怪談レポート

久世空気

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№238 フリマアプリ

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 転勤で急遽引っ越しすることになりました。
 もともと実家だったので思ったより荷物があり、思い切っていろいろ処分することにしました。捨てるのももったいないので、それまで使ったことがなかったフリマアプリを使うことにしたんです。もちろん簡単に始められてもすぐに売れるわけではないですが、いろいろ試行錯誤しているうちに少しずつ売れるようになり、楽しくなってきました。

 引っ越ししてからも不要品を売ったり、逆に買ったりして頻繁に利用していました。たまに買ったものの思ったような品物じゃなかったときは再度売り直したりしていました。

 最後に取引したのは本でした。人気の小説でちょっと気になっていたのでアプリで見つけてすぐに購入しました。送られてきた本は、封筒や段ボールではなく白い紙袋に入っていました。それはすぐゴミ箱に捨て、買った本を開きました。
 夢中になって読んでいたら、ボソボソと人の話し声が聞こえてきました。マンションだったので気にしていなかったんですが、なんか近いなと思って音の方を見たらゴミ箱に突っ込んだはずの紙袋が床に落ちていました。ちょっと不思議に思いつつ掴んでゴミ箱に入れようとしたら、紙袋が二重になっていることが気になりました。「商品の保護のため」だと思ったんですが、なんとなく1枚目と2枚目の紙袋を離してみると、マチの部分に挟まっていたものが、ひらっと落ちました。

 レシートのように見えたそれは、服の一部のようでした。拾おうとしたらゾワッと全身に寒気がして、思わず払ってしまいました。でもそれほど力は入れてなかったはずです。なのに、それはひらひらと床を滑るように移動し、壁際に行くとすっと消えてしまったんです。

 それから部屋に人の気配がするようになりました。吐息や、足音、視線も感じます。なんか、変なものに引っかかっちゃったんですね、私。大家さんには申し訳ないですけど、何も説明せずに引っ越しすることにしました。説明のしようもないし・・・・・・。

――西尾さんが帰ろうとしたとき、彼女の背中に私は手を伸ばした。

 え? 何ですか? ゴミ? はぁ、どうも・・・・・・。

――私は一人になり、手に残った白い布を見た。蟲のように私の手から逃れようと動いていた。軽く指で潰すようにこするとどす黒い色に変わり動かなくなった。
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