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他の幼馴染
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翌日に受けた小テストの結果は、柚流にしては良い出来だった、と思う。
あの後、一心不乱に勉強した成果だろう。
テストが終わって安心すると、次は帰りのことが気になってきた。
今日は美術部の活動が無いので、学校が近い柚流の方が早く帰る事が出来る。
スマホの受信メールを開き、尚澄の時間割を確認する。
月末に、写真を取った時間割をメールで勝手に送ってくるのだ。
ちなみに柚流の時間割と部活の予定表も、尚澄から送って、と催促されるので送り忘れる事はない。
毎回、何でこんな事を、と思わないでもないが、自分の予定を把握されているのは小さい時からなので、慣れてしまっている。
小学生の高学年や、中学生の頃は、このままだと大人になった時に離れるのが不安だ、と思った時期もあったが今はもう、その考えすらない。
もう何が正しいかさえ、考える事さえ無駄な気がしている。
「むしろ把握されていない方が不安だと思ってしまうあたり、尚澄の事を変だって言えないんだよなぁ。」
そう、つぶやきながら親指と人差指を動かし、写真を拡大して尚澄の時間割を確認する。
すると今日の所の備考欄に蛍光ペンで線をひいてあった。
「えっと。午後に総務委員会があるみたいだ。」
尚澄の通っている旭山高校では、生徒会に入る準備段階のような組織として、総務委員会というのがある。
尚澄は、それに入っているのだ。
良い案を思いついた。
「そうだ!今日は、俺が尚澄の学校へ行って、はずかしめを受けさせてやる!」
そう、その時は名案だと思った。
しかし、時間をかけて旭山高校に着いた時に気づいた。
柚流は女子に囲まれやしないので、尚澄が恥ずかしがる事はない、という事実に。
スマホに尚澄から何回か連絡は来ていたが、嘘をついて家に帰っているという設定にした。
ここまで来たら何もせずに帰れやしない。せめて驚かせてやろうと、校門の影になっている所で待つ事にしたのだ。
その時、見知った顔が通って行った。
「良太か?久しぶり!」
「柚流ー!久しぶり。相変わらず、可愛いなぁ。」
歩いてきた体格の良い人物は、田名部良太と言い、柚流の保育園からの幼馴染だ。
良太は、可愛い可愛い、と連呼しながら、頬を揉んでくる。
あんまり可愛いと言われて、良い気はしないが、良太に関しては10年は言われ続けているので、もう口癖のようなものなのだろう。
それに、180センチ以上もあるやつから見たら、標準身長ちょうどの柚流は、可愛い生き物なのかもしれない。
「良太、元気だった?ちなみに俺はカッコいいんで、そこ間違えないように。」
「はいはい。知ってるよ。」
背中をポンポン叩かれながら、軽く受け流されてしまった。
まぁ、いいや。
「どう?勉強大変?」
「まぁな。勉強についていくの大変だけどな。おかげで部活やりたかったけど、帰宅部だよ。」
そうか、家やら塾やらで勉強しなくちゃ、ついていけないくらいなのか。
「進学校は大変だなぁ。」
「いやいや、将来の夢のためだからね。」
「あぁ、弁護士になるんだっけ?」
「そう。すごいだろ?柚流は将来、どうするか決まってる?」
「本当にすごいよ。………俺は、まだ何にも決まってない。」
柚流は美術関係っていう曖昧な進路希望しかないので、はぐらかしてしまった。
良太は気にしてないようで、大多数はそんなもんだよ、と笑っている。
そして、不審げに、まわりをキョロキョロと見回している。
「なぁ、尚澄を持ってんの?」
「………約束はしてないけどね。」
「小学校の頃から、あいつさ、柚流をひとりじめして遊べなかったじゃん。」
きっと、それは違う。
離さなかったのは、自分だから。
そう思ったが、柚流は何も言えなくて黙る。
「ねぇ、柚流さ。今日、一緒に遊ばない?」
あの後、一心不乱に勉強した成果だろう。
テストが終わって安心すると、次は帰りのことが気になってきた。
今日は美術部の活動が無いので、学校が近い柚流の方が早く帰る事が出来る。
スマホの受信メールを開き、尚澄の時間割を確認する。
月末に、写真を取った時間割をメールで勝手に送ってくるのだ。
ちなみに柚流の時間割と部活の予定表も、尚澄から送って、と催促されるので送り忘れる事はない。
毎回、何でこんな事を、と思わないでもないが、自分の予定を把握されているのは小さい時からなので、慣れてしまっている。
小学生の高学年や、中学生の頃は、このままだと大人になった時に離れるのが不安だ、と思った時期もあったが今はもう、その考えすらない。
もう何が正しいかさえ、考える事さえ無駄な気がしている。
「むしろ把握されていない方が不安だと思ってしまうあたり、尚澄の事を変だって言えないんだよなぁ。」
そう、つぶやきながら親指と人差指を動かし、写真を拡大して尚澄の時間割を確認する。
すると今日の所の備考欄に蛍光ペンで線をひいてあった。
「えっと。午後に総務委員会があるみたいだ。」
尚澄の通っている旭山高校では、生徒会に入る準備段階のような組織として、総務委員会というのがある。
尚澄は、それに入っているのだ。
良い案を思いついた。
「そうだ!今日は、俺が尚澄の学校へ行って、はずかしめを受けさせてやる!」
そう、その時は名案だと思った。
しかし、時間をかけて旭山高校に着いた時に気づいた。
柚流は女子に囲まれやしないので、尚澄が恥ずかしがる事はない、という事実に。
スマホに尚澄から何回か連絡は来ていたが、嘘をついて家に帰っているという設定にした。
ここまで来たら何もせずに帰れやしない。せめて驚かせてやろうと、校門の影になっている所で待つ事にしたのだ。
その時、見知った顔が通って行った。
「良太か?久しぶり!」
「柚流ー!久しぶり。相変わらず、可愛いなぁ。」
歩いてきた体格の良い人物は、田名部良太と言い、柚流の保育園からの幼馴染だ。
良太は、可愛い可愛い、と連呼しながら、頬を揉んでくる。
あんまり可愛いと言われて、良い気はしないが、良太に関しては10年は言われ続けているので、もう口癖のようなものなのだろう。
それに、180センチ以上もあるやつから見たら、標準身長ちょうどの柚流は、可愛い生き物なのかもしれない。
「良太、元気だった?ちなみに俺はカッコいいんで、そこ間違えないように。」
「はいはい。知ってるよ。」
背中をポンポン叩かれながら、軽く受け流されてしまった。
まぁ、いいや。
「どう?勉強大変?」
「まぁな。勉強についていくの大変だけどな。おかげで部活やりたかったけど、帰宅部だよ。」
そうか、家やら塾やらで勉強しなくちゃ、ついていけないくらいなのか。
「進学校は大変だなぁ。」
「いやいや、将来の夢のためだからね。」
「あぁ、弁護士になるんだっけ?」
「そう。すごいだろ?柚流は将来、どうするか決まってる?」
「本当にすごいよ。………俺は、まだ何にも決まってない。」
柚流は美術関係っていう曖昧な進路希望しかないので、はぐらかしてしまった。
良太は気にしてないようで、大多数はそんなもんだよ、と笑っている。
そして、不審げに、まわりをキョロキョロと見回している。
「なぁ、尚澄を持ってんの?」
「………約束はしてないけどね。」
「小学校の頃から、あいつさ、柚流をひとりじめして遊べなかったじゃん。」
きっと、それは違う。
離さなかったのは、自分だから。
そう思ったが、柚流は何も言えなくて黙る。
「ねぇ、柚流さ。今日、一緒に遊ばない?」
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