アズ同盟

未瑠

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卒業旅行

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  今日は俺たちの卒業式だった。

 この制服を着るのも最後なんて、信じられない。
 式では答辞を読ませてもらった。奨くんと一緒で嬉しい。
 本当は読みながら時々泣きそうになったんだけど、これはナイショ。
  
  色んな人からボタンやネクタイが欲しいって言われたけど、漣と朔と奨くんとで、どれもあげないことを約束していたから全部断った。いつの間にか行列が出来ていてちょっと困ったけど、朔にも漣にも同じように行列が出来ていたのでちょっと笑ってしまった。

  写真だけはOKするってことだったから、頼まれれば一緒に写った。泣いている子も多くて、もうそのころにはもらい泣きしてしまった。そこから涙が止まらなくて、涙でぐしゃぐしゃな顔だったと思うけど、そんな写真でも良かったのかなぁ。
  奨くんが卒業式の後なかなか帰ってこなかった理由が分かった気がする。



  校門前では奨くんが待っていてくれて、大きな花束をくれた。
  赤いバラが数えきれないくらいの大きさで、持つのも大変なくらいだ。

「アズ、卒業おめでとう。春からまた一緒に同じところに通えるのが今から楽しみだよ」
「奨くん、ありがとう。花もすごく綺麗だね」
「アズには敵わないよ」
「奨くん」

 ヒョイっと俺の持っていた花束が持ち上がる。

「こんな大きなの持ってきやがって、さらに目立つだろ」
「アズ、重いだろうから持ってやるよ」
「漣、朔。……君らにもあるから、アズにやった花束は返して。アズ、重かったら俺が持つから」
 
 そう言って、奨はスイトピーを一輪づつ漣と朔に渡す。
 ちゃんと2人にも用意しているところが奨くんだ。

「サンキュ」
「ありがと」

 2人もちゃんとお礼を言えるようになった。

「ほら、じゃあ乗ってよ」

 奨くんは車で来ていた。

「アズへの思いを表現しようとしたら花束が大きくなっちゃったから、車にしたんだよ」
「あっそ」
「俺もすぐ免許とろっと」
「君たちも乗せてあげるから、文句言わない」
「……このまま行くのかよ」
「いや、さすがに君たちの荷物とかないし。アズのはもう乗せてるけど」
「じゃあ途中寄って」
「俺も」
「……はいはい」
「あれ? 今日からだっけ?」
「うん、そうだよ」

 大学の学部も決まり、卒業式まであと数日といった放課後、漣と朔と奨くんから卒業旅行に誘われた。聞けばもう俺が頷くだけでいいと言うので、もちろん断り理由もない俺は二つ返事で行くことを決めていた。

「そっか、ちゃんと確認してなくてごめんね。用意も全然してないから……」

 今から戻って用意してたら何時に出発になるか分かんないな、みんなと旅行だってことにばっかり気を取られてちゃんと聞けばよかったのに。

  自分が、どこにいつどのくらい行くという基本的なことすら知らなかったことに少なからずビックリしながらアズは謝った。

「ん。大丈夫。さっきも言ったでしょ、アズの分はもう用意してあるし、車にも積んであるから」

  今日は一段とニコニコが眩しい奨くんがご機嫌で教えてくれる。
  俺の旅行の用意はもう万全で、というか、奨くんと漣と朔が旅行先での服も一式用意してくれたみたい。アメニティもあるしってことで、俺は制服だけ着替えに寄って、漣と朔の家にも奨くんがそれぞれ寄ってくれた。

「じゃあ出発しようか」
「途中コンビニ寄ってくれよな」
「さっき買ってくればよかったでしょ」
「SAでいいんじゃね」
「あ、そっかー」
「運転手さん、安全運転でねー」
「アズが乗ってるんだから当然でしょ。君たち、あんまりうるさいと降りてもらうから」
「えー、ひどっ」
「どうやって行けっつーの」
「タクシーでも拾えば? カードあるんでしょ」
「奨くん大丈夫? 俺もまだ免許なくてごめんね、一人で運転だと疲れちゃうよね」
「ううん、アズのためなら大丈夫だよ。その代わり、ずっと助手席でフォローしてね」
「うん、もちろん」
「いや、アズ、事故の時って助手席が一番危ないらしいから、後部座席がいいよ」
「そうそう」
「助手席には俺らが順番に乗ってやるって」
「俺は乗らない」
「二人とも、ホントに下ろすよ」
「……サーセン」
「……悪い」

 ちょっとブスくれながらも二人とも謝る。奨くんも、まぁ仕方ないといった風に一つため息をつくけど、ずっと怒っている感じはない。

 初めて3人を引き合わせてから、俺との関係も3人の関係も変わってきたと思う。

  漣は最初は俺以外には冷たいイメージで誰とも話しているところは見かけなかったし、いつも気怠そうでそんな所も大丈夫かと不安だったけど、最近は朔以外でも話しかけられたり話したりしている場面に出くわすし、前よりどんどん感情が出てくるようになったと思う。

 朔は前から明るく目立っていたけど、今は俺だけじゃなく周りをぐいぐい惹きつけて引っ張っていってくれる太陽のような存在だ。前はちょっとした際に顔が陰ることもあったし、俺の前では強がっているような感じもあったけど、今は漣といいコンビだと思うし、男らしい頼もしさと爽やかな笑顔が増えたと思う。朔のお陰でスポーツの面白さ、応援する楽しさを教えてもらったし、何かとインドアになりがちな俺をいつでも外の世界に連れ出して新しい喜びをくれる。

 奨くんはちょっと幼くなった。こんな言い方をすると変な感じかな、うーん、そう、年相応になることが増えた。前はとにかく周りの期待を一心に背負ってそれ以上の結果を出すことに一生懸命で、そこはそれでとってもカッコよかったけど、無理していないか心配だった。だけど、漣と朔と口喧嘩している時の奨くんはちょっぴり子どもみたいで、でもそれに安心したんだ。ケンカするほど仲がいいってやつかなって。

「アズ? ご機嫌だね」
「ん。だって皆と一緒に旅行なんて初めてだし、楽しみだし!」
「そうだね」

 もうこのまま行き先も聞かないで全部お任せしちゃおうと助手席に深く座り込んだ。

 あ、でも行き先も知らなかったらフォローにもならないかな?そう思ったけど、奨くんが今度はすごくいい笑顔で『アズが助手席にいないなら運転しない』と言ったので、そのまま助手席に助手席に乗っていった。



**




「アズ、着いたよ。起きて?」
「……ん」

 奨くんの声でハッとする。

「あ、ごめんね、寝ちゃってた?」
「ううん、卒業式からそのまま来たんだもん、疲れてたよね。大丈夫。もう着いたよ」

 もう周りは真っ暗になっていた。
 車を降りて奨くんの後ろにくっついて行く。俺の荷物は朔が持ってくれた。

「ちょっと待っててね」

 奨くんはそう言うと、受付に行ったようだった。朔も俺の荷物を漣に預けて付いていく。

 場所はどこかまでは全然分からないけど、どうやら老舗旅館のようだ。純和風という感じでもなく、大正ロマン溢れる家具や雰囲気が新鮮だ。暗すぎず明るすぎない照明が目に優しい。ロビーの大きなソファに漣と座って待っていると、奨くんと漣が戻ってきた。

「お前ってほんとに……どうやったらこんな所とれんだよ?」
「まぁ君たちよりは色んなところに顔が効くってことだよ」
「しれっと言いやがって。俺だってそのうち」
「ま、頑張って」

  何か言ってるみたいだけど、よく聞こえない。

「こっちだよ」

 仲居さんに先導されて付いていく。

 あれ?
 旅館出ちゃったけど?

「奨くん?」
「ああ、大丈夫。こっちの離れなんだ」

 そう言われてしばらく歩いていった場所には、そこだけ別の旅館があるみたいだった。ちゃんと門があり、その中を進む。
 広い玄関を入ると、好奇心が抑えられずに色々見て回った。

「わぁ、すごい、広いねぇ」

 部屋も4つあり、大きなベッドルームには大きなベッドが3つ置いてあった。お風呂は内風呂の他に露天風呂もついていて、こちらもかなりの広さがあった。
「アズ、子どもみたいだな」
「お前んちの方が広いだろ」

 朔と漣がすでにくつろぎながら言う。

「だって、みんなと旅行が嬉しいのに、こんなすごい所なんて思ってなかったし。温泉大好き! ありがとう、みんな」
「アズ、ご飯の前に先にお風呂行ったら? さっきも眠かったみたいだしお風呂入ったら少し目が覚めるかもよ」

 奨くんが声を掛けてくれる。
 正直、目はしっかり覚めていたけど、あの広々としたお風呂に早く入ってみたかったので先にお風呂に入ることにした。




**


「檜の内風呂も良かったけど、やっぱり露天風呂がすごく良かった! 黒石縁の露天風呂でね、テラスもあって、照明が綺麗でお庭も見えるし、月も綺麗だったよ。絶対後でみんな入ってね! 俺も後でもう一回入ろうかなぁ」

 所せましと並べられた懐石を前に、アズの口は止まらない。湯上りに浴衣を着たアズは頬がピンクに染まり、お気に入りを見つけた喜びで瞳は潤み可愛い口がせわしなく動く。

「うん、そっか良かったね。でもアズ、まずは頂こうか」
「あ、うん、ごめんね奨くん、食べよう! いただきます」
「気に入ったんだな、風呂」
「そう! すごく良かったから後で楽しみにしててね、朔」
「後で……楽しみだな」
「漣も入る? 良かった、いつもシャワーだって聞いてたから……わ、このお刺し身も美味しいね」
 
 海の幸をふんだんに使った懐石も美味しかったようで、ずっと笑顔だ。

「俺、すごく幸せ。こんな素敵なお宿に、みんなと一緒に来られて……はぁ、お腹もいっぱい。お腹も幸せ。」
「良かった、アズが嬉しいと俺も嬉しい」

 お風呂が大好きなのに、火傷のせいで大浴場にはほとんど入ったことのないアズに――もちろん貸し切りは別として――とっては、様々なお風呂が楽しめたことが相当嬉しかったようだ。奨はそんなアズを微笑みながら眺め答える。漣も朔もいつになく興奮しているアズを愛おしそうに見つめる。

「奨くん、漣、朔。みんなありがとう」
「いいんだよ。ねぇ、アズ。俺たちをもっと幸せにして?」
「ん――、なんて?幸せ?もちろんいいよ」

 そう言うと、奨くんが俺を抱き上げ、ベッドルームに進む。それに漣と朔も続く。

「奨くん、漣、朔。どうしたの?」
「アズが欲しい」
「え?」
「だからね、ずっと待ってたんだ。アズが欲しい」

 そう言ってキスをする奨くん。
 その間に朔が俺の浴衣の前をはだけさせ、漣が下着を脱がしている。

「え? うん。えっと……?」
「大丈夫だから俺らに任せて」
「アズは感じてるだけでいいよ」
「俺らをもっと幸せにして」

 そう言って今度は漣が口に、朔が乳首に、奨が俺のものにキスをする。

「ちょ、ちょっと待って。ん、んー」

 朔がチロチロと舐める乳首も恥ずかしいけど、奨くんが舐めてるとこはもっと恥ずかしい!

 奨くんのことを止めようとしても、口は漣に塞がれ、左手は漣に、右手は朔にがっちりと掴まれ、足を閉じようとしても奨くんがそれを許してくれない。

 3人の舌が好きなように動き回り、自分の体なのに自分の体じゃなくなったようだった。

「はぁ、はぁ、ん、んん、あ、ぁあ、し、しょうくん、あっ」

 漣のキスの合間になんとか声を発する。

「んー、なぁに? 呼んだ、アズ」

 奨くんは舌で舐めるのを止めてくれない。
 それどころか、今度は口に全部入れようとする。

「んっ、やめっ、だ、だめっ、あー、あぁー、ん、んー。れ、漣も、ちょ、ちょっと待ってぇ」
「んー、だめ、止めない。待たない。はぁ、はぁ、アズ好きだよ」

 漣が俺の頭を抱え込み口を放してくれないから、全然話せない。

「俺だって大好きだ、アズ。アズのここピンクでほんと可愛い。ねぇ、アズ。俺のことは呼んでくれないの?」

 朔が左手で左胸を、下で右の乳首を弄びながら少し拗ねたように言うけど、だって、漣が口を塞いでいるから……。

「あ、んー、んっ、さ…くぅ…んー」
「はっ、アズやっぱ最高―。乳首も勃ってきたね、カワイイ」

 もう何だか分からない、頭だけじゃなくて全身が甘く痺れてきた。

「ね、アズ、気持ちいい?」
「アズ、好きだよ」
「アズはここも綺麗だ、もっと欲しい、ほら、もっと……」

 みんなが話しかけてくるけど、息をするだけで精一杯だ。

 熱い、

 熱い、

 熱い。

 漣の吐息と唾液を飲み込む。
 朔の息遣いと羽のような指先で触れられ、かと思えばきつく吸い付かれる。
 奨くんの舌が俺のものに絡みつき、熱い口の中に吸い込まれる。

「あー、ん、んぅ、はぁ、はぁ、はぁ、もう、もう、だめ、だめっ。ぁ、あだめっ」
「アズ、だめじゃないよ」
「いい、だろ」
「そう、気持ちいいっていうんだよ。いいよ、イッて」
「はぁ、はぁ、あー、あ、あ、ん、んーっ!!」

 ビクビクと腰が勝手にはね、漣にキスされ、朔に手を繋がれたまま、奨くんの口の中で達してしまった。

「ん……アズ、いい子。上手にイケたね」
「はぁ、はぁ、ご、ごめんね、奨くん」
「どうして? アズのここに触れられて幸せだよ。アズの一番に貰ったしね」
「えぇ……、は、恥ずかしいっ」
「恥ずかしいなんて言わせないよ、アズ。次は俺」

  え? と思う間もなく、スルリとみんなの位置が変わる。

「じゃあアズ、今度は俺だけ見てね、愛してる」

  両頬を両手に包まれ、奨くんにキスをされる。

「朔、お前キスマ付け過ぎ」

  左手を繋ぎ直した漣のサラサラと色素の薄い髪が胸に当たる。

「んん、漣、くすぐったい」
「あぁ、アズはどこもカワイイな」
「や……恥ずかしいからそんなこと言わないで……。あっ」
「恥ずかしくないって、感じてるアズはカワイイ。もっと見せて」
「ん、んーっ」

  奨くんのキスは深いだけじゃなくて、優しい。俺がちゃんと息継ぎ出来るようにもしてくれる。けど、両頬は包まれたまま。

「あぁ、本当にカワイイねアズ。ほら、目を開けて、アズの瞳に俺だけ写して。んっ」
「ピンクの乳首、こんなにピクピクするんだ。しかも甘いな、アズ」
「勃ってもカワイイな、アズ。とろとろだ。んー、俺はどこに出してもらおうかな」

  みんな好きに言ってるけど、また大きくなってきた快楽にどんどん飲み込まれて、もう何も考えられない。足に力も入らないから朔は好きなように開いたり、太ももにキスしたりしている。

  そうして今度は朔の手の中で達したあと、またも位置が入れ替わり、今度は朔にキスされながら、奨くんに後ろから乳首を触られ、漣の熱を感じながら3度目の頂点まで昇りつめた。



**



 3人に抱きしめられ、もう恥ずかしいより幸せしかない。

「恋人って素敵だね」
「うん、そうだね。素敵だよね、アズ。アズと恋人になれて本当に幸せだよ」
「はぁ、もう勘弁して。今日はこれ以上しないって決めてるだから」
「これ以上って?」
「漣! ……ったく。いいんだ、アズ。もう今日は休め」
「うん、朔も大好きだよ」
「!! やべぇ俺も我慢できないかも……」
「君たち二人とももうベッドから出てくれる?」
「なんで奨は平気なわけ?」
「君らとは年季が違うから。ほら、アズのために風呂の湯加減調整して」
「あごで使うなよ」
「ついでにトイレ使ってきてもいいよ。お風呂は今からアズが使うからダメ。鎮めてきな、それ」
「……ムカつく。」

  なんだか3人で話しているけど、もう眠くてよく聞き取れない。

  そのあと、3人にお風呂に入れてもらってベッドまで運んでもらった。眠くてだるくて動けない俺だったけど、3人が代わる代わる抱っこしてくれたおかげで一歩も歩かなかった。卒業旅行って言ってたけど、こんなに幸せで至れり尽くせりで、なんか俺だけ良い思いしてるみたいだけど、良かったのかな?

  この日から更にみんなとの距離が近づいた気がして、恥ずかしかったけどあの日があって良かったと思った。

  この続きが本当にあるなんて、この時はまだ知らなかった。



 ――俺たちが本当に結ばれたのは、これから半年後のことだった。

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