怪談レポート

久世空気

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№127 出戻り

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 中学を卒業するタイミングで、私の父は転勤することになり曾祖父の代からずっと住んでいた家を離れることになりました。しかも家を取り壊して土地を売るというのです。
 地元に友達もいたし、すでに他界しました祖父母も曾祖父母も一緒に暮らしていた思い出の家を壊すのが嫌で私は反対したのですが子供一人ではどうにもならず。
 隣の県に引っ越ししてしばらくして、地元の友達から連絡がありました。その土地はその友達の両親が買って家を建てることになったと。私は大切な友達が自分の思い出の場所に住んでくれることが嬉しくて思わず泣いてしまいました。
 それから私は新しい環境に慣れ、進学し、いろいろ忙しくて、地元に戻ることはありませんでした。でもその友達とは頻繁に連絡を取り合っていました。
 就職が決まったとき、ふと地元に一度戻りたいと思いました。社会人になったらまた忙しくなって時間が取れないだろうと、そう思って友達に相談したら
「うちに泊まるといいよ」
 と言ってくれました。それで11月の連休に遊びに行くことになったんです。
 友達の家を見たときはさすがに胸が締め付けられそうでした。ここに私の家があったんだなぁって。でも友達の家は新しくて綺麗で、それは良かったなって思いました。
 その夜、友達の部屋で枕を並べて寝ました。でも真夜中突然覚醒してしまったんです。微睡みとかはまったくなく、ぱっと睡眠が終わった感じです。不思議に思いながらもう一度寝ようとしたその時、天井から何か落ちてきました。それは床に当たってポーンと弾み、また天井近くに上がって、重力に従って落ちるを繰り返しています。大きさはピンポン球くらいでしょうか。色は青っぽかった気がします。静かに上がり下がりを繰り返しているのを見ているうちに、私はまた眠くなってきて布団に入りました。怖いとは思わなかったんですよね。まあ、ボールっぽかったんで。
 でもその瞬間「こら!」ってはっきり男の人の声が聞こえたんです。私は思わず飛び起きました。ボールはまだ静かに上下しています。またそれを見たらうつらうつらしてきて、寝かけると再び怒鳴られ、ボールを見て眠りかけてまた声に起こされる。それを繰り返しているうちにいつの間にか気を失っていて、朝、友達に起こされました。友達は何も見ていないようでした。迷いましたが結局私は何も言わずに友達と別れました。
 その後、友達の家は一家離散したそうです。窃盗に遭い、詐欺に遭い、親の会社は倒産し、母親は男を作って消えました。それが2,3年の間に起こったそうです。
 久々に連絡が取れた友達に聞いて私は絶句しました。あの家も売ることになったそうです。友達は
「あなたがうちに泊まったとき……」
 と言いかけて口をつぐみ、そのまま電話は切れました。友達は何を言いたかったのでしょうか? 私があそこに戻ったことで、何か悪いものがあの家に入ったんでしょうか?

――結局それ以来目戸さんは友達と連絡が取れていないらしい。
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