49 / 87
おこぼれにありつこうとする連中 3
しおりを挟む
コネや縁故採用で冒険者となったがその後馬鹿な行動をした主のせいで壊滅し日和見をしたり媚びへつらったりしていた連中は軒並み貧困に落ち白い眼を向けられるようになり居場所を失う。
もう彼らを守ってくれる相手はいなくなり自力で居場所を確保できなければ農奴になるか路上暮らしか娼婦にまで落ちる寸前まで追いつめられる。
だが、捨てられるものあれば拾う意味のあるものも存在していた。たとえそれが元主の敵だとしても救ってくれるのならば頭を下げる価値がある。
彼らにはもう逃げ場はないのだから。
「たかがこん棒、されどこん棒、正確に敵の急所を狙えばゴブリンでも即死させられる。武器がショボいとかなんだとか言ってる場合じゃないでしょ。どんな形であれ敵を倒せればいいんだから」
『は、はいっ』
「鉄の剣の方がいい?。馬鹿、5体も切れば血脂で使い物にならなくなる装備よりも物理で殴れ摩耗しにくい装備のほうがいいんだ。こん棒は人類が最初に装備した実績と歴史ある武器なんだ。見てくれより結果だ」
『はいっ』
「木製や革製の盾なんてダサくて格好悪い?てめぇら攻撃を防御できるありがたさが分かってないだろ。防具がなくて致命傷を負う危険性のあるお前らには野暮ったくても盾が有効なんだ。しっかり扱い方を覚えておけ」
『り、了解しました』
「おい、スリングショットを馬鹿にするなよ。こんな紐と石だけの装備だが投げ方を覚えれば鉄製の兜だって貫けるんだ。石なんてどこにだって転がっているんだ。それを使わないでなんとするんだ」
『はいっ』
「冒険の途中で装備を失った?じゃ、そこらの死体や倒した敵の装備を使え。あ?良心が痛む。お前の良心は自分や仲間の命よりも重いのか。生き残りたかったならあるものは全部使え。それで命が救われるなら軽いものだ」
『ひいっ』
「あとな。各種水薬の不用意な使用は控えろ。解毒剤もだ。それを常時使用していたら金ばかりが出ていく。本当に必要な場合だけ使え。これは仲間も同じだ。補給物資は望めば出てくるとは限らないんだ」
『へ、へいっ』
「おいお前。パーティでの自分の立ち位置をよく考えろ。位置取りをしないと連携が取れず決定打を与えるチャンスはやってこないぞ。常に仲間と違う攻撃点を見つけられるように立ち回るんだ」
『はひぃぃ』
「弓兵と術師が後ろにいるだけなんて思うな。味方が前に出てるのに援護できないとか最悪だ。そういう時は場所を移動し斜めから射線を確保するんだ。魔術は回復時間も考慮しなるだけ道具を使え。手がなければ頭を使うんだ」
『ひいぃい』
「そこの見習い神官聖女ども。後ろで守られてお姫様気取りか?場面によっては《聖光》で敵の動きを止めるため前に出ることも覚えろ。《聖壁》とかも防御用ではなく退路を断つとか使い方を広く持て。それで窮地が救えることも多いんだ」
『うぇええん』
ピュアブリングは鬼教官であった。
この残酷な世界で生き残るために最も重要な『経験値』を出来る限り短時間で吸収させるためにあえてそうしている。仲間達もここまで徹底的に教える教官は初めて見たほどだ。
ただ過酷な鍛錬を課しひたすらいびるならそれまでだろう。だが、彼は人の心の持ち上げ方も非常に上手い。極々些細な行動や発想の変化を見逃さず「お前上手くなったな」などと上手く人を褒めて不満を解消させる。
個々の素質や性格さえ手中に収めスパルタ教育で鍛え上げていく姿は彼の外見からすると違和感ありまくりだが指導者として見るならば何の不思議もない。
訓練に励めば腹も減る。ピュアブリングは彼らのために食事も用意してくれる。
「ほら、さっさと食え。後があるんだから」
『い、いただき、ますぅ』
芋のシチューやパンや茹でたソーセージなど、簡素なものだがそれでも貧困暮らしの彼らからするとご馳走であった。訓練でかいた汗も洗い流せるし寝る場所は訓練場に野営テントを敷いたものだが安全は保障されている。
訓練をある程度積んだら実戦だ。
大鼠や大虫などを数人パーティを組んで順番に経験させる。最初こそ戸惑うが訓練での教育が行き届いており大した問題もなく依頼達成。ささやかな小金は彼らの取り分だ。授業料はもう差し引いてあるからだ。
自力で金を得られたことに喜び涙する彼ら。こんなことは彼らの元主は一切教えてくれなかった。
『オーガとかを倒して勇名をはせるぜ』
出る言葉はそれだけ。
自分の実力も考えずに馬鹿な言葉しか出てこない有様は夢見る自殺志願者そのものだった。そんなのに媚びへつらったり日和見をするしかなかった彼らからすると「嫌な主」である。
社会構造のカーストの下部に位置していた彼らからすれば媚びを売るしかなかったのだろう。もっとちゃんとしたことを教えてもらえれば違う未来があったはずだ。
大鼠や大虫退治は彼らの相手としては不満であった。でも、その主たちはもうこの世にはいない。頼れるのは自分らだけだ。
皆必死の形相である。
何度か実戦を行い順番でゴブリンなどを退治させる依頼へとシフトしていく。それで問題ないと判断されれば各パーティごとに分かれて依頼をこなしていく。
冒険者ギルド側も最低限とはいえ真面目に活動してくれる者が増えることは喜ばしい。でも、問題も起こるのは世の常だ。
「貴様ら!主を裏切り敵側に寝返って誇りはないのか。恥を知れ!我が子らをよくも見殺しにしたな」
案の定彼らの元主の一族や実親らが冒険者ギルドに文句を言いに来ていた。
冒険者とは自己責任自己負担でモンスターと戦う破落戸まがいの無頼漢だ、国が容易に軍勢を動かせないからこそこうした連中に身分保障を与えて冒険者ギルドがそれを管理している。
高名な冒険者はあらゆることが思いのままに出来るほどに権力がある場合が多い、なのでそれに憧れるのは無数に表れるが大多数はどこかで不幸な死を迎える。それは世界という営みの中の些細な出来事であり些末なことなのだ。そんな夢を目指した時点で覚悟しておくべきことであり後になってそれを否定してはならない。
そう、その人生を選んだ時点でもう後戻りはできないのだ。
怒鳴りこんできたこいつらからすると冒険者とは富と名誉は思うがままの商売、手厚い支援をすれば見返りがもらえる。そんな考えなのだろうが現実の残酷さをまるで理解していない。
どんなに備えていても予想外は必ず起こる。ただ彼らはそれに捕まっただけ、それだけだ。冒険者がどこかで死んだとしても誰も悲しむ必要はないのだから。
ピュアブリングからすると「ウザイ上馬鹿な連中の愚痴は聞きたくない」だ。
「ご家族様。あのですね、我々も注意したんですよ。出来もしない依頼はやめろと」
「その結果死亡しては何にもならんではないか。子供らに支援した分はどう回収するのだ。我が子を返せ」
「そもそも冒険者とはそういう仕事です。ご理解いただけないかと」
「ならなんで我が子らの取り巻き共が敵に寝返ったのだ。恩を忘れた恥知らずではないのか」
あくまでピュアブリングのほうが悪という言い分。埒が明かないとして別室に連れて行くことにした。
「大切な家族を失った悲しみはちゃんと理解できます。であれば、生き残った者はどうなるのでしょうか」
「は?そんなのは農奴なりになればいい。それ以外返済のあてはないだろう」
「彼らは真面目に冒険者を続けその中から返済しようと決意を固めてます。最悪の場合はどうしようもありませんがもうこれ以上無謀な要求はしないで下さい」
「こいつらは我が子らを見殺しにした罪人ではないか」
「その理解自体が間違いなのです。ただ冒険中に不幸な事故に遭遇し生き延びれなかった。事実はそれだけです」
「そんな言葉程度で子供の死を受け入れろと?冗談じゃない。我が子は優秀だった。それを見殺しにしたそちらの方が悪いはずだ」
「なるほど、人の善悪を明確に問えと。そういうことでしたら」
逃げようのない事実を教えてあげます。後悔しないで下さい。念押しするという事は冒険者プレートに記録された事実を公開するという事だろう。良く回収できたね。
ギルドの職員はその中身を次々と明かしていく。
「恐喝、脅迫、略奪、窃盗、代金未払い、女への暴力行為など、数十件の罪状があります」
「こ、こんなのは出鱈目だ。こんなのは証拠にはならない」
「この冒険者プレートの内容を保証しているのは世界中の諸国全てでありその保証は国王陛下から出ております。あなたが何者かは存じませんが国王陛下から権限を預かっている冒険者ギルドが不正を行うとお考えですか」
「い、いや、それでは、我が子は」
「まともに考えていれば即座に牢獄送りでしょう」
「な、なぜ、そのようなことに」
なってしまったのだ。この男は茫然自失となる。
「実家の支援に胡坐をかき真面目に冒険者の仕事をしなかった。それだけです」
「我が子を支援するのは当然ではないか」
「近年このように傲慢になる連中への対処が厳しくなっておりましてコネや縁故採用は軒並み白い目で見られております。つまり、あなたと同じ考えで行った多くの者たちのせいでそうした対処が世界中で行われるようになりました。国王陛下からの実印押しの書類も作成されております」
これ以上文句を言いたかったら国王陛下の前に行ってもらう必要がある。地方の有力者とはいえさすがに中央の大物に即座に会う機会なんてまずありえない。
「……あの子は何でこのようなことに」
この人にとっては可愛い我が子だったのだろう。だけども、冒険者ギルド発行のプレートに改竄は不可能だ。もっと援助すればよかった、そんな考えも出来る。それでは堂々巡りなのだ。犯罪に走ったのも実家の援助が足りないというより見知らぬ土地で潜んでいた欲望を解放しただけ。
それが犯罪であるという認識さえ低かった。何しろ、だれも自分を知らない土地だから。
「……なぜ、なぜ、私は、あの子を、冒険者などに、させてしまったんだ…」
大粒の涙。ごく普通に生きていればこのようなことにならなかったし犯罪に手を染めることもなかったはずだ。ちょっとした火遊び、些細な冒険、それが今この結果になった。
「お前たちは、見殺しにしたわけではないのだな」
「はい。ちゃんと注意しましたし止めたことも何度もあります。でも、彼の心には届きませんでした」
そうか。
「今後は真面目に冒険者として活動し支援した分の返済は徐々に行う予定です」
「わかった。そうしてくれ。私には心の整理を付けるための時間が必要だ。後のことをよろしく頼む」
その人はあれだけ僕のことを敵と見てたのに最後は涙しながら頭を下げてきた。世界にとっては些細な不幸でも一個人から見れば重大なことなんだよね。でも、僕がどうしようとも彼らを救う気はなかったことだけは言わないことにした。
もう彼らを守ってくれる相手はいなくなり自力で居場所を確保できなければ農奴になるか路上暮らしか娼婦にまで落ちる寸前まで追いつめられる。
だが、捨てられるものあれば拾う意味のあるものも存在していた。たとえそれが元主の敵だとしても救ってくれるのならば頭を下げる価値がある。
彼らにはもう逃げ場はないのだから。
「たかがこん棒、されどこん棒、正確に敵の急所を狙えばゴブリンでも即死させられる。武器がショボいとかなんだとか言ってる場合じゃないでしょ。どんな形であれ敵を倒せればいいんだから」
『は、はいっ』
「鉄の剣の方がいい?。馬鹿、5体も切れば血脂で使い物にならなくなる装備よりも物理で殴れ摩耗しにくい装備のほうがいいんだ。こん棒は人類が最初に装備した実績と歴史ある武器なんだ。見てくれより結果だ」
『はいっ』
「木製や革製の盾なんてダサくて格好悪い?てめぇら攻撃を防御できるありがたさが分かってないだろ。防具がなくて致命傷を負う危険性のあるお前らには野暮ったくても盾が有効なんだ。しっかり扱い方を覚えておけ」
『り、了解しました』
「おい、スリングショットを馬鹿にするなよ。こんな紐と石だけの装備だが投げ方を覚えれば鉄製の兜だって貫けるんだ。石なんてどこにだって転がっているんだ。それを使わないでなんとするんだ」
『はいっ』
「冒険の途中で装備を失った?じゃ、そこらの死体や倒した敵の装備を使え。あ?良心が痛む。お前の良心は自分や仲間の命よりも重いのか。生き残りたかったならあるものは全部使え。それで命が救われるなら軽いものだ」
『ひいっ』
「あとな。各種水薬の不用意な使用は控えろ。解毒剤もだ。それを常時使用していたら金ばかりが出ていく。本当に必要な場合だけ使え。これは仲間も同じだ。補給物資は望めば出てくるとは限らないんだ」
『へ、へいっ』
「おいお前。パーティでの自分の立ち位置をよく考えろ。位置取りをしないと連携が取れず決定打を与えるチャンスはやってこないぞ。常に仲間と違う攻撃点を見つけられるように立ち回るんだ」
『はひぃぃ』
「弓兵と術師が後ろにいるだけなんて思うな。味方が前に出てるのに援護できないとか最悪だ。そういう時は場所を移動し斜めから射線を確保するんだ。魔術は回復時間も考慮しなるだけ道具を使え。手がなければ頭を使うんだ」
『ひいぃい』
「そこの見習い神官聖女ども。後ろで守られてお姫様気取りか?場面によっては《聖光》で敵の動きを止めるため前に出ることも覚えろ。《聖壁》とかも防御用ではなく退路を断つとか使い方を広く持て。それで窮地が救えることも多いんだ」
『うぇええん』
ピュアブリングは鬼教官であった。
この残酷な世界で生き残るために最も重要な『経験値』を出来る限り短時間で吸収させるためにあえてそうしている。仲間達もここまで徹底的に教える教官は初めて見たほどだ。
ただ過酷な鍛錬を課しひたすらいびるならそれまでだろう。だが、彼は人の心の持ち上げ方も非常に上手い。極々些細な行動や発想の変化を見逃さず「お前上手くなったな」などと上手く人を褒めて不満を解消させる。
個々の素質や性格さえ手中に収めスパルタ教育で鍛え上げていく姿は彼の外見からすると違和感ありまくりだが指導者として見るならば何の不思議もない。
訓練に励めば腹も減る。ピュアブリングは彼らのために食事も用意してくれる。
「ほら、さっさと食え。後があるんだから」
『い、いただき、ますぅ』
芋のシチューやパンや茹でたソーセージなど、簡素なものだがそれでも貧困暮らしの彼らからするとご馳走であった。訓練でかいた汗も洗い流せるし寝る場所は訓練場に野営テントを敷いたものだが安全は保障されている。
訓練をある程度積んだら実戦だ。
大鼠や大虫などを数人パーティを組んで順番に経験させる。最初こそ戸惑うが訓練での教育が行き届いており大した問題もなく依頼達成。ささやかな小金は彼らの取り分だ。授業料はもう差し引いてあるからだ。
自力で金を得られたことに喜び涙する彼ら。こんなことは彼らの元主は一切教えてくれなかった。
『オーガとかを倒して勇名をはせるぜ』
出る言葉はそれだけ。
自分の実力も考えずに馬鹿な言葉しか出てこない有様は夢見る自殺志願者そのものだった。そんなのに媚びへつらったり日和見をするしかなかった彼らからすると「嫌な主」である。
社会構造のカーストの下部に位置していた彼らからすれば媚びを売るしかなかったのだろう。もっとちゃんとしたことを教えてもらえれば違う未来があったはずだ。
大鼠や大虫退治は彼らの相手としては不満であった。でも、その主たちはもうこの世にはいない。頼れるのは自分らだけだ。
皆必死の形相である。
何度か実戦を行い順番でゴブリンなどを退治させる依頼へとシフトしていく。それで問題ないと判断されれば各パーティごとに分かれて依頼をこなしていく。
冒険者ギルド側も最低限とはいえ真面目に活動してくれる者が増えることは喜ばしい。でも、問題も起こるのは世の常だ。
「貴様ら!主を裏切り敵側に寝返って誇りはないのか。恥を知れ!我が子らをよくも見殺しにしたな」
案の定彼らの元主の一族や実親らが冒険者ギルドに文句を言いに来ていた。
冒険者とは自己責任自己負担でモンスターと戦う破落戸まがいの無頼漢だ、国が容易に軍勢を動かせないからこそこうした連中に身分保障を与えて冒険者ギルドがそれを管理している。
高名な冒険者はあらゆることが思いのままに出来るほどに権力がある場合が多い、なのでそれに憧れるのは無数に表れるが大多数はどこかで不幸な死を迎える。それは世界という営みの中の些細な出来事であり些末なことなのだ。そんな夢を目指した時点で覚悟しておくべきことであり後になってそれを否定してはならない。
そう、その人生を選んだ時点でもう後戻りはできないのだ。
怒鳴りこんできたこいつらからすると冒険者とは富と名誉は思うがままの商売、手厚い支援をすれば見返りがもらえる。そんな考えなのだろうが現実の残酷さをまるで理解していない。
どんなに備えていても予想外は必ず起こる。ただ彼らはそれに捕まっただけ、それだけだ。冒険者がどこかで死んだとしても誰も悲しむ必要はないのだから。
ピュアブリングからすると「ウザイ上馬鹿な連中の愚痴は聞きたくない」だ。
「ご家族様。あのですね、我々も注意したんですよ。出来もしない依頼はやめろと」
「その結果死亡しては何にもならんではないか。子供らに支援した分はどう回収するのだ。我が子を返せ」
「そもそも冒険者とはそういう仕事です。ご理解いただけないかと」
「ならなんで我が子らの取り巻き共が敵に寝返ったのだ。恩を忘れた恥知らずではないのか」
あくまでピュアブリングのほうが悪という言い分。埒が明かないとして別室に連れて行くことにした。
「大切な家族を失った悲しみはちゃんと理解できます。であれば、生き残った者はどうなるのでしょうか」
「は?そんなのは農奴なりになればいい。それ以外返済のあてはないだろう」
「彼らは真面目に冒険者を続けその中から返済しようと決意を固めてます。最悪の場合はどうしようもありませんがもうこれ以上無謀な要求はしないで下さい」
「こいつらは我が子らを見殺しにした罪人ではないか」
「その理解自体が間違いなのです。ただ冒険中に不幸な事故に遭遇し生き延びれなかった。事実はそれだけです」
「そんな言葉程度で子供の死を受け入れろと?冗談じゃない。我が子は優秀だった。それを見殺しにしたそちらの方が悪いはずだ」
「なるほど、人の善悪を明確に問えと。そういうことでしたら」
逃げようのない事実を教えてあげます。後悔しないで下さい。念押しするという事は冒険者プレートに記録された事実を公開するという事だろう。良く回収できたね。
ギルドの職員はその中身を次々と明かしていく。
「恐喝、脅迫、略奪、窃盗、代金未払い、女への暴力行為など、数十件の罪状があります」
「こ、こんなのは出鱈目だ。こんなのは証拠にはならない」
「この冒険者プレートの内容を保証しているのは世界中の諸国全てでありその保証は国王陛下から出ております。あなたが何者かは存じませんが国王陛下から権限を預かっている冒険者ギルドが不正を行うとお考えですか」
「い、いや、それでは、我が子は」
「まともに考えていれば即座に牢獄送りでしょう」
「な、なぜ、そのようなことに」
なってしまったのだ。この男は茫然自失となる。
「実家の支援に胡坐をかき真面目に冒険者の仕事をしなかった。それだけです」
「我が子を支援するのは当然ではないか」
「近年このように傲慢になる連中への対処が厳しくなっておりましてコネや縁故採用は軒並み白い目で見られております。つまり、あなたと同じ考えで行った多くの者たちのせいでそうした対処が世界中で行われるようになりました。国王陛下からの実印押しの書類も作成されております」
これ以上文句を言いたかったら国王陛下の前に行ってもらう必要がある。地方の有力者とはいえさすがに中央の大物に即座に会う機会なんてまずありえない。
「……あの子は何でこのようなことに」
この人にとっては可愛い我が子だったのだろう。だけども、冒険者ギルド発行のプレートに改竄は不可能だ。もっと援助すればよかった、そんな考えも出来る。それでは堂々巡りなのだ。犯罪に走ったのも実家の援助が足りないというより見知らぬ土地で潜んでいた欲望を解放しただけ。
それが犯罪であるという認識さえ低かった。何しろ、だれも自分を知らない土地だから。
「……なぜ、なぜ、私は、あの子を、冒険者などに、させてしまったんだ…」
大粒の涙。ごく普通に生きていればこのようなことにならなかったし犯罪に手を染めることもなかったはずだ。ちょっとした火遊び、些細な冒険、それが今この結果になった。
「お前たちは、見殺しにしたわけではないのだな」
「はい。ちゃんと注意しましたし止めたことも何度もあります。でも、彼の心には届きませんでした」
そうか。
「今後は真面目に冒険者として活動し支援した分の返済は徐々に行う予定です」
「わかった。そうしてくれ。私には心の整理を付けるための時間が必要だ。後のことをよろしく頼む」
その人はあれだけ僕のことを敵と見てたのに最後は涙しながら頭を下げてきた。世界にとっては些細な不幸でも一個人から見れば重大なことなんだよね。でも、僕がどうしようとも彼らを救う気はなかったことだけは言わないことにした。
0
あなたにおすすめの小説
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる