127 / 254
№127 出戻り
しおりを挟む
中学を卒業するタイミングで、私の父は転勤することになり曾祖父の代からずっと住んでいた家を離れることになりました。しかも家を取り壊して土地を売るというのです。
地元に友達もいたし、すでに他界しました祖父母も曾祖父母も一緒に暮らしていた思い出の家を壊すのが嫌で私は反対したのですが子供一人ではどうにもならず。
隣の県に引っ越ししてしばらくして、地元の友達から連絡がありました。その土地はその友達の両親が買って家を建てることになったと。私は大切な友達が自分の思い出の場所に住んでくれることが嬉しくて思わず泣いてしまいました。
それから私は新しい環境に慣れ、進学し、いろいろ忙しくて、地元に戻ることはありませんでした。でもその友達とは頻繁に連絡を取り合っていました。
就職が決まったとき、ふと地元に一度戻りたいと思いました。社会人になったらまた忙しくなって時間が取れないだろうと、そう思って友達に相談したら
「うちに泊まるといいよ」
と言ってくれました。それで11月の連休に遊びに行くことになったんです。
友達の家を見たときはさすがに胸が締め付けられそうでした。ここに私の家があったんだなぁって。でも友達の家は新しくて綺麗で、それは良かったなって思いました。
その夜、友達の部屋で枕を並べて寝ました。でも真夜中突然覚醒してしまったんです。微睡みとかはまったくなく、ぱっと睡眠が終わった感じです。不思議に思いながらもう一度寝ようとしたその時、天井から何か落ちてきました。それは床に当たってポーンと弾み、また天井近くに上がって、重力に従って落ちるを繰り返しています。大きさはピンポン球くらいでしょうか。色は青っぽかった気がします。静かに上がり下がりを繰り返しているのを見ているうちに、私はまた眠くなってきて布団に入りました。怖いとは思わなかったんですよね。まあ、ボールっぽかったんで。
でもその瞬間「こら!」ってはっきり男の人の声が聞こえたんです。私は思わず飛び起きました。ボールはまだ静かに上下しています。またそれを見たらうつらうつらしてきて、寝かけると再び怒鳴られ、ボールを見て眠りかけてまた声に起こされる。それを繰り返しているうちにいつの間にか気を失っていて、朝、友達に起こされました。友達は何も見ていないようでした。迷いましたが結局私は何も言わずに友達と別れました。
その後、友達の家は一家離散したそうです。窃盗に遭い、詐欺に遭い、親の会社は倒産し、母親は男を作って消えました。それが2,3年の間に起こったそうです。
久々に連絡が取れた友達に聞いて私は絶句しました。あの家も売ることになったそうです。友達は
「あなたがうちに泊まったとき……」
と言いかけて口をつぐみ、そのまま電話は切れました。友達は何を言いたかったのでしょうか? 私があそこに戻ったことで、何か悪いものがあの家に入ったんでしょうか?
――結局それ以来目戸さんは友達と連絡が取れていないらしい。
地元に友達もいたし、すでに他界しました祖父母も曾祖父母も一緒に暮らしていた思い出の家を壊すのが嫌で私は反対したのですが子供一人ではどうにもならず。
隣の県に引っ越ししてしばらくして、地元の友達から連絡がありました。その土地はその友達の両親が買って家を建てることになったと。私は大切な友達が自分の思い出の場所に住んでくれることが嬉しくて思わず泣いてしまいました。
それから私は新しい環境に慣れ、進学し、いろいろ忙しくて、地元に戻ることはありませんでした。でもその友達とは頻繁に連絡を取り合っていました。
就職が決まったとき、ふと地元に一度戻りたいと思いました。社会人になったらまた忙しくなって時間が取れないだろうと、そう思って友達に相談したら
「うちに泊まるといいよ」
と言ってくれました。それで11月の連休に遊びに行くことになったんです。
友達の家を見たときはさすがに胸が締め付けられそうでした。ここに私の家があったんだなぁって。でも友達の家は新しくて綺麗で、それは良かったなって思いました。
その夜、友達の部屋で枕を並べて寝ました。でも真夜中突然覚醒してしまったんです。微睡みとかはまったくなく、ぱっと睡眠が終わった感じです。不思議に思いながらもう一度寝ようとしたその時、天井から何か落ちてきました。それは床に当たってポーンと弾み、また天井近くに上がって、重力に従って落ちるを繰り返しています。大きさはピンポン球くらいでしょうか。色は青っぽかった気がします。静かに上がり下がりを繰り返しているのを見ているうちに、私はまた眠くなってきて布団に入りました。怖いとは思わなかったんですよね。まあ、ボールっぽかったんで。
でもその瞬間「こら!」ってはっきり男の人の声が聞こえたんです。私は思わず飛び起きました。ボールはまだ静かに上下しています。またそれを見たらうつらうつらしてきて、寝かけると再び怒鳴られ、ボールを見て眠りかけてまた声に起こされる。それを繰り返しているうちにいつの間にか気を失っていて、朝、友達に起こされました。友達は何も見ていないようでした。迷いましたが結局私は何も言わずに友達と別れました。
その後、友達の家は一家離散したそうです。窃盗に遭い、詐欺に遭い、親の会社は倒産し、母親は男を作って消えました。それが2,3年の間に起こったそうです。
久々に連絡が取れた友達に聞いて私は絶句しました。あの家も売ることになったそうです。友達は
「あなたがうちに泊まったとき……」
と言いかけて口をつぐみ、そのまま電話は切れました。友達は何を言いたかったのでしょうか? 私があそこに戻ったことで、何か悪いものがあの家に入ったんでしょうか?
――結局それ以来目戸さんは友達と連絡が取れていないらしい。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
代償
とろろ
ホラー
山下一郎は、どこにでもいる平凡な工員だった。
彼の唯一の趣味は、古い骨董品店の中を見て回ること。
ある日、彼は謎の本をその店で手に入れる。
それは、望むものなら何でも手に入れることができる本だった。
その本が、導く先にあるものとは...!
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる