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第四章「姫様の盾になる男」
61.変態ロリコン
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(僕は間違っていない!! 僕は騙されたんだ!! 僕は被害者。だから何も悪くない!!!)
そのくせっ毛の若き貴族は、夜の王城内をぶつぶつと独り言を話しながら歩いていた。
(ミセルに騙されたんだ。利用されたんだ。くそっ!!!)
甘い言葉と誘惑に負け、王家の姫であるアンナとの婚約を解消したカイト。『剣遊会』も仮病を使って辞退し、姫を守る名誉職である『護衛職』をもはく奪された。有力貴族とは名ばかりで、世間ではキャスタール家やジャスター家に見捨てられた凋落貴族として嘲笑されている。
そして残念ながら彼にこの事態を打開できる力はなかった。
家の者からは『無能』扱いされ、父親からは勘当されそうになった。そんな元婚約者のカイトだが、彼には他者にはない才能があった。
『勘違い』
ポジティブと言えば聞こえのいい能力。
アンナに非情な婚約破棄を突き付けたにもかかわらず、『自分は被害者だ』と思い込み再び彼女とよりを戻そうとしている。まだアンナは自分に惚れている、そんな根拠のない自信が彼の能力であった。
コンコン……
夜、その元婚約者のドアをカイトは軽く叩いた。
(きっとひとりで寂しい夜を過ごしているのだろう……、僕が傍にいてあげるよ)
カイトはアンナの美しい金色の長髪を思い出しひとり興奮する。
「どなた?」
ドアの向こうから聞こえる懐かしい声。すぐに返事をする。
「アンナ、僕だよ。カイトだよ!!」
「……」
沈黙。
驚き、もしくは照れているのだろうと思ったカイトが声をかける。
「君に大切な話があるんだ。ここを開けてくれないか?」
しばらくの沈黙を経てアンナが答える。
「あなたに用はないわ。帰って」
予想外の言葉に驚くカイト。くせっ毛をかき上げながら答える。
「アンナ、君は勘違いをしているんだ!! 僕の話を聞けばきっと……」
「帰って!! もう二度と来ないで!!!」
「ひゃっ!!」
アンナの大きな声を聞いて思わず後ろに後退するカイト。言うことを聞かない元婚約者に苛立ちながら言う。
「僕はミセルに騙されたんだ!! 酷い女だ!! 君も知っているだろ? あの女のずる賢さ!!!」
アンナはこれ以上くだらない話に付き合いきれないとドアから離れようとしたのだが、ふとカイトが言ったその言葉を聞き体が固まった。
「ミセルは今、君のところの『護衛職』と仲良くやってるよ。この間、真夜中に彼女が彼の部屋に入って行くのを見かけたけど、そう言う関係になってるんだ。なあ、酷いだろ? 信じられるかい?」
(ロレンツが、ミセルと……、ですって!?)
アンナは呆然とする。
言われてみれば最近のミセルのロレンツに対する態度、あれは当初の敵意むき出しのものとは違い女を感じさせるもの。無意識のうちに感じていた彼女に対する『苛立ち』の理由が今はっきりと分かった気がする。
先ほどまで一緒に居たロレンツ。陰でそんなことをしていたのだろうか。アンナが大きな声で言う。
「そ、それは本当なの?」
「ああ、僕は嘘はつかないよ」
アンナの頭の中に部屋でふたりっきりでいるミセルとロレンツの姿が浮かぶ。
(なによ、それ!? 私に『可愛い』とか『愛してる』とか、『生涯を共に歩もう』とか言っておきながら、女なら誰でもいいわけっ!?)
「ねえ、アンナ……」
「うるさーーーーいっ!!!」
ドン!!!
「ぎゃっ!!」
アンナはカイトの声に罵声で答え、更にドアを思い切り蹴飛ばすとひとりズカズカと部屋へ戻って行った。驚いたカイトは半泣きになりながら逃げるようにその場を去り行く。
アンナはすぐに服を着替え、先ほど別れたばかりのロレンツの部屋へと向かった。
その少し前、アンナの公務に付き合って少し帰りが遅くなったロレンツが自分の部屋へと戻って来た。
「今戻った」
家政婦をしてくれているミンファがドアを開け、そう言って戻って来たロレンツに頭を下げて言う。
「お帰りなさいませ。ご主人様っ!!」
少しずつ慣れたメイド服。
ただちょっと動くだけで短いスカートから下着が見えそうな点には正直困っている。ミンファに連れられて部屋の中に戻ると、まったく同じメイド服を着たイコが笑顔で立ってロレンツを迎えた。
「お帰りなさいませ。パパぁ」
「なっ!?」
ロレンツはふたりのメイド嬢を見て体が固まる。
「お、おい、嬢ちゃん。一体何をやって……」
そう焦りながら言うロレンツにミンファが答える。
「はい、これは『メイドカフェ』でございます」
「メ、メイド……、カフェ……??」
ロレンツが聞いたこともないその名前を繰り返す。ミンファがにっこり笑って言う。
「はい。今、王都で流行っているんですが、この様なメイドの可愛い服を着てお客さんをもてなすんです。えっちなことはありませんので、女性のお客様でもご利用頂けるんですよ」
「い、いや、だからって……」
戸惑うロレンツにミンファが答える。
「この話をイコちゃんにしたら『じゃあ、メイドカフェでパパをもてなそう』と言う話になりまして」
「いや、だからってな……」
渋い顔をするロレンツにイコが悲しそうな顔で言う。
「パパは嫌いなの? イコがもてなしてあげるの……」
目に入れても痛くないほど可愛いイコ。
そんな彼女がメイド服を着てもてなしてくれることが嫌なはずはない。
「いや、そんなことはない。嬉しい、嬉しいぞ、イコ……」
娘のメイド服姿を見ながら顔を引きつらせてロレンツが答える。ミンファがイコに頷いて言う。
「じゃあ、ご主人様のお夕飯をお持ちしましょう!!」
「はーい!!」
ふたりのメイド嬢はそう言うとキッチンの方へと走って行く。
(ど、どうすればいいんだ、俺は……)
初めてのメイドカフェに戸惑うロレンツ。すぐにイコが水をトレーに乗せてやって来た。そしてロレンツが座ったテーブルに置きながらアクションを加えて言う。
「おまたせ~、パパぁ。イコのらぶらぶいっぱいの、らぶらぶドリンクですよ~、召し上がれ~、らぶぅ~!!」
そう言って両手でハートの形を作りロレンツに向けて放つ仕草をする。
「ぶはっ!!」
喉がカラカラで水を飲みかけていたロレンツが思わず吹き出しそうになる。
「な、なんだそれは一体!?」
イコが笑って言う。
「えー、メイドカフェのおもてなしだよ~、可愛いでしょ??」
可愛い。素直に思ったロレンツが聞く。
「そんなことやって、は、恥ずかしくないのか?」
イコが少し考えてから言う。
「うーん、別に恥ずかしくないかな~。アレックス君も『可愛い』って言ってくれたし」
「ぶーっ!!!」
今度は本当に吐いた。
「きゃっ!! パパ、何やってるのっ!!!」
(ア、アレックスにはもう見せたのか!? 今の、俺が最初じゃなかったのか……)
ロレンツはなぜか敗北にも似た感覚を覚え涙が出そうになる。
「お待たせしました。ご主人様っ!!」
そこへ夜食を作って持って来たミンファが現れる。そして笑顔で熱々のスパゲッティをロレンツのテーブルに置く。
「あ、ありがとう……」
恐る恐るお礼を言うロレンツ。ミンファはそれに笑顔で応えながら粉チーズを持って言った。
「おいしくな~れ、おいしくな~れ、萌え萌え~、キュン!!」
手でハートを作りながら同時にスバゲッティに粉チーズをかけていき、最後にイコ同様手のハートをロレンツに送る。ロレンツが頭を抱えながら思う。
(お、俺は一体どういった反応をすればいいのか!? 普通に食べればいいのか!!??)
ロレンツがメイドカフェ流おもてなしに困惑していると、部屋のドアがノックされた。
コンコン!!!
「は~い!!」
それに反応してドアへ向かうミンファ。
「どちら様でしょうか~?」
「私よ、アンナ」
「あ、姫様っ!!」
その名前を聞いたロレンツが一瞬焦る。
ガチャ
そして開かれるドア。ロレンツが立ち上がってドアの方へ走るが時すでに遅しであった。
「な、なにその格好!?」
ミンファのメイド服姿を見たアンナが驚き大きな声で言う。ミンファが笑顔で答える。
「これは今王都で流行っているメイド服ってやつで~、私の故郷の衣装で~」
可愛らしく説明し始めるミンファを見ながら額に青筋を立てるアンナ。ロレンツが近付いて声を掛ける。
「よ、よお。嬢ちゃん。どうしたんだ、こんな時間に……?」
やや顔を引きつらせて声を掛けるロレンツ。アンナがそれを睨むようにして言う。
「ど、どういうことよ!! 何なのこの服!? 家政婦って聞いていたけど、何よこれ!!」
アンナは可愛すぎるミンファを見て苛立ちを抑えられない。ただでさえ『ミセルと浮気をしている』と疑って来たアンナ。そこに元敵であるミンファのこの姿を見て平常心で居られるはずがない。
「これはだな、彼女の故郷の家政婦のフォーマルな衣装で……」
「あー、アンナお姉ちゃんだ!!」
そこへ当然の如く同じメイド服を着たイコが現れる。
「な、なに!? イコちゃんまでこんな服着させて……」
唖然とするアンナにロレンツが言う。
「違う! 違うんだ、これは!! イコが着たいって言うから嬢ちゃんが作って……」
「バッカじゃないの!!!」
「お、おい……」
激怒したアンナの怒声が部屋に響く。
「馬鹿なの? やっぱり馬鹿でしょ!! いや馬鹿だけじゃないわ!! 変態でロリコン!! そう、変態ロリコンよ!!!」
「へ、変態ロリ……」
ロレンツはもうどうにも止められない状況に言われるがまま耐えるしかなかった。そしてこの日を境にアンナのロレンツを罵る言葉に『変態』と『ロリコン』が新たに加わることとなった。
そのくせっ毛の若き貴族は、夜の王城内をぶつぶつと独り言を話しながら歩いていた。
(ミセルに騙されたんだ。利用されたんだ。くそっ!!!)
甘い言葉と誘惑に負け、王家の姫であるアンナとの婚約を解消したカイト。『剣遊会』も仮病を使って辞退し、姫を守る名誉職である『護衛職』をもはく奪された。有力貴族とは名ばかりで、世間ではキャスタール家やジャスター家に見捨てられた凋落貴族として嘲笑されている。
そして残念ながら彼にこの事態を打開できる力はなかった。
家の者からは『無能』扱いされ、父親からは勘当されそうになった。そんな元婚約者のカイトだが、彼には他者にはない才能があった。
『勘違い』
ポジティブと言えば聞こえのいい能力。
アンナに非情な婚約破棄を突き付けたにもかかわらず、『自分は被害者だ』と思い込み再び彼女とよりを戻そうとしている。まだアンナは自分に惚れている、そんな根拠のない自信が彼の能力であった。
コンコン……
夜、その元婚約者のドアをカイトは軽く叩いた。
(きっとひとりで寂しい夜を過ごしているのだろう……、僕が傍にいてあげるよ)
カイトはアンナの美しい金色の長髪を思い出しひとり興奮する。
「どなた?」
ドアの向こうから聞こえる懐かしい声。すぐに返事をする。
「アンナ、僕だよ。カイトだよ!!」
「……」
沈黙。
驚き、もしくは照れているのだろうと思ったカイトが声をかける。
「君に大切な話があるんだ。ここを開けてくれないか?」
しばらくの沈黙を経てアンナが答える。
「あなたに用はないわ。帰って」
予想外の言葉に驚くカイト。くせっ毛をかき上げながら答える。
「アンナ、君は勘違いをしているんだ!! 僕の話を聞けばきっと……」
「帰って!! もう二度と来ないで!!!」
「ひゃっ!!」
アンナの大きな声を聞いて思わず後ろに後退するカイト。言うことを聞かない元婚約者に苛立ちながら言う。
「僕はミセルに騙されたんだ!! 酷い女だ!! 君も知っているだろ? あの女のずる賢さ!!!」
アンナはこれ以上くだらない話に付き合いきれないとドアから離れようとしたのだが、ふとカイトが言ったその言葉を聞き体が固まった。
「ミセルは今、君のところの『護衛職』と仲良くやってるよ。この間、真夜中に彼女が彼の部屋に入って行くのを見かけたけど、そう言う関係になってるんだ。なあ、酷いだろ? 信じられるかい?」
(ロレンツが、ミセルと……、ですって!?)
アンナは呆然とする。
言われてみれば最近のミセルのロレンツに対する態度、あれは当初の敵意むき出しのものとは違い女を感じさせるもの。無意識のうちに感じていた彼女に対する『苛立ち』の理由が今はっきりと分かった気がする。
先ほどまで一緒に居たロレンツ。陰でそんなことをしていたのだろうか。アンナが大きな声で言う。
「そ、それは本当なの?」
「ああ、僕は嘘はつかないよ」
アンナの頭の中に部屋でふたりっきりでいるミセルとロレンツの姿が浮かぶ。
(なによ、それ!? 私に『可愛い』とか『愛してる』とか、『生涯を共に歩もう』とか言っておきながら、女なら誰でもいいわけっ!?)
「ねえ、アンナ……」
「うるさーーーーいっ!!!」
ドン!!!
「ぎゃっ!!」
アンナはカイトの声に罵声で答え、更にドアを思い切り蹴飛ばすとひとりズカズカと部屋へ戻って行った。驚いたカイトは半泣きになりながら逃げるようにその場を去り行く。
アンナはすぐに服を着替え、先ほど別れたばかりのロレンツの部屋へと向かった。
その少し前、アンナの公務に付き合って少し帰りが遅くなったロレンツが自分の部屋へと戻って来た。
「今戻った」
家政婦をしてくれているミンファがドアを開け、そう言って戻って来たロレンツに頭を下げて言う。
「お帰りなさいませ。ご主人様っ!!」
少しずつ慣れたメイド服。
ただちょっと動くだけで短いスカートから下着が見えそうな点には正直困っている。ミンファに連れられて部屋の中に戻ると、まったく同じメイド服を着たイコが笑顔で立ってロレンツを迎えた。
「お帰りなさいませ。パパぁ」
「なっ!?」
ロレンツはふたりのメイド嬢を見て体が固まる。
「お、おい、嬢ちゃん。一体何をやって……」
そう焦りながら言うロレンツにミンファが答える。
「はい、これは『メイドカフェ』でございます」
「メ、メイド……、カフェ……??」
ロレンツが聞いたこともないその名前を繰り返す。ミンファがにっこり笑って言う。
「はい。今、王都で流行っているんですが、この様なメイドの可愛い服を着てお客さんをもてなすんです。えっちなことはありませんので、女性のお客様でもご利用頂けるんですよ」
「い、いや、だからって……」
戸惑うロレンツにミンファが答える。
「この話をイコちゃんにしたら『じゃあ、メイドカフェでパパをもてなそう』と言う話になりまして」
「いや、だからってな……」
渋い顔をするロレンツにイコが悲しそうな顔で言う。
「パパは嫌いなの? イコがもてなしてあげるの……」
目に入れても痛くないほど可愛いイコ。
そんな彼女がメイド服を着てもてなしてくれることが嫌なはずはない。
「いや、そんなことはない。嬉しい、嬉しいぞ、イコ……」
娘のメイド服姿を見ながら顔を引きつらせてロレンツが答える。ミンファがイコに頷いて言う。
「じゃあ、ご主人様のお夕飯をお持ちしましょう!!」
「はーい!!」
ふたりのメイド嬢はそう言うとキッチンの方へと走って行く。
(ど、どうすればいいんだ、俺は……)
初めてのメイドカフェに戸惑うロレンツ。すぐにイコが水をトレーに乗せてやって来た。そしてロレンツが座ったテーブルに置きながらアクションを加えて言う。
「おまたせ~、パパぁ。イコのらぶらぶいっぱいの、らぶらぶドリンクですよ~、召し上がれ~、らぶぅ~!!」
そう言って両手でハートの形を作りロレンツに向けて放つ仕草をする。
「ぶはっ!!」
喉がカラカラで水を飲みかけていたロレンツが思わず吹き出しそうになる。
「な、なんだそれは一体!?」
イコが笑って言う。
「えー、メイドカフェのおもてなしだよ~、可愛いでしょ??」
可愛い。素直に思ったロレンツが聞く。
「そんなことやって、は、恥ずかしくないのか?」
イコが少し考えてから言う。
「うーん、別に恥ずかしくないかな~。アレックス君も『可愛い』って言ってくれたし」
「ぶーっ!!!」
今度は本当に吐いた。
「きゃっ!! パパ、何やってるのっ!!!」
(ア、アレックスにはもう見せたのか!? 今の、俺が最初じゃなかったのか……)
ロレンツはなぜか敗北にも似た感覚を覚え涙が出そうになる。
「お待たせしました。ご主人様っ!!」
そこへ夜食を作って持って来たミンファが現れる。そして笑顔で熱々のスパゲッティをロレンツのテーブルに置く。
「あ、ありがとう……」
恐る恐るお礼を言うロレンツ。ミンファはそれに笑顔で応えながら粉チーズを持って言った。
「おいしくな~れ、おいしくな~れ、萌え萌え~、キュン!!」
手でハートを作りながら同時にスバゲッティに粉チーズをかけていき、最後にイコ同様手のハートをロレンツに送る。ロレンツが頭を抱えながら思う。
(お、俺は一体どういった反応をすればいいのか!? 普通に食べればいいのか!!??)
ロレンツがメイドカフェ流おもてなしに困惑していると、部屋のドアがノックされた。
コンコン!!!
「は~い!!」
それに反応してドアへ向かうミンファ。
「どちら様でしょうか~?」
「私よ、アンナ」
「あ、姫様っ!!」
その名前を聞いたロレンツが一瞬焦る。
ガチャ
そして開かれるドア。ロレンツが立ち上がってドアの方へ走るが時すでに遅しであった。
「な、なにその格好!?」
ミンファのメイド服姿を見たアンナが驚き大きな声で言う。ミンファが笑顔で答える。
「これは今王都で流行っているメイド服ってやつで~、私の故郷の衣装で~」
可愛らしく説明し始めるミンファを見ながら額に青筋を立てるアンナ。ロレンツが近付いて声を掛ける。
「よ、よお。嬢ちゃん。どうしたんだ、こんな時間に……?」
やや顔を引きつらせて声を掛けるロレンツ。アンナがそれを睨むようにして言う。
「ど、どういうことよ!! 何なのこの服!? 家政婦って聞いていたけど、何よこれ!!」
アンナは可愛すぎるミンファを見て苛立ちを抑えられない。ただでさえ『ミセルと浮気をしている』と疑って来たアンナ。そこに元敵であるミンファのこの姿を見て平常心で居られるはずがない。
「これはだな、彼女の故郷の家政婦のフォーマルな衣装で……」
「あー、アンナお姉ちゃんだ!!」
そこへ当然の如く同じメイド服を着たイコが現れる。
「な、なに!? イコちゃんまでこんな服着させて……」
唖然とするアンナにロレンツが言う。
「違う! 違うんだ、これは!! イコが着たいって言うから嬢ちゃんが作って……」
「バッカじゃないの!!!」
「お、おい……」
激怒したアンナの怒声が部屋に響く。
「馬鹿なの? やっぱり馬鹿でしょ!! いや馬鹿だけじゃないわ!! 変態でロリコン!! そう、変態ロリコンよ!!!」
「へ、変態ロリ……」
ロレンツはもうどうにも止められない状況に言われるがまま耐えるしかなかった。そしてこの日を境にアンナのロレンツを罵る言葉に『変態』と『ロリコン』が新たに加わることとなった。
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