推しの幼馴染み&モブでした。あぁ……もう遅いよ……ね?うぇ?どうしてこうなった!?

白銀

文字の大きさ
10 / 16

10

しおりを挟む


時雨の体を堪能していて、どこをどう走って来たか覚えていない。気付いたら家の前だった。
俺どんだけよ。
アパートの駐輪場にバイクを停め、時雨が降りる。そして、乗った時同様、時雨にひょいっと持ち上げられ、俺も地面へ着地。
時雨を案内しようと家に向かって一歩歩きだそうとするが、足がもつれ転びそうになる。それに気付いた時雨がさっと俺を支えてくれた。

「大丈夫か?」

色々ありすぎて(特に時雨との密着)パンクした頭同様足元もフラフラだ。
あは、うまく体に力が入らない。
フラフラと歩く俺を自然とエスコート(補助)をしてくれる紳士的な時雨様。はぁ、カッコいい。

「……ん、ありがとう」

そう返事はしたが、何だか頭がふわふわしてる気がする。ボーとして何も考えられない感じ……。あっ、もしかして痛み止めのせいかも。スズちゃん先生が帰り際に、「体質によって麻酔が効き過ぎることがあるから気をつけてね」って言ってたな。

「ミツ、本当に大丈夫か?ずっとフラフラしてるぞ」

ボーとしたまま、フラフラと歩く俺の様子がおかしいと思ったのか、時雨の眉間はずっと皺が寄っている。

「……ん、大丈夫。たぶん……麻酔のせい……」

「そうか……部屋、どこだ?」

「……2階、上がって、すぐのとこ」

「鍵は?」

「……ポケット」

2テンポ遅れてしゃべる俺を、時雨は軽々とお姫様抱っこで抱え階段を登る。
うわぁぃ!お姫様抱っこだ。

「……んへへ」

ぎゅっと抱きつきながら変な声で笑う俺に、時雨の口許がふっと緩む。時雨も何だか嬉しそうに見えた。





家の前に着くと時雨は俺をいったん下ろし、鍵をポケットから出してドアを開けた。

「一人で歩けるか?」

「ん……だいじょうぶぅ」

にへらと笑って答えたが、時雨の表情は険しいままだ。

「……大丈夫だよ?」

時雨に支えてもらっていた身体に力を入れ、歩こうとした途端、地面が揺れた。

「あれ?」

傾き倒れそうになる俺をすぐさま時雨の腕が支えた。

「……大丈夫じゃねぇだろう」

「あはは」

誤魔化して笑っていると、さらに眉間に皺を寄せた時雨が目に入る。
あっ、ヤバイ。コレ、マジで怒る寸前だわ。

「えっと……時雨、ありがとう。お願い、します」

お礼大事!





玄関で支えてもらいながら何とか靴を脱ぐと、電気を2か所つけ、キッチンを通りすぎてそのままリビング兼寝床まで連れていってもらった。
うむ、ここは常識人としてお茶を出すべきだよな?お菓子あったかな?あっ、冷蔵庫にチョコとペットボトルの水があった気がする。

「……時雨、冷蔵庫にある水、飲ん……?」

腰を支えられたまま、斜め上を見上げると、時雨が目を見開き固まっていた。

「……」

「時雨?」

時雨の視線をたどると俺の部屋だった。
何か珍しいものでもあったかな?別に何もないよな?置いてあるのは、布団、小さなテーブル、そして衣装ケースぐらいだ。
訳がわからず首を傾げていると、時雨が器用に片手で俺の頬をがしりと掴む。その表情はこれでもかというほど眉間に皺が寄っていて、わずかだかぎりっと歯ぎしり聞こえる。
えっと、怒ってらっしゃっている!えっ、何で!?
軽くパニクっていると時雨が静かに尋ねてきた。

「いつから……ここに住んでるんだ?」

「えっ?えっと……」

叔父さんとの事が終わって退院後だから……中3の10月頃で、今が高校1年の4月だから……。

「半年前、かな」

「そうか……」

そのままの表情で優しくポンポンと頭を撫でられた。

「……泊まるから。着替え買ってくる」

えっ、泊まり?まじで!あっ、でも、何もない!

「……おっ、俺も……買い物に!」

「大丈夫だ。食いもんだろ。適当に買ってくるからゆっくり休んでろ」

時雨はそう言うと静かに出ていった。
俺はふらふらしながら、無意識に布団があるところまで行き、パタンと倒れた。

「時雨がとまる……」

とまるって、泊まるだよな?止まるじゃないよな?あっ、布団ない!どうしよう、布団一組しかないから一緒に……推しと同じ布団!ヤバイ。胸がドキドキしてきた。あっ、掃除しなきゃ……って掃除機なかった!空気入れ換えて水拭きぐらいだな。

「雑巾ない……タオルで、いいか……」

倒れたまま改めて自分の部屋を見る。
うーん、今更ながら、この部屋何もないな。時雨楽しめるかな?何かゲームでも買うべきだよな?時雨の為に。あっ、でも……いっか。時雨がもう、家に来ることはないだろう。
『コイアイ』が、始まったのだから……。







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...