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逃亡編

これからの味方

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 アベンチュレ国王はグラスに葡萄酒を注ぐが三滴しかでなかった。眉間に皺を寄せるがすぐに酒がなくなった事を諦めた。
「私は数年前からインデッセを怪しんでいる。だから他国研修に新人以外にベテランの城人の同行を提案させた。監視を強くするために」
「けど、なぜ、インデッセを……」
 黙っていたトーレンが話に入った。ペリド国王は今度は咎めることをしなかった。
「インデッセの誇りには傷がある。我々三国はインデッセから神を奪った。精神的不平等階級が隠された平等のために。それを今の人間は平和だと言う。インデッセは信仰が強い国だ。神がいない今はその信仰がサール国王に向けられている。多くのものが同じものを信じるというのはとてつもない強い力になる。脅威になる。大砲なんかが敵わないぐらいに」
 トーレンはそれ以上質問することはなかった。ペリド国王は人差し指を立てた。
「戦争が起きない方法はひとつだけある」
 メトとトーレンはその人差し指を見つめた。
「この世界の唯一になることだ。インデッセは神を持っていたから唯一になる可能性が一番高かった。その唯一を他国が奪ったからインデッセの傷は深いのだ」
 その唯一にオードはなりたい。メトにはオード国王がそう言っているようにしか聞こえなかったが口にすることはなかった。

 食事会を終えて、メトはバリミアとアイドと合流した。これから国王が準備してくれた邸宅へと移動する。三か月の間そこがメト達のオードの家だ。
「メト王女」
 トーレン王子が走ってきた。
「トーレン王子。どうなされました? 」
「謝ろうと思いまして。先程父があなたに不快な思いをさせたでしょう。本当に申し訳ない。あの人は意地が悪いところがあって……。あ、頭はいいのですが。オードについたばかりでお疲れでしたのに……」
 メトは自然と微笑んだ。
「わざわざ気に掛けて頂いてありがとうございます。お優しいのですね」
 トーレン王子はまた照れて、口ごもった。
「今日はゆっくり休んでください。明後日からは学校に通うので大変でしょうから……」
「ありがとうございます」
「あ、え、それと……」
 口ごもるトーレン王子がバリミアはじれったかった。それを察したアイドが落ち着けと言わんばかりにバリミアを突いた。バリミアはそれでもじれったかった。
「……甘いものはお好きですか……?」
 トーレン王子はやっと尋ねた。
「とても大好きです」
 メトがそう答えるとトーレン王子はぱあっと表情を明るくした。
「私も甘いものが好きで、おすすめの美味しい焼き菓子があるのです。明日届けますね」
「それはとても嬉しいです。楽しみにしておりますね」
 トーレン王子は笑顔で頷いた。
「可愛い人ですね」
 ぼそりとバリミアはアイドに呟く。アイドも頷く。
「トーレン、いつまでも足止めさせたらいけませんよ」
 ヘンサ王子を連れたアメシ王妃が呆れたように言った。
「あ、はい母上。それでは失礼いたします」
「ええ、またお会いしましょう」
 トーレン王子はメトのその一言でまた照れた。そしてスキップしそうな勢いでその場を後にした。トーレン王子の背中を見送るメトの傍にアメシはきた。
「私からも王の先程の態度を詫びます」
「いえ、お気になさらず」
「けれど、あなたがトーレンの妻になるというのならもっと色んな思いをするでしょう」
 メトは思わずアメシ王妃を見上げた。
「なので、強くなってください。強くなれば世界は広がります」
 アメシ王妃は自分がそれが証明してきたかのように言った。
「トーレンは親の私がいうのもなんですかあの父親にしては優しくなるように育てたつもりです。その分王のような頼り強さはありませんが、大事な物はちゃんと持たせております。メト王女」
「はい」
「私は息子の味方です。あなたが息子の味方になれば、あなたと私は手をとメトえるでしょう」
 そう言い残しアメシ王女はヘンサ王子を連れて去っていった。
 国王が準備してくれた立派な邸宅でメトはバリミアとアイドに食事会であったことを話した。
「やっかいな国王ですね」
 バリミアは正直に言った。
「王子は素敵な方でしたが、歳をとってああなったら嫌ですね」
 アイドの言葉にメトとバリミアは笑った。
「しかし、ここのいる間二人がいますから。悪いですが、未熟な王女なものですからしっかりと支えてくださいね」
 バリミアとアイドはしっかりと頷いた。
「心強いわ」
 メトはオードに来て一番の笑い声を上げた。

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