告白ごっこ

みなみ ゆうき

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11.茶番⑦

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土曜日。

昨日まで強烈な日差しを放っていた太陽は、今日に限って厚い雲に覆われていた。
まるで俺の心を写し取ったかのような曇天。
ただでさえ憂鬱だと思っていた外出が、この天気のせいで余計憂鬱さを増した気がした。


ショッピングモールの最寄り駅に着き、改札を出たところで高崎の姿を探す。するとすぐに数人の女の子に囲まれ、笑顔で話をしている高崎の姿を見つけることが出来た。


あそこに入ってくとか、マジか……。

少し離れた位置から様子を窺ってみるが、女の子達が立ち去る気配はなさそうだ。
何だか俺がここにいることのほうが場違いのように感じられ、とてもじゃないが近寄っていく気にはなれなかった。

待ち合わせの時間までは後十分くらいある。どっかで時間潰してからまた来よう。

そう考えて別の方向に足を踏み出したその時。


「瑠衣ー! こっち!」


俺を見つけてしまったらしい高崎に大声で名前を呼ばれ、足を止めない訳にはいかなくなった。


にこやかに女の子達に別れを告げ、高崎が俺に駆け寄ってくる。
その場に残された女の子達は、まるで俺を値踏みするかのようにこっちをガン見していた。

それはすぐに何かを期待するような視線に変わる。

イケメンである高崎の待ち合わせの相手が彼女とかじゃなくてホッとしてるんだろう。そしてこっちは男二人だということで、自分達が入り込む余地があると判断したに違いない。

そっか。イケメンと出掛けると、こういう事があるんだな……。


これをどう収拾つけるつもりなのか高崎の出方を見ていると。


「待ち合わせだって言ってんのにしつこくて。
あれ? なんか今日の瑠衣、いつもと感じが違うね。学校いる時とは雰囲気違って全然知らない人みたいでドキドキする」


彼女達の存在など最初から無かったかのようにまるっと無視して、俺の耳許で甘い台詞を吐いてきた。

俺はつい吐きそうになるため息を寸でのところで飲み込むと、「……じゃあ、行こうか」と言ってから高崎の返事も待たずに歩き出した。


こんな風に天気も微妙なら、会った瞬間から微妙な展開の滑り出しに、ただでさえ低かった俺のテンションは底辺を極めていた。
でもそれを顔や態度に出すようなヘマだけはしないよう、自分自身に言い聞かせる。

こんな茶番もあと少しで終わる。高崎が勝負をかけるんなら今日以外あり得ない。

賭けの期限までは一週間を切っていた。



まだ昼食を摂ってないという高崎と一緒にランチをした後、俺のリクエストどおり服を見て回る。
お互いの選んだ物を見て感想を言い合ったり、一緒に選んだりしながら、何着か気に入ったものを購入した。

ここに来る前は、高崎と二人で買い物なんて絶対に気詰まりなものになるだろうと覚悟していたけれど、意外にも友達と普通に出掛けているのと大差ない感じでホッとした。

それどころか案外楽しいと感じている自分もいて、我ながら単純だなと自嘲する羽目になった。


ショッピングモールを出ると、真っ黒な雲に覆われた空からはポツポツと雨が降りだしていた。

駅までそれほど離れていないため、走ることにしたのだが。

最近あまり運動をしていない俺は、バスケ部で毎日鍛えている高崎と同じペースでは走れず、徐々に距離が開いていく。
高崎はそんな俺に気付くことなくどんどん先へと行ってしまっていた。

さすがにしんどくなった俺はスピードを緩めると、高崎についていくことは早々に諦め、自分のペースで走ることにした。

雨足は確実に強まってきている。

このままじゃびしょ濡れだな。駅に着いたらさっき買った服に着替えるか……。

なんて考えていたら。


「瑠衣!」


血相を変えて戻ってくる高崎が見えてギョッとした。
俺は慌てて高崎に駆け寄る。


「気付いたら後ろに瑠衣がいなくて滅茶苦茶焦った……! ゴメン。俺、全然気付かなくて……」

「……俺こそゴメン。昴流について行けそうにないから途中で諦めた。わざわざ戻って来なくても良かったのに」


情けないとは思うけど、見栄を張ったところで現役運動部との体力の差が縮まるわけじゃないので、正直に理由を話しておくことにする。

すると高崎はちょっとだけ困ったような顔をした後、おもむろに俺の手を握った。


「手、繋いでおけばはぐれないだろ?」

「え?」

「行こう」

「は!? ちょッ……!」


手を繋がれ、高崎に引っ張られるようにして走ることになった俺は、転びそうになりながらも必死に足を動かした。
多少加減はしてくれたようだが、俺にとってはしんどいペースに、そんなに遠くない筈の駅に着く頃にはすっかり息が上がり、日頃こんなに走ることがない足はパンパンになっていた。

ホームのベンチに座り電車を待つ。隣に座っている高崎が涼しい顔をしているのが腹立たしい。
明日確実に筋肉痛だななんて思っていたら。

ベンチの座面に置いていた俺の手に高崎の手が重なった。

そして。


「良かったらこの後、俺んち来ない?」


軽い調子の言葉とは裏腹に、俺に向けられている瞳にはある種の獰猛さのようなものが見え隠れしていた。

俺はこの瞳に宿る感情の意味を知っている。

獲物を捕食しようとするオスの瞳。


──ついにその時が来たのだと思った。
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