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第一話 予定が狂った夏休み
13 アルバイト二日目・昼休憩
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――何故二人一緒に休憩にさせるのさ?
賄いを別々に作るのが面倒なのだろうか。おかげで近藤と並んで食事する羽目になる由紀の心労を考えて欲しい。だが由紀は雇い主に文句を言う勇気もなく、カウンターに座る。
本日の賄いはピラフとサラダだ。冷凍食品ではないピラフを食べるのだって、もしや初ではなかろうか。ファミレスのピラフが冷凍食品か手作りかは、敢えて触れずにおきたい。
「おいし~い、けどわびし~い」
由紀は自分の食生活を改めて考え直す必要性を感じていた。こんな美味しいご飯が食べられるから、近藤は外へ遊びに行かないのだろうか?
――いや、それはないな。
このご飯を食べ慣れていたら、近藤にとって至って普通の食事だろう。この食事が普通だなんて、羨ましい。由紀の母は料理が不得手なので、レパートリーは少ない。そして不幸なことに、由紀はその母の遺伝子をバッチリ継いでいる。つまりは由紀も料理が得意でないのだ。
よって一週間の主なメニューは冷凍食品かレトルト、その間にたまに早く帰った父の手の込んだ手作りの夕食が挟まるのが、西田家の食卓だ。
――くそぅ、贅沢者めが!
八つ当たりな恨みを込めた視線を隣に向けると、あちらも由紀を見ていた。バチッと音が鳴ったかのように目が合ってから、
「ぎゃっ!?」
蛇に睨まれた蛙のように不良に睨まれた地味女悲鳴と共に一瞬固まり、ギュンと音がしそうな勢いで首を逆方向に巡らせる。
「……んだよ、なにが言いたい?」
しかし近藤は興味を逸らしてくれず、低い声で凄まれた。威圧感を醸し出されて、「なんでもないです」とは言い辛い雰囲気だ。
仕方なく由紀は向き直り、さすがに料理への恨み節は恥ずかしいので、気になっていることを尋ねた。
「どっか遊びに行かないの?」
「このクッソ暑い時に、どこへだ」
近藤が眉を寄せて問い返す。どこへと言われても、どこにでも行けばいいと思うが、とりあえず不良の定番出先をひねり出す。
「えぇっと、乱闘現場とか?」
「暑い時に暑苦しいモン見に行くとか、地獄じゃねぇか」
近藤がすごく嫌そうな顔をした。
――まあ、そうかもね。
由紀も自分で言っておきながら、夏に乱闘はないなと思う。喧嘩になっても大人しくゲームセンターで勝負を決めていれば、お互いに涼しいに違いない。
「でも、手下がやられたら出番が来るんじゃないの?」
不良同士の抗争は、時折漫画のネタになる。現実にもそう言った事例があるのではなかろうか?
「なんだよ、その手下って」
興味半分怖さ半分で聞いた由紀に、しかし近藤がいぶかしむ顔をした。
「え、いつも学校で群らがってるのがいるじゃん」
金魚のフンのごとく近藤の行くところはどこへでも付いて行く軍団を、手下と言わずしてなんなのか。
「アレは勝手に群れてる、赤の他人だ」
だが、近藤はバッサリと切り捨てた。
――赤の他人って、アンタ。
虎の威を借る狐のごとく、近藤の怖さを借りて結構なヤンチャをやらかす集団なのに。あんなに騒がしくて迷惑な赤の他人が、あっていいものなのか。
じいっと疑いの視線を向ける由紀に、近藤は少しバツの悪そうな顔をする。
「……中学の頃は、ちぃっとだけグレてたけどよ。今は違うぞ」
あのやたら群れている赤の他人軍団は、近藤と同じ中学出身の不良たちらしい。あの頃の思い出を忘れられない軍団が、散らしても散らしても群がって来るのだという。
「今はアイツらが出入りするような場所には行ってない」
近藤の言葉を信じるならば、不良は卒業したということか。
「じゃあ、なんで髪染めてるの?」
髪を黒くして、不良卒業アピールをすればいいのに。そうすれば軍団も自然消滅しないだろうか。髪を染めないでいたら、近藤も案外普通に見えるかもしれない。大学生以上になれば違うのだろうが、高校生だと髪染めイコール不良である。
由紀の疑問に、近藤は「はあ」とため息を吐く。
「俺のこれは地毛だ。俺のばぁさんがイギリス人とかで、子供の頃からこの色だ」
「え、そうなの!?」
なんとびっくり情報だった。
賄いを別々に作るのが面倒なのだろうか。おかげで近藤と並んで食事する羽目になる由紀の心労を考えて欲しい。だが由紀は雇い主に文句を言う勇気もなく、カウンターに座る。
本日の賄いはピラフとサラダだ。冷凍食品ではないピラフを食べるのだって、もしや初ではなかろうか。ファミレスのピラフが冷凍食品か手作りかは、敢えて触れずにおきたい。
「おいし~い、けどわびし~い」
由紀は自分の食生活を改めて考え直す必要性を感じていた。こんな美味しいご飯が食べられるから、近藤は外へ遊びに行かないのだろうか?
――いや、それはないな。
このご飯を食べ慣れていたら、近藤にとって至って普通の食事だろう。この食事が普通だなんて、羨ましい。由紀の母は料理が不得手なので、レパートリーは少ない。そして不幸なことに、由紀はその母の遺伝子をバッチリ継いでいる。つまりは由紀も料理が得意でないのだ。
よって一週間の主なメニューは冷凍食品かレトルト、その間にたまに早く帰った父の手の込んだ手作りの夕食が挟まるのが、西田家の食卓だ。
――くそぅ、贅沢者めが!
八つ当たりな恨みを込めた視線を隣に向けると、あちらも由紀を見ていた。バチッと音が鳴ったかのように目が合ってから、
「ぎゃっ!?」
蛇に睨まれた蛙のように不良に睨まれた地味女悲鳴と共に一瞬固まり、ギュンと音がしそうな勢いで首を逆方向に巡らせる。
「……んだよ、なにが言いたい?」
しかし近藤は興味を逸らしてくれず、低い声で凄まれた。威圧感を醸し出されて、「なんでもないです」とは言い辛い雰囲気だ。
仕方なく由紀は向き直り、さすがに料理への恨み節は恥ずかしいので、気になっていることを尋ねた。
「どっか遊びに行かないの?」
「このクッソ暑い時に、どこへだ」
近藤が眉を寄せて問い返す。どこへと言われても、どこにでも行けばいいと思うが、とりあえず不良の定番出先をひねり出す。
「えぇっと、乱闘現場とか?」
「暑い時に暑苦しいモン見に行くとか、地獄じゃねぇか」
近藤がすごく嫌そうな顔をした。
――まあ、そうかもね。
由紀も自分で言っておきながら、夏に乱闘はないなと思う。喧嘩になっても大人しくゲームセンターで勝負を決めていれば、お互いに涼しいに違いない。
「でも、手下がやられたら出番が来るんじゃないの?」
不良同士の抗争は、時折漫画のネタになる。現実にもそう言った事例があるのではなかろうか?
「なんだよ、その手下って」
興味半分怖さ半分で聞いた由紀に、しかし近藤がいぶかしむ顔をした。
「え、いつも学校で群らがってるのがいるじゃん」
金魚のフンのごとく近藤の行くところはどこへでも付いて行く軍団を、手下と言わずしてなんなのか。
「アレは勝手に群れてる、赤の他人だ」
だが、近藤はバッサリと切り捨てた。
――赤の他人って、アンタ。
虎の威を借る狐のごとく、近藤の怖さを借りて結構なヤンチャをやらかす集団なのに。あんなに騒がしくて迷惑な赤の他人が、あっていいものなのか。
じいっと疑いの視線を向ける由紀に、近藤は少しバツの悪そうな顔をする。
「……中学の頃は、ちぃっとだけグレてたけどよ。今は違うぞ」
あのやたら群れている赤の他人軍団は、近藤と同じ中学出身の不良たちらしい。あの頃の思い出を忘れられない軍団が、散らしても散らしても群がって来るのだという。
「今はアイツらが出入りするような場所には行ってない」
近藤の言葉を信じるならば、不良は卒業したということか。
「じゃあ、なんで髪染めてるの?」
髪を黒くして、不良卒業アピールをすればいいのに。そうすれば軍団も自然消滅しないだろうか。髪を染めないでいたら、近藤も案外普通に見えるかもしれない。大学生以上になれば違うのだろうが、高校生だと髪染めイコール不良である。
由紀の疑問に、近藤は「はあ」とため息を吐く。
「俺のこれは地毛だ。俺のばぁさんがイギリス人とかで、子供の頃からこの色だ」
「え、そうなの!?」
なんとびっくり情報だった。
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