勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第5章三国会議

9.旧魔王城突入

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獣人の村の食料事情もひとまず落ち着いたので、俺達は旧魔王城へ向かう。

「で、明やっぱり正面から?」

「それしかないだろうな、他の侵入口は潰れているんだから」

「いつもの謎知識でどうにかならないわけ?」

鈴が歩きながら聞いてくる、謎知識ってナビさんの事だろうけど。

〈ハイ、正面以外は潰されています、恐らく侵入口を一つにする事で、防衛をしやすくしたのでしょう〉

「無理だって」

「……あぁそう」

「聞けっていったのお前だろ」

「あ、やっぱり誰かに聞いてるんだ」

「そうだけど?そんなに気になるものか?」

「気になるわよ!どんな人なのかなぁとか」

いや、人じゃないんだが。

「明くん私も気になるなぁ、どんな女の人なのかなぁって」

いや、だから人じゃないんだって、てゆーか久しぶりに澪のどろどろした目を見たな。

うーん実際問題説明しずらいんだよな、スキルが何で喋っているのかとか、何なのか俺でもよくわからない部分が多い訳で、いっそのこと人ならこちらナビさんで終わらせられるのに。

と、悩んでいる間に魔王城に着いた。

「ここだな」

「何か如何にもなお城ね」

「うん、よくRPGで見るね」

「うむ、実際に見ると壮観だな」

「少し崩れてるのが尚更ね」

だいたいみんなの感想がこんなところだな。

「澪はあまりこういった類いのゲームはやらないと思ったけど」

「うんあんまり、でもこれくらいは知ってるよ、こうゆうのって最上階に魔王が待ち構えてるんだよね?」

「そうそう、で、たどり着くまでに罠とか一杯あるのよね、矢が飛んできたりとか」

「あぁえげつないのだと、毒ガスとか槍が敷き詰められた落とし穴とか、転移系のトラップとかな」

鈴とトラップ談義に華を咲かせる。

「明、盛り上がっているところ悪いけど、そろそろ中に入らないかい?」

「ん?あぁ悪い司、じゃあ行くぞ」

扉を手で押す、人の出入りがあるからか古ぼけた見かけのわりに、扉は簡単に開く。

ん?おっと、入る前に聖剣アイギスを出しとくか、何か聖剣使うの久しぶりだな聖・魔剣使いなのに。

「明くん、それって斧に変わる盾の聖剣だよね?何で準備してるの?」

「中に入ったら直ぐに分かるよ」

「嫌な予感しかしないんだけど」

「良い感してるぞ、鈴」

鈴に親指を立てナイス!と言うと鈴は嫌な顔をする。

「そんじゃ、改めて入りますかね」

全員の顔が引き締まる、中に踏み入ると直ぐに事態は動いた、聖剣・アイギスに走る衝撃と何かがぶつかる音。

「いきなりかこんちくしょう」

聖剣・アイギスで弾き返すと一人の獣人がひらりと宙返りをして着地した、灰白色の髪に耳と尻尾の先端が黒毛、肌は色白それに反して瞳はルビーカラー、間違いない事前に聞いていた特徴とも一致する、魔王だ。

「魔王城一階に魔王が居ますって、どんなラノベだよ?」

「ラノベってよりも、なろう系の小説じゃない?」

「明くん、鈴、おしゃべりしない!」

澪に怒られる、まぁ状況的にふざけてる場合じゃないな、相手からビンビンに殺気が飛んできてるし、これ話聞いてくれるかな?

「あんた、魔王・ミーアだろ?俺達は獣人の村から……」

「ッ!」

獣人の村と言った瞬間目付きが変わった、あーやばいな地雷踏んだ感じ?

その後明らかな猛攻が始まる、幸いと言っていいのか狙いは俺に絞られたようだ。

「くっ、ちょっとは話を聞けよ!」

「………」

だんまりである、寡黙キャラか?それとも敵に話すことはないってか?
何とか凌いでわいるが……

「やっぱり動きが早い相手には、アイギスは相性が悪すぎるか」

盾で衝撃を受け止めても、斧が当たらないそれ以前に斧に変える隙がない。

〈状況的に考察した結果、最良の魔剣が有ります〉

よし、信じるよナビさん。

アイギスの結界術で箱型に結界を作り足止めをする、その好きにアイギスをしまい新たな魔剣を呼び出す。

「来い!魔剣・ドウプニル!」

取り出したのはガントレット型の魔剣・ドウプニル、最早武器ですらなくなった魔剣に対してツッコミは入れない。
ドウプニル、紫のガントレットに甲部分にひし形の水晶が嵌められている。


「策も戦術もない、ただの殴り合いだ」

ミーアは結界の箱を抜け出し飛び掛かってくる、それを受け止め、カウンターを放つ。

「後ろ、あ、違う右!」

「そこだ、あっ、避けられた」

「やはり速いな、明は防ぐので精一杯だ」

「うん、何とか足を止められれば……」

外野がうるさい、確かに速いがどうにか出来ないわけでもない。

「ッッ!」

「……気づいたみたいだな」

ミーアが苦い顔をする、どうやらだいぶ効果が出てきたな。

「ん?あれ?」

「どうしたの鈴?」

「うん、何かだんだん目で追えるようになってきた」

「あ、本当だ」

「目がなれてきた?」

「いや、魔王の動きが遅くなっている」

鈴達も気づいたようだな、まぁここまでスピードが落ちれば当然か。

「そろそろ頃合いか」

するとミーアはとうとう膝をついて止まる。

「おぉ、これはあれだね噂に聞く、相手の重さを変える恐ろしい技」

「鈴、残念だが違う」

「どうゆうこと?明」

「正確にはあれは重さを変えたんじゃない、速さを奪ったんだ」

魔剣・ドウプニルの特性は触れた者の速さを奪う、奪うなので自分の速さは逆に上がる、が、今回は話がしたかったので奪う事に専念させてもらった。

「これでやっと話ができるな」

「ッッ!」

うーん、変わらず睨み付けて来るだけか、ひょっとしたら話せないとか?いや、事前に聞いた話ではそんな事言ってなかったし。

「まぁとりあえず聞いてくれ」

俺は獣人の村で話した事をそのまま魔王・ミーアに伝える。


「という訳で獣人の村は移転をしなきゃならない」

「あ、あ、あ」

「あ?」

「あ、貴方達が本当の事を言っているか、わからない」

「村長のじいさんから手紙を預かって来た」

手紙を差し出すとまず匂いを嗅いできた、残り香的なもので分かるのかね?

嗅ぎ終わると手紙を取り、後ろを向いてこそこそ読み始める、今まで戦ってた相手に背中向けていいのか?いや、後ろから襲う気は無いけどさ。

手紙を読み終わると、ゆっくり振り向き土下座をしてきた。
何で土下座?

「も、申し訳ありません、一族の恩人とは知らず!」

「いや、もういいから」

あれ?何だろう?今すごく大事な選択肢に立たされてる気がする?

「と、とにかく立って……」

「長い、本当に長い呪縛から解放されたました」

「呪縛?」

「はい、これです」

そう言って顎を上げて見せてくる、チョーカー?というよりは首輪か?色白のミーアには不釣り合いな、逆に目立つ黒い首輪。

「これは?」

「服従の首輪です、魔王として働かないとこの首輪はわたしの理性を奪いバーサーカーにする物です」

「へぇー」

「そして真っ先に村を襲うように命令も施されています」

なるほど、自分自身の命と村を人質に取られていると。

「しかし、その命令を出すモルトはもう居ない、これで心置き無く死ねます」

「待て待て!何故そうなる?」

突然の自害宣言ビックリするわ。

「この首輪は外れません、いつ他の魔王が同じことをするかわからない、ならばわたしはここで死ぬべきです」

「外れないかは試してみないと分からないだろ?」

「いいえ、これは外れないのです!」

「まぁまぁ、そう言わず試させろ、ほら、顎を上げてくれ」

しぶしぶと顎を上げるミーア、さすがにこれで見捨てるのは目覚めが悪い。

外れるか試して見るつもりだったが……

「あ、外れた」

「………」

普通に外れたけど?

〈普通は外れません、付けられたが最後生涯服従の呪いを受けます〉

いや、外れたよ?

〈マスターには、聖剣の加護により最高位の解呪が使えます〉

使ってないよ?

〈ワタシが実行しました〉

わーさすがナビさん気が利くー、でも次回からは一言欲しいな~って思うよ?

〈善処します〉

断言はしないのね。

「……は、外れた?何で?」

「どうやら俺は外せるくらいの解呪が使えるらしい」

「何で、本人がらしいって言ってんのよ?」

「いや、俺も外せるとは……」

「…あ」

「あ?」

本日二回目の言語不確かに陥るミーア。

「明様!」

「うぉう!?」

涙を流しながら手を組み見上げてくるミーア、泣き方が汚い、そして何より見上げてくる目、どこかで見たことがあるような?

「明様、貴方は神に名を連ねる者なのですか!?」

「いいえ、違いますけど?」

「ご謙遜を!このような事を出来るのは神しか、いえ、それ以上の方しか!」

あー、この目はあれだ。

「ね、ねぇ、明この人の目あたし知ってる」

「奇遇だな俺も知ってるよ」

鈴も気づいたようだ、この目は……。

「どうか貴方に、明様に忠誠を!」

この目はクロエ達と同じ目だ。

「わ、わかった、とりあえず保留で頼む、今はこの城を調べなきゃならん」

「分かりました!ご案内します!」

まだ入り口なのにどっと疲れた、一先ずはこれで本当に獣人の村については解決だ、次は上にいる魔王か。
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