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失態2

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身体を起こして、ベッドサイドから足先を床に向かって伸ばす。冷たい床板に足の裏を着地させ、そのまま立ち上がる――つもりが足にまったく力が入らず、床に膝から崩れ落ちてしまった。
硬い床に打ちつけた膝の痛みもさることながら、ベアトリーチェを戦慄させたのは身体の奥からどろりとした液体が流れ落ちる感覚だった。体内に留まっていた昨晩の情交の残滓が重力に従いこぼれてきたようだ。
慌てて膝を寄せると、内腿が引き攣れるように痛んだ。横になっていた時には気づかなかったけれど、全身が重だるくて、わずかに身体を動かすだけでも一苦労だった。
「どうした?」
ベッド上のレオンハルトが身を乗り出してくる。
「な、なんでもありません」
とっさにそう答えたが、床に座り込んだままでは説得力がない。
「なんでもないわけがないだろう」
顔を伏せ口をつぐむベアトリーチェに焦れたのか、レオンハルトは嘆息する。
「……わかった。言いたくないのなら構わないが、とにかくベッドに戻るんだ」
彼は床に下り立つと、ベアトリーチェの膝の後ろと背中を支え、そのまま苦もなく抱きか抱えた。
柔らかなシーツに下ろされて、ベアトリーチェは首を垂れる。
「……申し訳ありません」
「いや。元はといえば、無理をさせた俺が悪い」
レオンハルトが重ねた枕を背中の後ろに置いてくれたので、そっと体重を預ける。全身が筋肉痛になっているようで、身体をまっすぐ起こしているだけでもつらかった。
「動けるようになるまで、――」
声が途切れたことが気になって目を上げると、レオンハルトはシーツの一点を見つめている。その視線の先には、薄紅色の染みが広がっていた。
瞬間、顔から血の気が引いた。
「……どういうことだ?」
ベアトリーチェに向かって言っているというよりは、自分自身に問いかけているような声音だった。
薄氷色の瞳が戸惑いに揺らめいている。長い指先が染みの周囲をたどり、一周した。
「初めてだったのか」
静かに問いかけられて、ベアトリーチェは唇を震わせた。そうだと言えばいいのか、それとも違うと答えるべきなのか、わからない。
ただ目を見開いてレオンハルトを見つめていると、彼は顔を歪めた。大きな手で口元を覆い、その向こうで何事かを呟く。
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