告白ごっこ

みなみ ゆうき

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10.茶番⑥

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屋上でのキスを境に、俺達の仲は急速に深まっていったように見えたと思う。


その証拠に、俺の告白から二週間以上経って漸く交換したメッセージアプリのIDは、あの日以来結構な頻度で活躍している。

これまでは学校でしか接触がなかったから知らなかったが、高崎は意外とマメな性格らしく連絡を欠かさない。
俺発信でのやり取りは無いに等しいが、高崎からの連絡はそれこそ『おはよう』から『おやすみ』まで多岐に渡り、その頻度も結構なものだった。

あれだけフットワーク軽く女の子をとっかえひっかえしてる上に、罰ゲームとはいえ自分から告白して口説き落としたりもしてるんだから、それくらいの事ができなきゃダメなんだろうとは思うけど、気のない相手にもちゃんと連絡してくるなんて、素直にすごいなと感心した。

イケメンで他校でも有名になるほどの人気者。
確実に入れ食い状態で、餌も撒かずにほったらかしにしてたって相手のほうからバンバン食い付いてきそうな感じなのに。

こういうところが罰ゲームで告白とか軽いノリでやっちゃうようなゲスでも、そうとは思われずにモテる秘訣なんだろうな。

大半が『疲れた』とか『眠い』とか『暇だ』とか、はっきり言ってどうでもいい内容で返事に困るものだったが、こうした他愛もないやり取りをしていると、かつて俺にも当たり前にあった日常が嫌でも思い出されてしまい、ちょっとだけ切なくなった。



学校でも話をして、お昼休みを一緒に過ごして、友達同士じゃ絶対にしないようなキスをする。家に帰っても高崎からなんだかんだとメッセージが送られてきて。
真相を知らなかったら俺達は完全に両想いで、片時も離れたくないと思っている付き合いたてのカップルだと錯覚してることだろう。

実際のところは、付き合ってる訳でもなく、『好き』だとかそういう決定的な言葉を言うわけでもなく、プライベートにも一切踏み込んで来ない高崎に、表面上は俺が片想いしている状態を保っている。

──高崎のやり方は実にうまいと思う。

未だに俺は高崎の名前とバスケ部に所属してるという事以外の個人情報を知らず。高崎に至っては俺の名前くらいしか知らないと思われる。
それでも話題に困ることはなく、こうしてほぼ毎日一緒にいることで付き合ってるかのように錯覚させ、実は相手に全く興味がないってことを気付かせないようにしているんだから。

ある意味すごいスキルの持ち主だ。



《おつかれー》
《今日の部活めっちゃハードだった》
《でも》
《明日の部活は午前だけになった!》
《午後から会おうよ》

週末の夜。高崎からきたメッセージ。俺はそれにOKのスタンプで返す。すぐに既読がつき、新しいメッセージが送られてくる。

《行きたいとこある?》
《今度こそは瑠衣の行きたいとこで》

特に行きたいところも思い付かない俺は、暫し考えてから文字を打ち込んだ。

《服買いに行きたいかも》

昼間はまだ夏物で充分でも、秋物も活躍し始める時期だけに必要なものは揃えておきたい。ネットで買ってもいいけど、どうせだから無駄にならない行き先を選択してみた。

《じゃあ》
《新しく出来たショッピングモールに行くってことで》
《そこの駅で待ち合わせでい?》

俺は再びOKのスタンプを送ると、一旦メッセージアプリの画面を閉じ、そのショッピングモールとやらの最寄り駅を検索することにした。
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