追放されたトップヒーロー、海外進出する〜俺がいなくなったら劇的に治安が悪化するけど日本の皆さん大丈夫?〜

サトウミ

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ヒーロー試験・実技試験の説明

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実技試験が行われている会場へ着くと、そこでは既に試験が始まっているようだった。

会場は国際展示場のように広くて天井が高く、幾つかの大きめのブースでそれぞれ試験を行なっているようだった。

会場の手前の方には、何人かの受験者が集まって説明を受けていた。
その中にはソイの姿もあった。

俺と一緒にいた試験官は、説明をしている女性の試験官のもとへ行った。
突然現れた俺と試験官に、説明を受けていた他の受験者達はジロジロとこちらを見た。

「どうしましたか?」
女性の試験官は、俺達に気づいて話しかける。

「すみません、彼も実技試験の受験基準をクリアしたと判断しました。試験を受けさせることは可能ですか?」
「えっ?!」

その話を聞いた女性試験官は動揺し、警戒するような眼差しで俺を見た。

「受験基準をクリアって、どういうことですか?貴方のチェックで誤ることなどあり得ないでしょう?」
「それが、彼の話を聞く限りでは、彼が『異能無効化』の異能を持っているため正確に判定できなかったのではと。」

「そんな都合のいい嘘に騙されたのですか?『異能を無効化しているから鑑定できないだけで本当は強力な異能を持っている』というのは、異能を持たない受験者の常套句ではありませんか。」

「わかっていますよ、そんなこと。ですが彼は私のバリアを通り抜けました。それに私の前で分身を作ってみせました。ただの手品でこれだけの芸当が出来るとは思えません。」

「...そう、ですか。」

女性試験官は、怪訝な顔で俺を睨みつけながら、渋々承諾した。
その一連の会話を聞いていた他の受験者は、ざわざわと騒ぎだし、物珍しそうに俺を見た。

「今回は特別に、貴方に受験資格を与えます。貴方が一流のペテン師か、それともヒーローになり得る逸材なのかは、試験を受ければ分かることですから。」
侮蔑するようにそう言われながらも、俺は受験者達の輪の中に入って、ソイの隣へと移動した。

「ゼン、一体何があったの?」
戸惑いながら尋ねるソイに、俺はさっきまでいた教室での出来事をサラッと説明した。

「...そんなことがあったんだ。というかゼン、本当に無効化の異能なんか持っているの?」
「ああ。何なら、それ以外にも異能が8つある。」
「他に8つも!?...信じられない。」

ソイが信じられないのも無理はない。
異能が5つ以上ある人の割合は、確か5%くらいだと聞いたことがある。
9つとなるとその割合は更に低く、一説には三つ子が生まれる確率より低いらしい。
それに加えて『異能無効化』という、試験官の目を欺く異能を都合よく持っているなんて、客観的に考えたら出来すぎた話だ。

「そこ、静かに!今から説明を始めますよ!」

女性試験官は俺に合わせて、また一から説明を始めてくれた。


「実技試験は実際に3人の現役ヒーローと戦っていただきます。
3人のヒーローとそれぞれ一対一で戦っていただき、その結果をもとにヒーロー達が皆さんを採点します。
各50点、合計150点満点で、合格ラインは80点です。」


幾つかあるブースの中で行われていたのは、ヒーローとの模擬試合だったのか。


「次に、試合のルールについて説明します。
現役ヒーローと受験者の皆さんには試合開始前に、カラーボールを5つお渡しします。
カラーボールは勢いよくぶつけると、弾けて中の染料が付着します。コレを互いにぶつけ合い、どれくらい染料が身体についたかで評価します。

ヒーローに染料をつけたり、ヒーローの攻撃を回避できると加点されます。
特に、ヒーローの頭または胴体に染料をつけた場合や、ヒーローのカラーボール5つを全て避けることができた場合は、高得点になります。

逆に、染料をつけられると減点となります。
頭または胴体に染料をつけられると、そのヒーローとの試合では失格となりますので注意して下さい。
ただし、カラーボールがヒーローに当たらなかったとしても減点にはならないのでご安心ください。

試合の制限時間は5分。
両者のカラーボールが無くなった場合や、どちらかの頭か胴体に染料がついた時点で、残り時間に関係なく試合終了となります。

ここまでの説明で、何か質問のある人はいますか?」


他の受験者達は質問は無さそうなので、俺は遠慮なく手を挙げて質問した。

「試合開始前に異能を使うのは反則ですか?例えば先程の試験官のように、鑑定の異能でヒーローの異能をチェックするのも反則ですか?」

「情報収集で使う分には反則ではありません。ですが異能で直接的な攻撃・防御の準備をするのは反則です。

例えば貴方が言ったように、鑑定の異能で事前に相手の異能を知ることは反則ではありません。
ですが試合前にバリアの異能を自身の周りに張ったり、異能でカラーボールを細工して当てやすくしたりするのは反則です。

ただし、コントロールの難しい異能を持っていた場合、戦闘態勢でなければ使っていないものとして判断します。
例えば『髪が無数の蛇になっている異能』を持っている人の場合、蛇達がヒーローを襲ったり、自身を守るような動きをしたりしていなければ、髪が蛇であっても異能を使っていないものと判断します。

あっ、そう言えば貴方は『異能無効化』の異能を持っているのでしたよね?その異能の場合、コントロールできないものでしたら試合前から発動していても問題ありません。

ちなみに反則となった場合、始めからやり直しとなります。
悪質な場合は即失格となりますのでご注意ください。」


なるほどな。
俺の場合、鑑定を使う場合や自動で発動する異能無効化はOKだけど、戦闘開始前から透明化してヒーローからの攻撃を避けられるようにするのは反則になる、ってことだな。

「それでは、今から順次試験を開始します。皆さんが戦うヒーローは、デーモンマンとモンキーガイ、それからモーメン・トイです。
どのヒーローから戦うかは皆さんの自由です。ヒーローが他の受験者と試合をしている場合は、順番に列になってお待ちください。

最後に、私からのアドバイスです。戦闘に自信のない方は、他の受験者の試合を見て対策を打ってから戦うことをオススメします。一番に試合を挑んできたからといって加点をされることはありませんので、むしろ後の方に試合を挑む方が得策とも言えます。

では、ご武運を。」

いよいよ試験開始だ。
だけど女性試験官の説明もあってか、全員が譲り合ってなかなか試合が始まらなかった。

仕方ない。
ここは俺が先駆者になろうじゃないか。
俺はとりあえず、近くにいたヒーローに試合を申し込んだ。

「トップバッターは貴様か。よろしくな。」
「よろしくお願いします!」
最初の相手はデーモンマンだ。

俺は試験官からカラーボールを受け取ると、試合開始の合図とともに戦闘態勢に入った。
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