追放されたトップヒーロー、海外進出する〜俺がいなくなったら劇的に治安が悪化するけど日本の皆さん大丈夫?〜

サトウミ

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ヒーロー試験・実技試験前

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ヒーロー試験・実技試験当日。

試験会場に着いた俺は受付をした後、自分の受験番号が書かれた教室の中に入り、指定された席に座って始まるのを待っていた。

「大丈夫...。俺は、大丈夫....。」
そう自分に言い聞かせながら深呼吸をするも、緊張が和らぐことはない。

筆記試験だって、なんだかんだで合格できたのだから、今回も何とかなるだろう。
とは思っていても、妙に落ち着かない。

それにしても筆記試験が、付け焼き刃の知識で合格できる内容で良かった。
筆記試験は自動車教習所の学科試験のように、簡単かつヒーローにとって大事な問題ばかりが出た。
おかげでアメリカでヒーローをやっていく自信が湧いた。

実技試験だって、俺の異能をフル活用すれば絶対合格できる。
そう確信していても、会場の雰囲気もあってか、緊張でずっとソワソワしていた。

「その言葉....もしかして、日本人?」

すると急に、隣の席にいた男に話しかけられた。
男は20代くらいのアジア人で、いかにも好青年という感じの塩顔イケメンだった。

「えっ、アンタも日本人か?」
「いや、僕は韓国人さ。だけど母さんが日本人だから日本語は得意だよ。」
「へぇ。だから流暢に日本語が喋れるのか。」

彼が話しかけてくれたお陰で、少しだけ緊張が和らいだ。

「なぁ。アンタ、名前は?」
「僕はソ・イチャン。君は?」
「俺は風間善。よろしくな、ソイ大豆ちゃん。」

「ははは。それ、日本人によく言われるよ。ソイとか大豆くんとか。」
皆、考えることは一緒なんだな。

「こちらこそ、よろしくね。ゼン。」
こんな形でヒーロー仲間ができるなんて思いもしなかった。
アメリカこっちに来て初めてできたヒーロー仲間に、俺は運命を感じた。

「俺達、一緒に受かるといいな。」
「そうだね。でもヒーロー試験は合格率が低いから、受かるか心配だよ。」
「大丈夫だって。きっと受かるさ。」

俺は異能を使って、ソイの能力を鑑定してみた。

異能は7つもあるのか。
しかも火や水に、土や風まで操れるなんてチートすぎる。
これだけ強力な異能ばかりであれば、合格どころかトップヒーローも夢じゃない。
ソイの異能はどれもヒーロー映えするから、逆にどの異能を軸にするかで迷いそうだな。
その上、ソイの場合はイケメンだから顔出しヒーローとして売り出すのもアリだ。

....天は二物を与えず、というのは真っ赤な嘘だな。
人気ヒーローに必要なものを全て持っているソイが羨ましくなった。

ソイとの雑談で心が和んでいると、試験官が教室に入ってきた。

「皆さん、お待たせしました。今から実技試験の前の最終チェックを行います。順番に確認しますので、引き続き座ったままお待ちください。」

すると試験官はクリップボードとボールペンを持って、一人一人をチェックしてはクリップボードにメモをしていた。
その際、時々何人かの受験者が、試験官に教室から出て行くよう言われていた。

アレは一体、何なんだ?
なぜ教室から出ていくのか気になっていると、試験官はとうとう俺の前までやってきた。
そして俺の顔を見ると、黙ってクリップボードにメモをした。
その次に、隣のソイの顔を見る。

「そこの貴方は教室から出てください。」

ソイもなのか?!
何を基準に、出ていけと言われているんだ?
教室から出ていく受験者達を見ながら、共通点を考えてみる。

.....あ。
もしかして。
俺は教室に残っている受験者と、ソイの後に出て行くよう言われた受験者を鑑定してみた。

やっぱり、そうか。
教室に残った受験者の異能を確認すると、どれも大した異能を持っていなかった。
異能が3つ以下だったり、5つあっても残念な異能しかなかったりと、残念な人ばかりだ。

それに対して、出ていくよう言われた受験者たちは皆、異能が5つ以上あり、そのどれもが戦力になり得るほどに強力だった。

試験官は俺と同じように『鑑定』の異能がある。
だから鑑定で異能を調べて、一定の基準以上の受験生は出ていくように言っていたワケか。

だとしても、何で俺は異能が9つもあるのに、出ていくよう言われなかったんだ?
と一瞬疑問に思ったが、その理由も一瞬で分かった。

俺が『異能無効化』の異能を持っているからだ。
だから試験官は俺を鑑定しても、異能ナシと判断して居残り組だと判断したんだ。

しばらくすると試験官は全員をチェックし終えて、教室の前に立った。
そして一呼吸すると、教室に残った俺達に非情な通告をした。

「皆さん、お待たせしました。本日の実技試験は終了しました。どうぞお帰りください。」
試験官のその言葉で、教室中がどよめいた。

「ちょっと待ってください!私達、まだ何もしていないですよね?それなのに終了っておかしいじゃないですか!」
受験者の一人が試験官に抗議するも、試験官は表情を一切変えず、俺達に冷たい視線を送った。

「何もする必要はありません。なぜなら先程、皆さんの異能を確認しましたから。その上で、私の異能で実技試験の合格率を計算し、合格率が20%未満の方をここで不合格とさせていただいてます。」

「そんなぁ!」
「不公平だ!」
受験者達は皆、理不尽な試験結果に納得できず、試験官に詰め寄った。

当然、俺も結果に納得していなので、試験官に直接抗議しに行く。
俺の場合、試験官は俺の異能を正確に把握できていないから、合格率が正しく計算されているはずがない。
間違った計算のせいで落とされるんだから、納得できるはずがない。

受験者達が一斉に、波のように試験官へ押し寄せる。
だが、試験官の前に突然出てきた壁に阻まれて、試験官に近づくことすらできない。

アレは試験官の異能で出したバリアだ。
ということは異能化無効の異能を持つ俺なら、そのまま通れるはずだ。
とはいえ念のため、俺は透明化の異能を使った上でバリアをすり抜け、試験官の前へと来た。

「なっ?!何ですか、貴方は!」
の俺が目の前に現れるなんて思いもしなかったのだろう。
さっきまで無表情を貫いていた試験官は、わかりやすいくらいに狼狽えていた。

「お願いします!俺に、もう一度チャンスをください!合格率をもう一度計算してください!」
俺は試験官の前で、床に膝と頭をつけて土下座した。

「だから、そういうのは困りますって...。というか貴方、どうやってバリアをすり抜けたのですか?」
「身体を透明化させて入りました。」
「透明化?そんな馬鹿な...だって貴方は....!」
試験官は俺の言うことが信じられない様子だった。
なんせ異能ナシと鑑定した俺が、透明化の異能を使えるんだか信じられないのも無理はない。

「俺、異能無効化の異能を持ってるんです。だから鑑定しても俺の異能が見えなかったんじゃないでしょうか?」
「異能無効化ですって?そんな嘘で誤魔化せると思っているのですか?」

「本当なんです!だからお願いです。もう一度確認してください!」

俺は試験官を説得するために、異能で分身を複数作って試験官を囲い、全員で土下座した。

「なっ...!まさか....?」
これで俺が異能ナシではないことが嫌でも分かったはずだ。
予想外の出来事に、試験官は目の前の光景に戸惑っている。

試験官はしばらく俺の顔をじっと睨み続けた後、顎に手を当てて考え込むようにしながら、口を開いた。

「先程、測定した際は0%だった貴方の合格率ですが....今、測定したところ計測不能になりました。こんなこと、ヒーロー試験始まって以来の珍事です。」
「そうなんですか?じゃあ、この場合ってどうなるんですか?」

「.....わかりました。今回は例外的に、実技試験を受けてくださって構いません。」
「やった!ありがとうございます!」

困惑している試験官とは反対に、俺はその場でガッツポーズをした。
そして試験官に連れられて、実技試験が行われている会場へと向かった。
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