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失態1

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ふと意識が浮上する。目が覚めたものの、まだ完全には覚醒しきらず、瞼を閉じたまま寝返りを打つ。すると身体の片側にだけ、何やら温かなものが触れた。心地いい温もりに誘われてもぞもぞと身体を寄せると、何やら硬い感触がする。
不思議に思い、手探りで形を検める。肌触りはなめらかで温かく、少し弾力もあって、ところどころごつごつとしている。
「なに……?」
寝起きのまだぼんやりとする頭ではその正体を突き止めることはできず、ベアトリーチェはゆるゆると瞼を上げた。
辺りはまだ暗くて、眼が慣れるまで少し時間がかかったが、薄闇の中、白っぽい物体が上掛けからはみ出しているのが見える。手を触れると、指の間をさらりと流れ落ちた。
――金糸……?
よく目を凝らすと、その向こうに耳らしき輪郭が見え、ベアトリーチェははっと息を呑む。
昨晩、夜這いをかけた相手であるレオンハルトは金髪だった。そして今のこの状況からすると、一夜を共にして、そのまま寝入ってしまったようだ。
横になっている場合ではない。寝台の上を後じさりして、ひとまず彼から距離を取る。すぐにでも部屋を出たかったが、衣服を何も纏っていない。
焦りながら着てきたはずのナイトドレスを探す。すると、うつ伏せの状態で寝入っているレオンハルトの背中の向こうに、それらしき布地が見えた。
彼の背中越しに手を伸ばし、生地の端をつまむが、何かが引っかかっているのかある一定以上は持ち上がらなかった。レオンハルトの身体の下敷きにされているのかもしれない。そうなるとお手上げだ。
――いいえ、もうちょっと引っ張れば、もしかしたら……
淡い期待を込めてナイトドレスの端を握りしめると、ぴり、と高い音が鳴り、薄絹の繊細な生地が裂けてしまったことを悟る。
「ええっ」
思わず声をあげると、それまで眠っていたはずのレオンハルトが寝返りを打った。その拍子に共有していた上掛けが引っ張られ、ベアトリーチェは慌てて肌が露出しないように上掛けを押さえた。
「う……」
こちらに顔を向けたレオンハルトが薄い瞼を震わせ、うっすらと目を開く。
「貴女は……」
寝起きのハスキーな声が機嫌そうにも思え、ベアトリーチェは所在なく肩を縮める。
こういう時は、朝を迎える前に部屋を出るのが鉄則だと聞いていた。
本当なら行為を終えたら速やかに自室へ戻るつもりだったのに、不覚にも疲れに任せてつい眠り込んでしまった。
「ごめんなさい」
視線に耐えきれず、謝罪の言葉が口をつく。
「別に責めているわけではない」
「でも、すぐに出ます。その……服を取ったら」
「服? ああ、これか」
レオンハルトがナイトドレスを手に取り、ベアトリーチェに差し出した。上掛けの下でナイトドレスを手早く身体に巻き付けると、ベアトリーチェはすぐさまベッドから抜け出そうとした。
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