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少しずつ警戒しながら近付いていくとカウンターに座るように促された。

「いらっしゃい。初めましてだよね?私はここのマスターのケンです。よろしく」

マスターということは、時雨の……。

「時雨の叔父さん?」

「おや、時雨の友達かい?そうだよ、時雨の叔父だ」

「若い!」

セリフの字幕だけしか出てこなかったので、こんなに若いとは思わなかった。しかも、時雨とは違った綺麗なイケメン。

「あはは、ありがとう」

スマートに握手を求められ、慌てて握手を返す。

「あっ、俺、瀬名垣充です。よろしくです」

ペコリと頭を下げると、ケンさんは驚いた声を上げた。

「えっ?はっ?ミツル君って、あのミツル君?」

「えっと、どのミツル君でしょうか?」

「幼馴染みのミツル君だよね?喧嘩っぱやくて、時雨といい勝負で、ちょっと前に突然姿をくらましたミツル君。で、時雨がめっちゃ探したけど見つからなくて、アイツ、キレて暴れてさ……めっさ大変だったわ……」

「あー、えっと、なんだか時雨がご迷惑をお掛けしてすみません。あと、いい勝負は違います。俺、一度も時雨に勝てませんでしたし……」

そっか、時雨、俺を探してくれたんだな。嬉しすぎる。
口を手で隠しながらニマニマ笑っていると、ケンさんが嬉しそうに俺の頭を優しくポンポンっと叩いた。

「安心したよ。時雨から君のことはよく聞いていたから。いままでどこに雲隠れしてたんだい?」

「あー、実は両親が離婚しまして、家にいられなくなって、しばらく叔父の家にいたんですが……その……お互い、反りが合わなくて……」

両親の離婚の原因はお互いの浮気。なので、俺がいたら邪魔らしく、お金をもらうことを条件に叔父の家へと預けられた。
叔父は独り暮しで、酒癖が悪く、よく俺に暴言や暴力を振るっていた。どうでもよかった俺は最初は大人しくやられていたが、あまりに酷かったので、ぶちギレて反撃。
まぁ、あれだ……警察沙汰になって、叔父は数ヶ月入院行き。俺も入院したが叔父ほどではなかった。
今までの鬱憤が溜まっていたから、遠慮なくやり返したんだよな。最初は警察もやりすぎではないか?と言われたが、俺の体の複数のアザを見て驚いた後納得した。無罪放免。それから一人暮らしである。
なんて、正直に言えるはずもなく。そのまま無言で俯く俺にケンさんは優しく頷いた。

「うんうん、反りが合わないのはどうしようもないよな。で、今はどうしてるんだ?」

「一人で暮らしてます」

「……ちゃんとご飯食べてる?」

「あー、はい」

視線を左上に向けながら答える俺に、眉間に皺を寄せるケンさん。
食べてるかと聞かれたら一応食べている。以前はコンビニ弁当を食べていたが、飽きたので最近はもっぱら新商品のお菓子ばかりだけど。うーん、ちゃんとじゃない、かも。
誤魔化すため苦笑いを浮かべていると、タイミングよくドアベルが鳴った。

「うっーす!マスター。いつもの、よろしくー」

「おぅ、キリ。相変わらず元気いいな」

「それだけが俺の長所」

チャラそうな男が、パチンとウィンクすると、マスターは笑いながら奥のキッチンの部屋へ入っていった。
「お疲れ様です!」と挨拶する不良達に、「おー」と返事を返しながらこちらに向かってきているのは、金髪で時雨と同じぐらいの年齢や身長のイケメン男。
……あっ、この人知ってる!時雨の右腕で、『クレナイ』の副総長の、霧夜だ。

「ん?誰?新入り?」

早速、気付かれる俺。

「えっと、俺は……」

どう答えていいかわからず困っていると、カウンターに戻ってきたケンさんが俺と霧夜さんにジュースを出しながら紹介してくれた。

「キリ、こちらは、時雨の幼馴染みのミツル君だ」 

「あぁ!時雨がちょー探していたミツル君か!俺、霧夜ってんだ。『クレナイ』の副総長をやってます。よろしく」

「よろしく、です」

にこにこ笑いながら横に座り、俺を見つめてくる霧夜さん。
えっと、居心地悪いんですが……。
出されたジュースに口をつけながら、チラッと見ると、霧夜さんが目をぱちぱちとさせながら、俺の頬にそっと触れる。
冷たい。微妙に嫌だ。しかも、無言。
耐えきれなくなった俺は、少し困った表情を浮かべ、霧夜さんの手をそっとどかしつつ首を傾げる。

「あのぅ……なんでしょうか?」

「ミツル君ってさ、美人さんだね」

「はぁ?俺が美人?」

「うん、美人!さらさらの黒髪が一層際立つ白い肌に、バランスよく整った顔でしょ。そのキョトンした瞳の下にあるセクシーな黒子に、今にもキスしたくなるようなぷるんとした唇。んで……」

「ふにゃぁ!」

突然横腹を捕まれ、思わず椅子から立ち上がった。そして、一瞬にして俺の横腹をガシリと捕まれ、霧夜さんの方へ引き寄せられる。
あっという間に、俺の体は霧夜さんの太ももに挟まれ、大きな手が無遠慮に服の中へと入りこむ。さわさわと撫でる感触に不快を感じ眉間に皺が寄る。

「ちょっ、やめっ」

「うほー!ブカブカのパーカーの下に隠されたこの細いクビレ!鳴き声もいい!君は最高のネっ、ゴ、グハッ!」

目の前にいた霧夜さんが、一瞬にして消えたと同時に、俺は暖かい腕の中に抱き寄せられていた。

「霧夜ーてめぇー、俺のもんに気安くさわってんじゃねぇ!」

俺を左腕で抱き締めながら、器用に霧夜さんのアソコを踏みつける時雨。

「ごっ、ごめんってば!ちょっ、イタ!マジ!そこ!いや!すんません!もうしません!あっ!ちょっ、うっ、グリグリ、やっ、イタ、あっ、らめっー!!」

場所の名前はあえて言わないが……痛そう。時雨さん、容赦ないっすね……。







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