冒険者ギルドでも中隊長以上まで上がった女性など前例が殆ど存在しない。女性の小隊長も少なからずいるが中隊長以上となると途端に合格率が下がる。シャルティエら女性ばかりで構成された部隊がここに来た最大の理由が分かった。
「単刀直入に言えばユウキ様の元で実績を上げて欲しいというのが冒険者ギルドの本音でありまして。シャルティエ隊長はやや気弱ながらも小隊長としては学科の方は問題ないのですが、いかんせん実戦経験が不足しておりまして。ユウキ様の元で鍛えて欲しいと」
「そ、そう、わかった」
「よ、よろしくお願いしますです!」
ペコペコ頭を下げてくるシャルティエさん。皮鎧を身に着けているが中々スタイルがいいな。
「(隊長は職業貴族であるビーグル男爵家の長女なので嫁入りも真剣に考えて欲しいとのことでして)」
「(え~?)」
「(女の身で兵隊長をしていると嫁入り先があまりないのです)」
女が兵隊長になると胡麻を擦る男らが大勢やってくるのでなりたがる人があまりいないそうだ、そりゃあ男の方が使い様が多いからね。なので、使い様に困る女の兵隊を雇いたがる連中はほとんどいない。冒険者ギルドでもそうなのだ。
女の身で指揮官になるとこういう連中が群がるのは当然だった。
「(シャルティエ様に数多くの男らが求婚に来ましたが世襲貴族のボンクラだけでして、本気で嫁入り先を探しておられるのです)」
ユウキ様なら将来性家格共に問題が無く彼女の実家はもう必死なのだそうだ。はぁ、仕方がないかなぁ。
元山賊団が基本労働者なので食事は元より服や寝床など用意しなければならないことが多い。元が山賊なので隙を見せると反乱を起こす危険性があるからだ。そうした連中には飴と鞭を使い分けてうま~く原石採掘に勤しんでもらう。
『ユウキ様。ご命令により参りました』
僕は家臣であるガオムを除く五人を呼び寄せて今後の領地発展のために基盤づくりを始めていた。
「忙しいところごめんね。正式にスフィア伯爵夫人の寄り子になりここの領地を運営していくことになるんだけど」
今後はここに本拠地を置くことになるので現在経営している店などは支店化してしまう。
「リシュラはここに残って宝石商両替商に師事して目利きを磨いて。リシュナは移転した店を任せるから。今後は宝石を主力商品とした展開で行く方針で」
「「了解しました」」」
「私にはどのような命を?」
「リナには、ここで衣食住足りるようにしないとならないからもっと従業員集めて。こっちにもお店建てないとならないからね。もちろん直営で」
「畏まりました。すぐさま選抜を行います」
「私には!」
「ミオは当分の間はユーラベルクで解体のお仕事と修行。この領地にもンスターは多いからね。ある程度見込みが出来たらこっちに来てもらう」
「わかったよ」
「僕には」
「ウルリッヒにはそうだなぁ、このままでもいいけど。スフィア夫人との連絡役もしてもらおうかな」
「わかりました」
そうして、各員に役目を割り振り上手く領地を運営していく。
しばらくの後。
「産出される原石の方はどう?」
川辺で土を掘り石をさらっている元山賊―――もとい、労働者らのを尋ねる。彼らの近くには武装した兵士らがペアを組んで巡回に当たっていた。
「これはこれは、よくおいでくださいました」
専属で担当をしている両替商や宝石商が建物、というか。掘っ建て小屋から顔を出す。
「等級は三級~四級の間ぐらいのものが多く出ております、二級の物も少なからず出ております」
「ふむ~」
「この近くにあるアルヴェラス宝石鉱山の等級が六級以下しか出ないことを考えれば非常に良い場所ですよ」
「じゃ、伝手を使って客を呼んでも問題ない、かな?」
「はい」
両者は満面の笑みで答える。
「寄り親には現物を確実に送っておいて。それと、通貨交換率の進法を間違えないようにね」
「それについては間違いなく。しかしながら、古来の進法を変えると周囲から非難されますが?」
「古来の通貨の進法のままだと商人らに原石を買い叩かれてしまうし通貨取引もここでしか行えないようにしないと境界線ぎりぎりで通貨交換をしかねない。第一古来の法は慣習であり国法じゃないよ」
「それはそうなのですが。やはり四進法をいきなり十進法に変えるとなると」
「だから、ここでは通行税は無料にしてるの。どうせ塩を始めとして商人らが無数にここを通るんだからそれでイチイチ税を取っていては時間がかかりすぎる。通行税を無料にするからその分だけここでの買い物でお金を落としてもらうの」
その分だけ自分らの懐に入る利鞘は儲かるのだから文句は言うな。
「当面はスフィア夫人に現物送り届けて周囲のやっかみを封じてもらうしかないか」
何しろ兵隊があまりにも少なすぎる。周囲が連合を組めば容易く奪い取られるからだ。そのためにはスフィア夫人の後ろ盾が絶対に不可欠であり彼女を盾替わりにして兵が揃うまでは戦いは避けなければならない。
まぁ……、僕がその気になれば単独でも敵兵をみんな倒すということも可能だがそんな俺TUEEEなど何度もしたくはない。総大将が敵陣に突撃して大勝首を上げるという古典的な解決では限界があるのだ。
とにもかくにも、兵士らはスフィア夫人から派遣してもらっているし冒険者ギルドのほうでも援軍を予定しているとの報告が来ているのでそれをあてにするしかないか。
「はぁ…、面倒だなぁ」
この異世界に来てからというもの戦いの連続ばかりである。平和な暮らしに戻りたいなぁ…。
冒険者ギルドからの援軍に期待を寄せていたのだが、
「貴女が派遣された隊長さん?」
「は、はいっ!冒険者ギルド防衛小隊長四位のシャルティエと、申しますです!よろしくおねがいしますです!」
女ばっかりで構成された部隊がやってきた。
隊員の半分以上、いや八割以上は女だった。なんでこんな女ばっかりの部隊を?その疑問に答えてくれる人がいた。
「私は副隊長のマリーダと申します。こんな女ばかりの兵隊に驚かれているかと思いますので」
「あー、うん。どうして?」
単刀直入に言えば、女の兵隊が余っていて困るからだそうだ。冒険者ギルドの審査では男女による能力差を無くし審査試験を通過すれば問題がないとされているが実際には男女の性別差から上官と部下が肉体関係となり審査を甘くしたり素通りさせたりとした問題が起こることは必然だった。
冒険者ギルドでもそのような前例がある、しかし、男女差によって優劣をつけてはならない。そのため、女性の身で兵隊長の資格を取ることは可能なのだが感情移入が強い女では隊長として差配するのは疑問があるとされている。
冒険者ギルドでも中隊長以上まで上がった女性など前例が殆ど存在しない。女性の小隊長も少なからずいるが中隊長以上となると途端に合格率が下がる。シャルティエら女性ばかりで構成された部隊がここに来た最大の理由が分かった。
「単刀直入に言えばユウキ様の元で実績を上げて欲しいというのが冒険者ギルドの本音でありまして。シャルティエ隊長はやや気弱ながらも小隊長としては学科の方は問題ないのですが、いかんせん実戦経験が不足しておりまして。ユウキ様の元で鍛えて欲しいと」
「そ、そう、わかった」
「よ、よろしくお願いしますです!」
ペコペコ頭を下げてくるシャルティエさん。皮鎧を身に着けているが中々スタイルがいいな。
「(隊長は職業貴族であるビーグル男爵家の長女なので嫁入りも真剣に考えて欲しいとのことでして)」
「(え~?)」
「(女の身で兵隊長をしていると嫁入り先があまりないのです)」
女が兵隊長になると胡麻を擦る男らが大勢やってくるのでなりたがる人があまりいないそうだ、そりゃあ男の方が使い様が多いからね。なので、使い様に困る女の兵隊を雇いたがる連中はほとんどいない。冒険者ギルドでもそうなのだ。
女の身で指揮官になるとこういう連中が群がるのは当然だった。
「(シャルティエ様に数多くの男らが求婚に来ましたが世襲貴族のボンクラだけでして、本気で嫁入り先を探しておられるのです)」
ユウキ様なら将来性家格共に問題が無く彼女の実家はもう必死なのだそうだ。はぁ、仕方がないかなぁ。
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