上 下
55 / 84
第5章三国会議

6.ピクニックin魔王城前

しおりを挟む
それぞれの国へ行くリーダーも決まり、だいたいの割り振りも終わらせ、次は魔王城へーと思ったが、やはりそううまくは行かなかった、自分達の処遇に文句を言い始める者が居たのだ。

「何で俺達が廃村に行かなきゃいけないんだ!」

「そうよ!横暴だわ!」

文句を言ってきたのは、廃村行き(島流し)の連中。

「何でって、お前らろくでなしだし」

「何だと!?」

島流し組改めろくでなし組が怒る。

そもそも何故こいつらがろくでなしかと言うと、こいつらは何もしていない、もっと正確に言うなら城の備蓄を食い潰してぐうたらしているだけの役立たずだ、委員長やキャプテン、それぞれの国へ割り振った者達は少なからず今自分に出きることを模索し、兵士と共に魔物退治に行ったり、訓練したり、街の治安維持のため見回りをしたり、街の復興を手伝っていた、が、こいつらはそれがさも当然と言うように部屋でぐうたらしていた。

「お前らは何もして来なかった、そのツケを払う時が来たんだよ」

「ふん、魔王を二人倒したくらいで偉そうに!」

あー、こいつらには情報も入れられて無かったか、まぁ、当然だよな現代の引きこもりが情報通なのはネット環境あってこそだし、兵士やメイド果ては卸の商人にまで嫌われてるし、委員長達も話を聞いたとき相当毛嫌いしてたし。

「はぁ、俺達は他の国に出向いて魔王を倒してきたんだ、合わせて四人倒したよ」

「なっ、そんな話聞いてないぞ!」

「まず、聞く努力をしろよ」

他人と良い関係を築こうとしないで、聞いてないって言われてもな。

「ッ!お、俺達のリーダーは日野だ!お前じゃない!」

「そ、そうよ!あんたに従う必要はないわ!!」

これだ、こいつらの一番の悪い所は、面倒な事、嫌な事は誰かに前に立たせてやり過ごし、何もしないくせに自分達の権利は当然にあると思っている。

日野は自分中心だが、中心に居るための努力は怠らなかった、率先して訓練や座学の授業に出たり、魔物と戦う時は危険な前線に出ていた、対してこいつらは付いて回るだけ、日野はもう少し人の意見を聞くようになれば良い仲間になれるだろう、だがこいつらは無理だ。

「お前ら本当ダメだな」

「何だと!?」

ろくでなし男子が殴り掛かってくる、こいつには聖剣や魔剣どころか普通の剣ですらもったいない、素手で対処しようとしていたら、横から腕が伸びてきた、男子の腕を横に居た澪が掴んでいた、澪はそのまま綺麗な一本背負いをする、とても綺麗な一本背負いなのだが一言添えるなら、スカートで一本背負いは辞めた方がいい、盛大に中を披露していた、縞パンか。

「がっ!」

地面に叩き付けられた男子は、苦しそうに息を吐く。

「この、女子に守られて………」

澪の表情を見て男子の言葉は続かなかった、さて、澪はどんな顔をしているかね。

「なぁ、いい加減現実を見てくれないか?前線に居た俺達は見れなかったかもしれないが、近くに居た委員長やキャプテンは見ていただろう?」

「それは………」

「見ていなかったなんて言わないでくれよ?そうしたら本気で救いようが無いからな?お前らには、廃村で魔物の討伐と訓練、あと畑仕事をして貰う、嫌なら出ていってくれて構わない、その場合はある程度の資金は持たせてやる、でもその後は知らん」

「ッ!」

まだ何か言いたそうだったが聞く耳を持たず歩き出す。
隣に涙を拭きながら澪が並ぶ。

「みんな、まだ大丈夫だよね?」

「……さぁな、これからじゃないか?」

ろくでなしとは言え元クラスメイト、澪だけじゃなく司達も心配からか表情は暗い、優し過ぎるのも考えものだ。

勇者のこれからを話合った際、彼らに対して厳しい意見も出てきていた、囮として前線に立たせる、食い潰した分を奴隷として働かせて返させる、果ては処刑するまで出てくる始末、よほど勇者として横暴に振る舞ってきたのが耐えられない人が居たようだ、俺はどんな処遇になっても仕方ないと思っていたが、待ったを掛けたのが澪達だ、もう一度だけチャンスを上げて欲しいと女王達を説得した、妥協として出たのが廃村に行かせるだ、わざわざ取り壊すより更正の為に使った方が有効だしね。

何はともあれ濃い一日が終わった、たまにはゆっくりしたいものだな。


「と、言うわけでピクニックだ!」

「いやいやいや、あんた何言ってんの!?」

「お?ナイスツッコミ鈴!今時モテるツッコミ系女子だな!?」

「いや、違うから!」

「えっ!?モテるの!?」

「はいそこ、澪も食い付かない!」

「鈴先生!ツッコミがしたいんです!」

「そうゆう危険な発言もするな!あと、誰が先生だ!まず、ツッコミをしたいならボケにまわるな!」

「みんな、一旦落ち着こう」

司の言葉で全員が深呼吸をする。

「さて、まず何から語るべきか」

「最初から全部話なさい!!」

「しょうがないな、ほら、最近ゆっくりできて無かったろ?」

「うん、そうだね、三国を転々としてたし」

「他のクラスの皆の処遇とか」

「で、これからも忙しくなるだろ?あと三人も魔王いるんだぜ?」

「確かに明の言う通りだな?」

「なら、休めるときにちゃんと休むべきだよな?」

サラリーマン大国日本、だから有給大事って言うしね。

「明の言いたいことは十分わかった、でもねピクニックは良いんだよ?お休みもあたしは好きだし、良いんだよ?」

鈴が口角をヒクヒクさせながら何とか笑顔になろうとしている。

「……でもね、ここ魔王城前だから!目と鼻の先にラスボスがいるかも知れないところで、どう休めと!?」

「出張先で豪遊的な?」

「あんたね!?出張先処か、出張所の目の前で宴会してるもんだから!?」

「落ち着けよ、ツッコミがよくわからない状態になってるぞ?ほら、クロエが作ってくれた生搾りオレンジジュース飲んで」

「わぁー美味しい、やっぱり生搾りは違うなー、ってそうじゃない!!」

さて、鈴の怒濤のツッコミが一段落したので、ここで説明しよう!

勇者達と一悶着終えた後、俺が「ゆっくりしたいものだな」と呟いたのが原因になる、側に控えていたクロエに聞かれてしまったのだ。

聞いたからにはクロエは全力で応えようとする、いやもうそりゃ速かったよ、面接の次の日要するに今日は、魔王城後まで行かなきゃならん、でもゆっくりしたいと言う願いは叶えたい、導き出した答えが今現在であるわけだ。

「明様、料理が出来ました」

まぁ、ぶっちゃけいつもの野営と何ら変わりはないんだが黙っておこう。

「うぅ、クロエさん達もそんなてきぱき準備してないで、止めてよぉ」

違うぞ鈴、その子達は止める側じゃない、むしろ実行犯だ。

「おっ、バーベキューも用意していたんだな」

「はい明様、ただのピクニックではいつもの野営と変わりませんから」

あら、気付いてたのね。
食欲をそそる匂いで焼ける串焼きをさっそく頂く、うんうまいね、ワガママを言うなら焼肉のたれが欲しい、塩と胡椒の味付けもいいんだがな、今度自作してみようかな。

「うぅ、間違ってる、間違ってるけどおいしいよ」

「まぁまぁ鈴、魔王が居るって決まった訳じゃないんだし」

「そうだよ、司君の言う通りせっかくなんだし楽しもう!」

「うむ、こっちの串もうまいぞ」

「ありがとう敦、そうだね楽しもう!」

『はははは!』

楽しい気分に水を差すのは気が引けるが………。

「居るぞ?魔王」

『………居るの!?』

いや、そんな勢い良く聞かれると自信なくすな。

一応ナビさんに改めて確認、居るんだよね?魔王。

〈はい、旧魔王城に二人の魔王が居ります〉

良かったちゃんと居た、いや良くは無いのか?

「大丈夫だ、ちゃんと居る」

「大丈夫ではないよね!?」

「まぁ落ち着け、直近の問題はそこじゃない」

〈マスター対象に敵対の意思を確認できません〉

と言う事は魔王とは無関係か?仕方ない直接聞こう。

「そこに居る奴ら出てこい!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

処理中です...