推しの幼馴染み&モブでした。あぁ……もう遅いよ……ね?うぇ?どうしてこうなった!?

白銀

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頬をひきつらせながら霧夜さんを見ていると、時雨の大きな手の平が俺の左頬を包み、ぐいっと右上側へと向けられる。つまり、時雨の綺麗な黒茶色の瞳と目が合った。斜め上から時雨にじっと見つめられ、ドキドキと胸が高鳴る。
やばい……綺麗……吸い込まれそう。
時雨の親指が俺の唇を優しく左右に何度も撫でる。
ん……なんだか……気持ちいい……。

「少しは警戒しろ」

「……ん」

「……ミツ、よく聞け。今後、俺以外の奴に簡単に触らせるな」

あぁ、なんていい声……もっと、聞きたい。

「おい、聞いてるのか?」

眉をひそめた時雨の顔もいいなっと思いながら、無意識に時雨の親指を咥えようと口を開いた瞬間、超低声ボイスが耳を直撃する。

「『おい、ミツル』」

「うっはっ、はい!」

我に返り返事をすると、腰に回った左腕に強く引っ張られたかと思うと、互いに抱き合う形になった。
今にもキスできそうな距離と細められた鋭い目に、ぞくぞくと全身が震えた。
ふぁ……時雨、カッコイイ。

「はぁ……こんなところで、そんな顔すんじゃねぇ……襲うぞ」

「ん……えっ?おそう?」

軽くパニクっていると、時雨は笑いながら俺の頭を優しく撫でた。

「やっぱ、いいな」

優しく微笑むレア時雨に周りにいた不良達がざわめく。
「笑った!」、「明日ヒョウがふるぞ!」、「総長が!」、などという声があがる。
時雨、みんなの前でどんだけ笑ってないんだよ。
時雨はそんな周りを気にすることもなく、数センチの距離で俺を見つめる。

「いいか、ミツル。さっき言ったことを守らなかった時は……わかってるだろうなぁ」

ニヤリと意味深に笑う時雨に、背筋がぞくりと震え、逆らってはダメだと本能が告げる。
こくこくと上下に何度も頷くと時雨は満足したのか、ゆっくりと離れていく。
時雨の温もりがなくなりちょっと悲しい。
離れていく腕を無意識に掴もうと目で追った瞬間、ひょいっと体を抱き上げられ、時雨が椅子に座ると同時に左腿に乗せられた。

「ちょっ、時雨!」

俺の腹を左腕で支えながら、顔を傾け首筋に近付ける。

「ん、ミツの匂いだ」

カーっと顔が赤くなるのを感じた。
ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!
何がヤバイって、時雨の全てがヤバイ!
めっちゃ近いし、息が首筋にかかってる!ってか、唇が首筋に当たってる気がする!あと、近すぎてもろに時雨の匂いと体温を感じて……いい匂い……じゃなくて!おかしくなるよ!
ふと周りにいる不良達が目に入った。

「っ!」

皆見てる!すっごく、ガン見されてるよ!
いたたまれなくなり小さくなって俯いていると、ケンさんがため息と共に時雨を呼んだ。

「はぁ、時雨……」

「なんだ?」

無邪気に笑顔で答える時雨にケンさんはこれでもかっと目を見開いたあと、開きかけた口を閉じた。数秒後の沈黙後、そっと目を背けた。

「……いや、なんでもない」

俺は、ケンさんに見捨てられました(泣)。





「あー、あ"ー、いでぇー」

床に放置されていた霧夜さんが、アソコを押さえながらゆっくりと立ち上がり、俺たちの横の椅子に座った。霧夜さんはジュースに口をつけながら横目で俺たちを見て固まる。

「……うわー、お前色々と変わりすぎだろ」

「うっせぇ。で、あの件どうだったんだ?」

「あー、そうだった。やっぱり『サクマ』の奴らだった」

真面目な話なのか、霧夜さんが俺の方を気にしてチラッと見る。
聞いちゃ不味いやつかな?と思い、時雨から降りようと動いた瞬間、動くなと言わんばかりに腰を強く引かれた。

「ぐっ!しっ、時雨っ」

「あー、わりぃ」

腰に回された力が少し弱まると、時雨はそのまま話を続けろと顎で指示する。

「あー、例の噂だが、やはり本当のことらしい。ボスは1年だ」

「へー」

「名前は三笠成我(みかさせいが)、長身の青髪でじゃらじゃらとアクセをつけているアホなヤツらしい」

『サクマ』のセイガ……どこかで聞いたような……。
あっ、主人公と時雨の出会いイベントだ!





『サクマ』が『クレナイ』の仲間を集団で襲い、殴る蹴るの暴行。仲間が病院送りにされ、時雨はぶちギレモードになる。『サクマ』へお礼参りにチームを引き連れていくつもりが、集合前にまた仲間数人がヤられたと聞き、ぶちギレMAXの時雨さん。
で、結局色々あって、時雨一人で『サクマ』のホームに乗り込むのだが、『サクマ』の副総長に不意打ちされ、ナイフで顔や腕を切られたうえに、腹を刺され負傷する。傷は深く出血多量。
ピンチだ!って時に、たまたま犬の散歩をしていた主人公に命を助けられるのだ。
この時、時雨を庇った主人公は目の下を切る怪我を負ってしまう。その後、タイミングよく『クレナイ』の仲間が来て大抗争勃発。
もちろん、勝利は『クレナイ』。時雨は主人公にお礼を言おうとしたが、『大丈夫!気にすんな!』と名前も告げず去ってしまう。それ以来、時雨は自分を庇って怪我をした主人公が気になり、探し始める。





大怪我……時雨が刺される……。
うん、ないな。シナリオ通りでもゆるすまじ!俺の推しが大怪我?ナニイッテルンデスカ。俺がそんなことさせない!
時雨達の話を聞きながら対策を考えていると、どうやら今日お礼参りをするみたいだ。

「時雨、俺、邪魔になるみたいだから帰る」

「あー、帰り道……」

「大丈夫。家、近くだから。時雨こそ、喧嘩するなら気を付けろよ」

「あぁ」

時雨の膝から降り、ぎゅっと抱き締めてから、ケンさんと霧夜さんにも挨拶をして、チクチクと刺さる不良達の視線を無視し、カフェから出ていったのだった。






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