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第四話 新学期
67 日常がまた始まる
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色々なことがあり過ぎた夏休みが明けて、二学期が始まる。
ダルそうに登校する者、久しぶりに会う友達と楽しそうにおしゃべりする者と、様々な生徒が校舎に入っていく。
由紀もそんな生徒に紛れて、校舎へと続く道を歩いていた。
そんな中、注目を集めている二人がいる。
「おい、あれ!」
「え、あの二人って付き合ってんのか!?」
こうした声に晒されているのは、永野愛花を隣に連れた田島であった。
会話しながら並んで歩く二人は楽しそうだ。デートは大成功だったと店に来た田島から報告を受けたが、その後の経過も上手く行ったらしい。
――おぅおぅ、ラブラブだねぇ。
由紀が眼鏡をずらして二人を見れば、とても綺麗な光景が広がっていた。二人の色はお互いに青色で、それが色彩を変化させながら徐々にピンク色になる。まさしく幸せな恋の色だ。
「いいねぇ、青春だ」
眼鏡を戻してから由紀が二人を拝んでいると、
「おい、朝からババ臭いぞお前」
いつの間にか、背後に近藤が立っていた。
「あ、おはよう」
「って、田島か」
由紀の視線の先で愛花を連れて登校する田島を見て、近藤が「フン」と鼻を鳴らす。
「鼻の下が伸びてそうだな」
「確かに、デレデレしてる」
由紀たちが田島の締まらない顔を観察していると。
「二人並んで、どうしたのー?」
柴田が現れて声をかけてから、田島と愛花の姿に気付く。
「あれ、近藤くんのお仲間じゃない? へ~、愛花ちゃんと付き合ってるんだぁ。案外お似合いだねぇ」
柴田が素直に感心していると。
「幸せそうなカップルはみんな消えればいい」
「まぁまぁ、幸せのおすそ分けがあるかもしれないじゃん」
朝から呪いでもかけそうな勢いの中田が続いて現れ、一緒に来たらしい下田が取りなす。
「よし来い,恋のオーラ!」
幸せカップルの空気を取り込もうと、中田が手で空気を掻きよせる仕草をしていると。
「いいや、幸せの独り占めをする奴は許さん」
「ちくしょう、上手くやりやがって」
呪いをかけそうなのが増えた。近藤のバイク仲間の残り二人だ。どうやら彼らは夏の恋をゲットできなかった模様である。田んぼ仲間が勢ぞろいしてしまったところに、近藤のバイク仲間まで揃ったので、由紀の周辺だけ朝から騒がしい。
「賑やかね、あなたたち」
するとそこへ朝から爽やかな声が聞こえて振り向けば、新開会長がいた。ファミレスで話して以来の顔合わせだ。
「おはようございます」
「……はよ」
由紀はペコリと頭を下げて、近藤は口だけで挨拶をする。
「おはよう近藤くんに西田さん。それにみんなも、のんびりしていたらホームルームに遅れるわよ?」
新開会長はそう忠告して微笑むと、校舎の方に歩いていく。そこに夏休みの面影は全くない。
あの後眼鏡を壊したお詫びだとして、新開会長から由紀の家に高級洋菓子セットと高そうな伊達眼鏡が郵送で届いた。添えられた手紙には反省の言葉が綴られていて、由紀のおかげで目が覚めた思いだと語られている。由紀としては夏休み中にちょっと突っかかって来られただけで、元々彼女に恨みを抱いているわけではない。それに本来は素敵な人なのだ。
そんなことを考えていた由紀だが、ふと新開会長の鞄になにかぶら下がっていることに気付く。
――あれ、なんかぬいぐるみがついているや。
それは人を丸っこくデフォルメされた人形で、背中にちっちゃな羽付きだ。デキる才女である新開会長の鞄に下げるにはアンバランスというか、似合わないようにも見える。いや、よくよく見ると明るい髪色にちょっと青い目のそれは、あの写真で見た「天使の弘くん」に似ている気がする。あんなに似ているぬいぐるみを、どこで買ったのだろう?
――ひょっとして手作りだったりして……。
そうだとしたらさすが新開会長、愛が重い。
「……」
そのぬいぐるみを近藤も見てしまったようで、虚無の顔になっていた。
ダルそうに登校する者、久しぶりに会う友達と楽しそうにおしゃべりする者と、様々な生徒が校舎に入っていく。
由紀もそんな生徒に紛れて、校舎へと続く道を歩いていた。
そんな中、注目を集めている二人がいる。
「おい、あれ!」
「え、あの二人って付き合ってんのか!?」
こうした声に晒されているのは、永野愛花を隣に連れた田島であった。
会話しながら並んで歩く二人は楽しそうだ。デートは大成功だったと店に来た田島から報告を受けたが、その後の経過も上手く行ったらしい。
――おぅおぅ、ラブラブだねぇ。
由紀が眼鏡をずらして二人を見れば、とても綺麗な光景が広がっていた。二人の色はお互いに青色で、それが色彩を変化させながら徐々にピンク色になる。まさしく幸せな恋の色だ。
「いいねぇ、青春だ」
眼鏡を戻してから由紀が二人を拝んでいると、
「おい、朝からババ臭いぞお前」
いつの間にか、背後に近藤が立っていた。
「あ、おはよう」
「って、田島か」
由紀の視線の先で愛花を連れて登校する田島を見て、近藤が「フン」と鼻を鳴らす。
「鼻の下が伸びてそうだな」
「確かに、デレデレしてる」
由紀たちが田島の締まらない顔を観察していると。
「二人並んで、どうしたのー?」
柴田が現れて声をかけてから、田島と愛花の姿に気付く。
「あれ、近藤くんのお仲間じゃない? へ~、愛花ちゃんと付き合ってるんだぁ。案外お似合いだねぇ」
柴田が素直に感心していると。
「幸せそうなカップルはみんな消えればいい」
「まぁまぁ、幸せのおすそ分けがあるかもしれないじゃん」
朝から呪いでもかけそうな勢いの中田が続いて現れ、一緒に来たらしい下田が取りなす。
「よし来い,恋のオーラ!」
幸せカップルの空気を取り込もうと、中田が手で空気を掻きよせる仕草をしていると。
「いいや、幸せの独り占めをする奴は許さん」
「ちくしょう、上手くやりやがって」
呪いをかけそうなのが増えた。近藤のバイク仲間の残り二人だ。どうやら彼らは夏の恋をゲットできなかった模様である。田んぼ仲間が勢ぞろいしてしまったところに、近藤のバイク仲間まで揃ったので、由紀の周辺だけ朝から騒がしい。
「賑やかね、あなたたち」
するとそこへ朝から爽やかな声が聞こえて振り向けば、新開会長がいた。ファミレスで話して以来の顔合わせだ。
「おはようございます」
「……はよ」
由紀はペコリと頭を下げて、近藤は口だけで挨拶をする。
「おはよう近藤くんに西田さん。それにみんなも、のんびりしていたらホームルームに遅れるわよ?」
新開会長はそう忠告して微笑むと、校舎の方に歩いていく。そこに夏休みの面影は全くない。
あの後眼鏡を壊したお詫びだとして、新開会長から由紀の家に高級洋菓子セットと高そうな伊達眼鏡が郵送で届いた。添えられた手紙には反省の言葉が綴られていて、由紀のおかげで目が覚めた思いだと語られている。由紀としては夏休み中にちょっと突っかかって来られただけで、元々彼女に恨みを抱いているわけではない。それに本来は素敵な人なのだ。
そんなことを考えていた由紀だが、ふと新開会長の鞄になにかぶら下がっていることに気付く。
――あれ、なんかぬいぐるみがついているや。
それは人を丸っこくデフォルメされた人形で、背中にちっちゃな羽付きだ。デキる才女である新開会長の鞄に下げるにはアンバランスというか、似合わないようにも見える。いや、よくよく見ると明るい髪色にちょっと青い目のそれは、あの写真で見た「天使の弘くん」に似ている気がする。あんなに似ているぬいぐるみを、どこで買ったのだろう?
――ひょっとして手作りだったりして……。
そうだとしたらさすが新開会長、愛が重い。
「……」
そのぬいぐるみを近藤も見てしまったようで、虚無の顔になっていた。
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