怪談レポート

久世空気

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№128 冬のプール

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 小学生のとき、プールで溺れたクラスメイトがいました。
 水泳の授業が始まった時期で、プールに水が張ってあったので忍び込んで遊んでいたのでしょう。クラス全員泣いていましたが、一ヶ月もすると日常に戻りました。もちろん全く忘れてしまったわけではなく、ぽっかりと空いた彼女の机を見て、たまに思い出すこともありましたが。
 事件があった年の12月、誰かがこんなことを言い出しました。
「プールサイドでクリスマスパーティーをして死んだ子との最後の思い出にしよう」
 その時僕たちは6年生でしたし、卒業すれば皆で集まることも少なくなるでしょう。クラスではまだ彼女の死が引っかかっている子もいたようで、一区切りつけたかったようです。
 最初は半数くらいが渋っていましたが、クラスで一番発言力のある女子が仕切り始めたのでなんとなく全員参加することになりました。開催は終業式の後、みんなそれぞれみんなで食べれるお菓子を持ち寄って、先生が飲み物とクリスマスソングを流すためのCDとCDデッキを準備してくれました。
 コンクリートのプールサイドには一応ゴザが敷かれましたが、シーズンが過ぎて枯れ葉や藻が浮いているプール際は寒くてたまりませんでした。それでも始まってみると賑やかになって寒さも忘れた気がします。
 僕はふと「人が死んだ場所なんだよなぁ」と思い出しプールを見ました。そして真ん中に浮いている女の子を見つけました。それはこのパーティーを仕切っていた女子。寝ているように浮いているのです。さっきまで大声で笑っていたはずなのに。
 僕がぽかんとしていると一緒にいた友達も気づいて視線を追ってプールを見、「何してんだ?」とつぶやきました。その声に周りが気づき、先生が慌ててプールに飛び込んだその時、その女子の体が膨らみだしたんです。風船みたいにぷくーって。
 悲鳴が上がり、先生はせっかく飛び込んだのにプールの縁に捕まったまま。女子はどんどんふくらんで真っ白ないびつな風船みたいになりました。バスくらいになった時、バーンって爆発したんです。
 広げていた菓子や紙コップは吹っ飛び、僕たちも尻餅をつきました。そしてプールの真ん中に、今し方爆発したはずの女子が呆然としていました。肩から上を水面から出していましたが髪はゴミや枯葉やいろいろ付いてびっしょり濡れていて、顔も真っ白でした。
 先生はやっと泳いでその女子を助け、プールから出しました。女子も状況に気がついたみたいで泣いていました。僕たちはその女子が足を滑らせてプールに落ちたと口裏を合わせて、パーティーをお開きにしました。先生も本人も同意しました。説明のしようがありませんし。

 後に聞いたのですが、あの頃プールに忍び込んで遊んでいたのは、死んだあの子だけじゃ無かったんです。クリスマスに爆発した子は死んだ子と家が近くてよく遊んでいたようです。憶測はできますが、今更です。爆発した女子は卒業以来見た人は誰もいないそうです。
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