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第一話 予定が狂った夏休み
14 アルバイト二日目・午後の客
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――初耳なんだけど!
言われてよくよく見れば、近藤の髪の色は由梨枝と同じである。由梨枝の方は普通に染めているのだと思っていたが、それがまさかの地毛宣言である。
「なんでそれ言わないの!?」
「聞かれれば言ってるが、聞かれもしないのに言いふらすのもおかしいだろう」
確かにそうかもしれない。それに近藤曰く、学校側には伝えてあるとのこと。言われてみれば思い返しても、たまに抜き打ちで行われる風紀検査に、近藤が引っかかっているのを見たことがない気がする。だがまさかの新事実である。地毛であれば黒に戻して真面目になりましたアピールをしようがないし、そのためにわざわざ黒に染めるのも違うだろう。
「じゃあ、いつかファミレスにいた強面たちは?」
あれも不良じゃないのだろうか? 近藤とツルむ連中は、皆不良だとばかり思っていた。
「……強面っておめぇ。俺がいつもつるんでるのは、バイク仲間くらいだ」
――バイクとな。
近藤は由紀と同じく徒歩通学組なので、バイクに乗っているところなんて見たことがない。家に置いてあるのだろうか?
ここまで近藤がなにを聞いても答えてくれたので、由紀はついでに聞いてみた。
「あの公園のにゃんこは?」
「……母さんが猫アレルギーなんだよ」
なるほど、コッソリ公園でお世話をしているのか。なんだかいじらしい脱不良男である。
というわけで結論。近藤は不良ではなく、猫好きのバイク乗りだった。
こうして由紀が昼食を食べながらの聞き取り調査を終えると、午後のティータイム突入である。本日のケーキはチーズスフレケーキとイチゴのショートケーキだ。
――このケーキ、どこから買っているんだろう。
後で近藤か由梨枝に聞いてみようか。由紀がそんなことを考えながら、注文の品をせっせと運んでいると。
カランコロン
入り口ドアのベルが鳴った。土曜は平日だった昨日に比べて、さすがに客が多い。
「いらっしゃいませー」
由紀がしながら入り口を見ると、黒のストレートロングヘアを風になびかせた女子がいた。
――あ、新開会長だ。
そういえば新開会長は「そのうち店に顔を出す」って言っていた。あの時は近藤の家が喫茶店をしているなんて知らなかったので、なんの暗号かと思っていたが。ストレートに「家に遊びに行くよ」宣言だったようだ。
「こんにちは弘樹」
新開会長は入り口のあたりに立って、微笑みを浮かべて厨房の奥にいる近藤を真っ直ぐ見ている。由紀のことは全く視界に入っていないようだ。
――えーと、どうしようかな。
本来ならば由紀は客をすぐに席へ誘導するべきである。しかし新開会長はたぶん、近藤に席へ案内してもらいたいのだろう。由紀の眼鏡の端まで漏れるように、新開会長の纏うピンク色がチラチラとうつり、恋愛アピール全開である。
これに対して近藤はというと、新開会長にちらりと視線を寄越しただけで、特になにを言うでもなくその場を動かない。由梨枝もそんな息子と新開会長を、困ったように見比べている。
――誰も出て来んのかい。
であれば仕方ない、元々客の応対は由紀の仕事である。由紀は新開会長に見えるように前に回り込む。
「席へご案内します」
そう声をかけると、ここで初めて新開会長は由紀の存在に気付いたらしい。
「あら? あなた……」
「その節はどうも」
新開会長はぶつかった相手のことを覚えていたようだ。目を見張る彼女に由紀はペコリと頭を下げつつも、席に誘導する。
「こちらの席へどうぞ」
由紀がそう言って窓際の席へ案内しようとすると。
「え、出来ればカウンター席に……」
新開会長が座ろうとするカウンター席は現在結構混みあっていて、他の客と間を空けることができない。ゆったり座れるようにと、空きのある窓際を進めているのだが、恐らく新開会長は近藤のいる厨房が見える席がいいのだろう。
言われてよくよく見れば、近藤の髪の色は由梨枝と同じである。由梨枝の方は普通に染めているのだと思っていたが、それがまさかの地毛宣言である。
「なんでそれ言わないの!?」
「聞かれれば言ってるが、聞かれもしないのに言いふらすのもおかしいだろう」
確かにそうかもしれない。それに近藤曰く、学校側には伝えてあるとのこと。言われてみれば思い返しても、たまに抜き打ちで行われる風紀検査に、近藤が引っかかっているのを見たことがない気がする。だがまさかの新事実である。地毛であれば黒に戻して真面目になりましたアピールをしようがないし、そのためにわざわざ黒に染めるのも違うだろう。
「じゃあ、いつかファミレスにいた強面たちは?」
あれも不良じゃないのだろうか? 近藤とツルむ連中は、皆不良だとばかり思っていた。
「……強面っておめぇ。俺がいつもつるんでるのは、バイク仲間くらいだ」
――バイクとな。
近藤は由紀と同じく徒歩通学組なので、バイクに乗っているところなんて見たことがない。家に置いてあるのだろうか?
ここまで近藤がなにを聞いても答えてくれたので、由紀はついでに聞いてみた。
「あの公園のにゃんこは?」
「……母さんが猫アレルギーなんだよ」
なるほど、コッソリ公園でお世話をしているのか。なんだかいじらしい脱不良男である。
というわけで結論。近藤は不良ではなく、猫好きのバイク乗りだった。
こうして由紀が昼食を食べながらの聞き取り調査を終えると、午後のティータイム突入である。本日のケーキはチーズスフレケーキとイチゴのショートケーキだ。
――このケーキ、どこから買っているんだろう。
後で近藤か由梨枝に聞いてみようか。由紀がそんなことを考えながら、注文の品をせっせと運んでいると。
カランコロン
入り口ドアのベルが鳴った。土曜は平日だった昨日に比べて、さすがに客が多い。
「いらっしゃいませー」
由紀がしながら入り口を見ると、黒のストレートロングヘアを風になびかせた女子がいた。
――あ、新開会長だ。
そういえば新開会長は「そのうち店に顔を出す」って言っていた。あの時は近藤の家が喫茶店をしているなんて知らなかったので、なんの暗号かと思っていたが。ストレートに「家に遊びに行くよ」宣言だったようだ。
「こんにちは弘樹」
新開会長は入り口のあたりに立って、微笑みを浮かべて厨房の奥にいる近藤を真っ直ぐ見ている。由紀のことは全く視界に入っていないようだ。
――えーと、どうしようかな。
本来ならば由紀は客をすぐに席へ誘導するべきである。しかし新開会長はたぶん、近藤に席へ案内してもらいたいのだろう。由紀の眼鏡の端まで漏れるように、新開会長の纏うピンク色がチラチラとうつり、恋愛アピール全開である。
これに対して近藤はというと、新開会長にちらりと視線を寄越しただけで、特になにを言うでもなくその場を動かない。由梨枝もそんな息子と新開会長を、困ったように見比べている。
――誰も出て来んのかい。
であれば仕方ない、元々客の応対は由紀の仕事である。由紀は新開会長に見えるように前に回り込む。
「席へご案内します」
そう声をかけると、ここで初めて新開会長は由紀の存在に気付いたらしい。
「あら? あなた……」
「その節はどうも」
新開会長はぶつかった相手のことを覚えていたようだ。目を見張る彼女に由紀はペコリと頭を下げつつも、席に誘導する。
「こちらの席へどうぞ」
由紀がそう言って窓際の席へ案内しようとすると。
「え、出来ればカウンター席に……」
新開会長が座ろうとするカウンター席は現在結構混みあっていて、他の客と間を空けることができない。ゆったり座れるようにと、空きのある窓際を進めているのだが、恐らく新開会長は近藤のいる厨房が見える席がいいのだろう。
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