勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

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第1章 ベアトリス王国編

幕間.表パーティー(澪視点)

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「はぁ……」

何度目になるか、ため息をつく。ため息の理由は簡単、明くんが居ないから。

魔物を退けた、戦勝パーティーなのに、その立役者である、明くんは現在部屋で寝ているらしい。無理矢理連れて来ようかとも思ったが、疲れているかもしれないし、辞めておいた、だけどやっぱり……

「はぁ、つまんないな…」

「つまらなくて悪かったわね」

隣に居る鈴が、膨れっ面で言ってくる

「んー、別に~」

「気のない返事ね、明がいないだけで、こんなになるなんて」

「鈴だって、いつもみたいに、料理爆食いしてないじゃん」

「あ、あたしだって、毎日そんなに、食べる訳じゃあ…」

途中で言葉につまる鈴。

「……司くん達、大変そうだね」

「そうね、明の代わりに、女王様と挨拶してるのよね」

明くんが来なかった代わりに、司くんは今、国の偉い人達と話をしている、それに付き合い、敦くんも一緒に回っているが、二人共笑顔が硬い、その理由は緊張ではなく。

「何で、明くんの事を、伏せられなきゃいけないんだろ」

そう、あくまで今回は、勇者である私達が、活躍した話しになっている、それに対し二人だけではなく、私や鈴も不満があり、今にも爆発しそうなのである。

「国のためってやつなんじゃない?」

冷ややかな目で、会場を見る鈴が言う。
そこにエレナちゃんが近づいてくる。

「確かに、国や世界のために、勇者様の活躍は必要です、ですが、私もお母様も納得して、やっているわけではないのですよ」

「じゃ、何でこんな風になってんの?」

「世界の希望のためですかね……」

「その希望のために、明くんが誰にも正当な評価を得られないでいいと思ってるの!?」 

「そんなことありません!」

叫ぶ澪に、思わず叫び返すエレナ姫。
会場が一瞬、静まり返るが、直ぐに喧騒を取り戻す。

「ごめんなさい、大きな声を出しちゃって……」

「いえ、私の方こそ、ですがどうか信じてください、いつか必ず、工藤様には正当な栄誉を授け、世界に知らしめると約束いたします」

「うん、絶対だよ?じゃないと、二度と口聞かないからね、エレナちゃん」

「それは、嫌ですね」

「あー、うん、二人共、青春してるところ、悪いんだけど、明が黙って授けられるのを、待つと思う?」

「……」

「気づいたと思うけど、多分明なら自分で取りに行くよね?」

「た、確かに」

「何か、私達って……」

「エレナちゃん、ダメ!それを言ったら、恥ずかしくて、この場にいられなくなるから!」

「そ、そうですね!忘れましょう!」

私とエレナちゃんが、自分達の空回りぐわいに、紅くなっていると、窓の外に、キレイな水晶の雨が降っていた。

「キレ~、何かの、魔法かな?さすがファンタジー世界」

「そうですね、どこかの国の方が用意したのでしょうか?」

「明くんも、部屋で見れてたらいいな……」

「……澪さん、少なくとも、私やお母様、アリシア達は、工藤様の偉業を知っています、もしも、工藤に不利益があったら、私達が、出来る限りの事をさせていただきます、どうか信じてください、私達を」

「うん、信じてるよエレナちゃん!」

その後は、司くん達も加わり、夜は更けていった。
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