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30 方法

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 最後の頼みとも言うべき、魔術師から回復魔法を使うことは出来ないと宣告され第二王子と銀髪の騎士はガックリと肩を落とした。

 プラチナブロンドの侍女も力無くうなだれる。私はふと客室の片隅にある茶色いダンボール箱を見てロゼッタが少しでも胃の内容物を吐きやすいようにと、背中をこすっていた手を止めた。

「まだ方法はあるわ」

「マリナ様……?」

 私はロゼッタから離れると茶色いダンボール箱に貼られているガムテープを勢いよく剥がした。そして中に入っている物をかき分け、取り出していく。

「塩化ビニール製の業務用、使い捨て手袋……。あっ! 新品のゴムチューブにロート! それと、これがあれば……!」

 黒い粉末が入っている白色のポリ容器を最後に取り出して、オレンジ色の新品ゴムチューブを袋から取り出し、ロートに合わせる。その様子を銀髪の騎士は当惑した表情で見つめた。

「それは何だ?」

「胃洗浄用のゴムロートセットです」

「ゴムロート?」

「このゴムチューブをノドから胃に入れて強制的に胃の内容物を出して、胃の中を洗浄します」

「強制的に胃を洗浄だと?」

 意味が分からないといった困惑気味の顔をしている銀髪の騎士や第二王子の方は、ほとんど見ずに胃洗浄の用意をしていて大切な物がないことに気付いた。

「あ、しまった!」

「どうしたのだ?」

「潤滑ゼリーがないんです……。あれがないとゴムチューブをスムーズに、ノドから胃に挿入することができない……!」

 そのまま、無理にゴムチューブをノドに挿入しようとすれば相当、苦しくなる。何か潤滑ゼリーの代わりになる物はないかと周囲を見渡したとき、三面鏡ドレッサーの天板上に黄金色の液体が入ったガラスの小瓶があることに気付いた。

「これは……。ここを出る前にロゼッタが用意してくれたオリーブオイル! これを使えば良いわ!」

「それをどう使うんだ?」

 銀髪の騎士は不思議そうに小首を傾げているが今日、この客室を出る前。手がカサつくと訴えた時にロゼッタが用意してくれた黄金色のオリーブオイル。これなら、口に入れても大丈夫な物だから潤滑ゼリーの代わりになるはずだ。 

「その前に、ユリの花を移動させた方が良いですね」

 私は三面鏡ドレッサーの天板上に置かれている赤ユリが生けられている花ビンを両手で持ち、控えの部屋にあるテーブルの上に置き、客室に戻った。

 猫がユリの花で中毒症状を起こす場合、わずかなユリの花粉であっても症状が出ることがある。まして、ユリ中毒で倒れているロゼッタに、これ以上のユリ成分の摂取は厳禁だ。私はしっかりとドアを閉めた。
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