勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第6章エルフの森

2.獣人族の引っ越し(村を作ろう)

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いざ、引っ越しとなった所で問題が起きた、引っ越し先ってどこ?

「この場合、ベアトリスに行けばいいのか?」

「どうでしょう?王国にはそこまで余裕はありませんし……」

「やっぱり引っ越しは中止にした方がいいんじゃない?」

「そうだなぁ」

さて、どうしたものか、正直一度戻って場所を決め、改めて引っ越しでも別にいいのだが。

「その問題、アタシが解決しよう!」

「誰だ!」

声のする方を向くと。

「なんだダイア皇帝か、まだベアトリスに居たんだな、もう用はないから帰っていいぞ?」

「扱いが酷すぎないか!?」

「今忙しいんだ、借金皇帝に構ってる暇ないんだ」

「借金はチャラのはずだろ!?」

「そうだっけ?」

そう言えばそんな事言ったかな?言ったな。

「くぅ、まぁいい、お前が文句も付けられ無いようにするために来たんだからな」

「どうゆう事だ?」

「帝国が獣人族を受け入れる」

「いいのか?」

「ああ、幸い帝国は広く、使われていない土地が多い、整備もされていないからしばらくは大変だと思うがな」

「ありがとうございます、皇帝陛下獣人を代表してお礼申し上げます」

「よい、我が土地で励め」

やばい、ダイアがちゃんとした皇帝に見えてきた。

「明、今アタシに失礼なことを考えなかったか?」

「気のせいだろ?何はともあれこれで借金はチャラだな、残念だ」

「お前とゆうやつは、まぁいい準備が出来たなら先導するから着いてこい」

ダイア皇帝が呆れながらも、一緒に来た馬車と先を行く、馬車にはガレオン行きの組が乗っているらしい。

「なんか、ドナドナの気分だな」

あくまで優秀だから他の国へ行ってもらうはずなのに。

「バカ言ってないで、明くんも馬車に乗りなさい!」

「へーい」

こうして獣人達の乗った馬車は一路ガレオン帝国へ。


「着いたはいいが、本当にあれ放題だな」

馬車に揺られること二日半、帝国に入って直ぐの草原、元々は村だったらしく蔦の絡み付いた廃屋が目立つ。

「魔物が住み着かないように定期的に見回りはしているんだがな」

「それでもか」

「しかし、ワシらは住む土地だけでありがたいことこの上ありません」

「なんだ、村長生きていたのか」

「ええ、結局押しきられてしまいました」

そうか、やっぱりミーアは着いてくるのか。

「それで、村を作るってどうすればいいんだ?」

「おぉ、手伝って下さるのですか?」

「乗りかかった船だしな」

「……明?本当に大丈夫なのか?帝都の様にはならないか?」

「大丈夫だ、今回は真面目にやる」

「前は真面目じゃあ無かったのか?」

「それよりダイア皇帝はこれからどうするんだ?」

「話を逸らしたな、アタシは帝都に戻る、後で建築職人を寄越そう」

「それは助かる」

「あと勇者達は置いていく、体力作りにはもってこいだからな」

「スパルタだな」

「軟弱過ぎるんだ」

そう言ってダイア皇帝は帰って行った。

「とりあえず草むしりと、使えない廃屋の取り壊しだな」

「そうですね、ワシは多少知識のある者を集めてみます」

「頼んだ」


何とか除草が終わり、次は廃屋を壊そうとした時、意外な人物から待ったがかかる。

「ちょっといい?工藤君」

「委員長?どうかした?」

「解体は待ってほしいの、村を作るための基準にしたいから」

「基準?」

「ここの近くには少し行った所に森があるの、そこには魔物もいるらしいわ」

「強いのか?」

「いいえ、かなり弱いらしいわ、だから簡単な守りの柵を作るだけで警戒して近づかなくらしいの」

「その柵を作るための基準にしたいと?」

「そうゆうこと!」

「ふむ、村長達と相談してみよう」

直ぐに村長と建築の知識のある獣人、澪達にも集まってもらい、委員長から聞いた事を話す。

「なるほど、しかし柵を作るだけで本当に大丈夫でしょうか?」

「村長さん、心配なら堀を作るのはどうかしら?」

「ほりですか?」

「そう、森に行って狩りをする事もあるだろうから、最低限通れる部分を残して残りを溝にしてしまうの、そこまで凝った物にしないなら空堀がいいわね、例えば……」

そこから委員長による堀の講義が始まる、水堀と空堀の違いから、横堀、竪堀、連続竪堀等次から次に出てくる堀の知識、俺は途中で意識を手放し、考えている顔をしながら頭の中は寝ていた。

「工藤君、聞いてる?」

「あぁ、アップルパイが何だって?」

「……そんな話してないわよ?というかなんの話?」

「いや、最近食べてないなと思ってアップルパイ」

「いいわねアップルパイ!今度作ろうよ!」

「鈴ちゃん?鈴ちゃんも聞いてなかったね?」

委員長が鈴をジト目で睨む、鈴はバツが悪そうに苦笑い。

「というかさすがだな委員長、堀や塀にも詳しいなんて」

「……私、休日にお城とか観に行くの趣味なのよ」

「へー、誰と?」

「………」

「……一人で?」

「わ、悪い!?同じ趣味の人近くに他に居なかったのよ!」

「………」

「何か言ってよ!?えぇ、えぇ、そうよ!私はボッチよ!?」

「……ドンマイ」

「慰め方が雑!」

委員長の悲痛な叫びはともかく、引っ越しは続く。



 
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