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第九章:Burning Heart

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「ねえ……何で、にゃんこが、ここに居るの?」
「何で、瀾さんの家から持ち出したモノに、全部、電撃浴びせなかったんですか?」
 ようやく、沙也加さん達に追い付いた時には、既に広島県内。
 複数のテロ組織と残留住民の自治会が抗争を続ける旧首都圏。歴史的な経緯で、市役所や県庁、地元警察の業務を自治会や自警団が代行している「NEO Tokyo」。そして、テロ組織が実効支配している大阪府と並ぶ、「日本の中にある普通の日本じゃない場所」。
 ここ広島県は……自称・保守系政治団体、早い話がヤクザの連合体である「神政会」が実効支配している。
 その「裏ボス」は日本全国でも二~三〇人、全世界でも千人ほどしか居ない、異能力者の頂点「神の力を持つ者達ディヴァイン・アバターズ」「荒人神デモニック・ディヴィニティーズ」の中でも、更に、全世界最強の十人に入るであろう化物。
 ゴジラが本当に居たとしても、あっさりブチのめせるであろう(ただし、ゴジラが暴れた場合以上の二次被害が発生する可能性が無茶苦茶高い事はガン無視するとして)……人の姿をした怪物を超えた怪物だ。
 旧在日軍・岩国基地の人員を一瞬で皆殺しにして、十年ほど前の富士の噴火による首都圏壊滅を契機に広島県を手中に納めた。日本の他の地域が無事で済んでるのは……全世界の「神の力を持つ者達ディヴァイン・アバターズ」最強の十人の内の大半が、よりにもよって日本に揃っているからに過ぎない。恐しい事に、今の日本の一応の平穏の裏には……怪物ゴジラを超えた怪獣ゴジラ7体の、いつ破綻するか知れたモノじゃない冷戦と力の均衡が有り……ボクたち、俗に言う「正義の味方」の裏の使命は「怪物ゴジラ同士の戦いが勃発した時に、怪物ゴジラを倒」事なのだ。
 なにせ、十年ほど前の……富士山の形が変るほどの大噴火と、旧首都圏の壊滅をもたらした「神」さえも、その7名に比べれば1~2ランク劣る存在に過ぎない。
 ……普通の日本人の大半は……薄い床が何かの拍子にブチ抜かれた時に、その下には、とんだ地獄が広がってる事なんて知るよしもないけど。
 まぁ、いくら怪獣ゴジラの内の1体の御膝下に居るって言っても、ボクたちが、その怪獣ゴジラに襲われる可能性は極めて低い。冗談抜きで、その怪獣ゴジラとボクたちの関係が「知り合いの知り合い」ぐらいの案外近いモノだとしてもだ。
「な……なんか……おかしいと思ったんだよね……。あの家で見付けた服や靴が……全部、あたしと、沙也加ちゃんにピッタリのサイズだった……。あと、家の中は埃だらけなのに……『道具』だけはピカピカ」
 そう言ったのは……沙也加さんの連れの女の子。
「う……。あの……瀾おねえちゃんは、何て言ってる?」
「……不合格……」
「あ……あんにゃろ……帰ったら、もう1回……電撃を……」
「じゃ、帰りますよ」
「……」
「その十八切符、お兄さんが彼女さんとのデートの為に買ったのでしょ?」
「……こうなりゃ、奥の手だ……。にゃんこ~♡」
 え……?
 ボクに近付く沙也加さん……いや……近過ぎ……。
 そして……沙也加さんの手がボクの喉元に……。
「にゃっ♪」
「にゃんこ~、選択肢は2つだよ~。1つ、一緒に来る。2つ、あたし達を見逃す。どっちを選ぶ~♪」
「そりゃ、その……」
 なでなでなで……。
「おい……」
「あ……っ」
「に……兄ちゃん……」
「お前、今、電車ん中で変身しようとしてただろ……」
「は……はい……」
「あと、お前、今、人間の誇りを捨てかけてただろ……」
「は……はい……」
「お前……俺の妹の彼氏か? それとも……俺の妹の飼い猫か?」
 ……。
 あ~……。
 飼い猫でもいいな、って思ってしまいました……。
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