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第八章:Tears

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 とりあえず、翌朝、家主の軽自動車でJRの博多駅まで送ってもらった後で……何故か携帯電話ブンコPhoneが鳴り出した。
『今、博多駅に着いたから、一緒に行こ』
 声の主は、同級生の沙也加ちゃん。
「えっ? ちょっと待って、どう云う事?」
『瀾おねえちゃんから、撫子ちゃんに付いてってやれって』
「あ……そ……」
 改札を通って、小倉方面行きのホームに行ってみると……。
「あ、撫子ちゃん、こっち……」
 そう言って手を振ってたのは……「魔法少女」だった頃の同僚の優那ゆなちゃん。
「沙也加ちゃんは?」
「あっち……」
 優那ゆなちゃんが指差す方を見たら……ホームのうどん屋さんで……。
「沙也加……ちゃん……?」
「ごちそうさま」
 どう見ても大盛り用のどんぶりに……おにぎりか稲荷寿司用の皿が2つ。
「えっと……朝御飯、まだだったの?」
「何か、最近、育ち盛りみたいで……」
「ところで、快速電車来たけど……」
「あ、ちょっと待って、自販機でジュース買ってから……」
 う……何か、あのクソ女が前に言ってた通り……沙也加ちゃんは手際や段取りがクソ苦手かも……。
「あ~、あたしのバッグどこ……」
「大丈夫、私が持ってるから……」
 何が入ってるか判んないけど見るからに重そうな……丈夫そうな生地にゴツい造りの登山用か何からしいリュック。
 そして、電車に乗ってからも……。
「ええっと……どこだっけ……あれ? 忘れてきたんだっけ?」
 と、沙也加ちゃんは、次の駅に着くぐらいまでの時間をかけて、ようやくお目当てのモノをリュックから見付けだし……。
「あ~、2人とも動かないで……」
「えっ?」
「へっ?」
「だから、表情変えないで」
「無理だよッ‼」
 どうやら、沙也加ちゃんは、タブレットPCで、あたしと優那ゆなちゃんの似顔絵を描いてるらしい。
「よし、これで……」
「ちょっと見ていい」
「いや、まだ、フィルタかけてる途中だから……」
「フィルタ?」
 タブレットPCの画面には……え……えっと……?
「何のフィルタなの、これ?」
 どんどん、人間の顔だったらしいモノが……犬と猫の顔に変っていってる。
獣化アニマライズってフィルタ」
「へっ?」
「お絵描きソフトをアップデートしたら、新しいAIフィルタが追加されてた。人間の顔を元に……元の顔の面影を残した動物の顔に変換してくれるって」
「ちょ……ちょっと、あたし達の顔、変なのに使わないでよ」
「ごめん、ごめん……待てよ……」
 そう言って、沙也加ちゃんは……何かを思い付いたようで……。
 しばらくタブレットPCを操作し……何故か首を傾げ……。
「どしたの?」
「いや……何でも……」
 もう1度、タブレットPCの画面を見せてもらうと……そこには、さっきの獣化アニマライズとか言うAI処理をされたらしい写真が2つ……。
 1つは白い犬の顔に変えられ……もう1つは虎……でも……虎の方は、何故か白黒が反転していた。
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