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36. 治癒魔法
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「レイニ、レティシア。侍女のお仕事は続けるのかしら? 辞めたとしても生活には困らないようにするわ」
レティシアが落ち着いた頃を見計らって、そんな問いかけをする私。
侍女の仕事をしていたら、聖女様に会える時間が減ってしまうことは確実だから。
ここで辞めると言われても、それがレイニとレティシアの幸せになるのなら引き止めるつもりはない。
だから、辞めると言われることも覚悟していたのだけど……。
「ええ、続けますわ。私の家はアストライア家ですもの」
「私も続けたいです。お母様が帝国に来れればすぐに会えますもの」
レイニに続けて、そう口にするレティシア。
聖女様の娘なら生活には困らないと思うのだけど、私達の家を気に入ってくれている様子。
けれども、聖女様を連れて危険な山越えをするなんて真似はしたくないのよね……。
ちなみに、アストライア家の使用人は、辞める日の一週間前までに、十五歳以上のアストライア家の者に申し出るように決まっている。
だから、辞意を告げる相手が私でも問題無い。
そんなことを考えていると、聖女様がこんなことを口にした。
「ルシアナさん、私が帝国に行けば解決しますよね?」
「ええ、確かにそうなのですけど……。山越えをするには護衛が足りませんの。
それに、今日は魔物の数が多かったので、何かの異変の前兆かもしれませんわ」
普段なら聖女様お一人でも容易に山を越えられると思う。
治癒魔法以外の攻撃魔法や防御魔法も手足のように振るえるお方なのだから。
例え魔法の力が無くても、馬車に付けてある防衛のための魔道具でも十分だ。
けれども、今日の魔物は数が多くて、どれも強かった。
「異変が起こっていますのね。そういうことなら、異変の原因を無くす必要があります。
民が襲われる前に」
「お母様がいなかったら、怪我をした騎士さん達はどうするのですか?」
「それはルシアナさんの力を借りれば解決出来る問題よ。
ルシアナさん。治癒魔法の魔道具は作れますか?」
聖女様は治癒魔法の魔道具を作って、近くにいなくても怪我人を助けられるようにする考のようで、そんな問いかけをされた。
私が魔道具を作り始めたきっかけは、幼い頃になんとなくで作った「部屋を冷やしたり温めたりする魔道具」を家族みんなから喜ばれたことだけれど、今ではもっとたくさんの人に喜んでもらえるようにしたいと思っている。
だから、治癒魔法の魔道具も作りたいとは思っていた。
けれども、今まで作ってきた便利な魔道具のようにたくさん作ることは出来ないから、敢えて作らなかったのよね……。
魔道具の奪い合いになってしまうと考えたから。
ちなみに、今まで売りに出してきたものは、どれも初級魔法だけを使っていて、魔法が扱える人なら誰でも作れるようになっている。
仕組みは簡単だから、必要としている人にきちんと届けられる。
でも、中級以上の魔法を入れてしまうと、作れる量は百分の一ほどになってしまうから、多くの人に届けることは出来なくなってしまう。
だから、安く大量に作れる魔導具ばかり作ってきた。
大量に用意できないものは、争いを起こさないために売りに出さないで商会の中に留めている。
そのことを言い訳にして、今まで治癒魔法の魔道具開発をしてこなかったのだけど……。
今回は逃げられないわ。
それに、今まで自由を奪われていた聖女様には笑っていて欲しいから、逃げたくもない。
「ええ、作れますわ。でも、まだ魔法陣が分からないので、明日までに考えます」
魔法は適性があれば感覚で使えるけれど、魔法陣は適性があるだけでは作れない。その魔法に対する魔法学の知識も必要になっている。
だから、私は参考になる魔法書を探そうと思ったのだけど……。
「基本になる魔法陣は私が描けます。ルシアナさんには、改良と複製をお願いしたいのです」
聖女様にそう言われたから、すぐに魔道具製作に取り掛かることに決める私。
「分かりましたわ。魔法書を探してくるので、魔法陣をお願いしますわ」
「魔法書なら王宮から持ってきていますよ。この箱の中に……。
これよ。自由に使って良いですわ」
聖女様から治癒魔法の魔法書を受け取って、中身を読み込もうとする私。
でも、その前に。部屋の外で待っているレオン様の知恵も借りたいから、彼にも部屋に入ってもらった。
「なるほど、治癒魔法の魔道具か。
これは完成したら奪い合いが起こりそうだな」
「ええ。ですから、騎士団にしか渡さないつもりですわ」
このことは利益にならない。
でも、みんなの幸せのためだから、騎士団の師団の数──十五個は今日中に完成させると決めた。
レティシアが落ち着いた頃を見計らって、そんな問いかけをする私。
侍女の仕事をしていたら、聖女様に会える時間が減ってしまうことは確実だから。
ここで辞めると言われても、それがレイニとレティシアの幸せになるのなら引き止めるつもりはない。
だから、辞めると言われることも覚悟していたのだけど……。
「ええ、続けますわ。私の家はアストライア家ですもの」
「私も続けたいです。お母様が帝国に来れればすぐに会えますもの」
レイニに続けて、そう口にするレティシア。
聖女様の娘なら生活には困らないと思うのだけど、私達の家を気に入ってくれている様子。
けれども、聖女様を連れて危険な山越えをするなんて真似はしたくないのよね……。
ちなみに、アストライア家の使用人は、辞める日の一週間前までに、十五歳以上のアストライア家の者に申し出るように決まっている。
だから、辞意を告げる相手が私でも問題無い。
そんなことを考えていると、聖女様がこんなことを口にした。
「ルシアナさん、私が帝国に行けば解決しますよね?」
「ええ、確かにそうなのですけど……。山越えをするには護衛が足りませんの。
それに、今日は魔物の数が多かったので、何かの異変の前兆かもしれませんわ」
普段なら聖女様お一人でも容易に山を越えられると思う。
治癒魔法以外の攻撃魔法や防御魔法も手足のように振るえるお方なのだから。
例え魔法の力が無くても、馬車に付けてある防衛のための魔道具でも十分だ。
けれども、今日の魔物は数が多くて、どれも強かった。
「異変が起こっていますのね。そういうことなら、異変の原因を無くす必要があります。
民が襲われる前に」
「お母様がいなかったら、怪我をした騎士さん達はどうするのですか?」
「それはルシアナさんの力を借りれば解決出来る問題よ。
ルシアナさん。治癒魔法の魔道具は作れますか?」
聖女様は治癒魔法の魔道具を作って、近くにいなくても怪我人を助けられるようにする考のようで、そんな問いかけをされた。
私が魔道具を作り始めたきっかけは、幼い頃になんとなくで作った「部屋を冷やしたり温めたりする魔道具」を家族みんなから喜ばれたことだけれど、今ではもっとたくさんの人に喜んでもらえるようにしたいと思っている。
だから、治癒魔法の魔道具も作りたいとは思っていた。
けれども、今まで作ってきた便利な魔道具のようにたくさん作ることは出来ないから、敢えて作らなかったのよね……。
魔道具の奪い合いになってしまうと考えたから。
ちなみに、今まで売りに出してきたものは、どれも初級魔法だけを使っていて、魔法が扱える人なら誰でも作れるようになっている。
仕組みは簡単だから、必要としている人にきちんと届けられる。
でも、中級以上の魔法を入れてしまうと、作れる量は百分の一ほどになってしまうから、多くの人に届けることは出来なくなってしまう。
だから、安く大量に作れる魔導具ばかり作ってきた。
大量に用意できないものは、争いを起こさないために売りに出さないで商会の中に留めている。
そのことを言い訳にして、今まで治癒魔法の魔道具開発をしてこなかったのだけど……。
今回は逃げられないわ。
それに、今まで自由を奪われていた聖女様には笑っていて欲しいから、逃げたくもない。
「ええ、作れますわ。でも、まだ魔法陣が分からないので、明日までに考えます」
魔法は適性があれば感覚で使えるけれど、魔法陣は適性があるだけでは作れない。その魔法に対する魔法学の知識も必要になっている。
だから、私は参考になる魔法書を探そうと思ったのだけど……。
「基本になる魔法陣は私が描けます。ルシアナさんには、改良と複製をお願いしたいのです」
聖女様にそう言われたから、すぐに魔道具製作に取り掛かることに決める私。
「分かりましたわ。魔法書を探してくるので、魔法陣をお願いしますわ」
「魔法書なら王宮から持ってきていますよ。この箱の中に……。
これよ。自由に使って良いですわ」
聖女様から治癒魔法の魔法書を受け取って、中身を読み込もうとする私。
でも、その前に。部屋の外で待っているレオン様の知恵も借りたいから、彼にも部屋に入ってもらった。
「なるほど、治癒魔法の魔道具か。
これは完成したら奪い合いが起こりそうだな」
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でも、みんなの幸せのためだから、騎士団の師団の数──十五個は今日中に完成させると決めた。
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