20 / 61
20 深紅の百合
しおりを挟む
「え? 調子に乗ってなど……」
公爵令嬢リリアンヌの指摘にロゼッタは困惑の表情を浮かべているが、ストロベリーブロンドの公爵令嬢は目を細める。
「そうかしら? 貴方、いつもレナード殿下に色目を使っているでしょう? 私が気付かないとでも思っていたら大間違いよ!」
「い、色目なんて使った覚えは……」
動揺した様子で視線をさ迷わせて語尾が小さくなったプラチナブロンドの侍女、ロゼッタを見た公爵令嬢リリアンヌは方眉をつり上げた。
「どうかしらね? さっきだって私とレナード殿下が庭園にいるのを見ながら、これみがよしに涙を流していたじゃないの!?」
「あれは……! 目にゴミが入っただけで」
「フン、苦しい言い訳ね。レナード殿下が気付いて下されば、優しく声をかけて頂けるとでも思っていたのでしょう? おあいにくさま! 貴方が泣こうが、わめこうがレナード殿下は私の婚約者なのよ! 貴族の皮をかぶった平民の分際で、ちょろちょろとコバエのようにまとわりついて視界に入るのはやめてちょうだい!」
「そんな……」
ロゼッタは顔色を失い、水宝玉色の瞳からは涙がこぼれそうになっている。そんなプラチナブロンドの侍女を見た公爵令嬢リリアンヌは勝ち誇ったような笑みを浮かべて、手に持っている赤ユリを私たちに見せつけた。
「ねぇ、この大輪の赤ユリを見てごらんなさい。見事でしょう? 公爵令嬢たる私がこの美しい大輪のユリなら、平民のおまえたちは道ばたの雑草なんだから、身の程もわきまえず王宮にいるなら除草されるべきよね?」
「さすが、リリアンヌ様! おっしゃる通りですわ!」
茶髪の侍女フィオーレが公爵令嬢の言葉に感銘を受けた様子で拍手すると、リリアンヌはストロベリーブロンドの髪を揺らして満足げに頷いた。
「私が王妃になったあかつきには、これみがよしに色目を使うような薄汚い平民は王宮から排除いたしますわ! それが嫌なら、さっさと実家に帰ることね!」
そう言い終わると同時にプラチナブロンドの侍女、ロゼッタの胸元に向かって赤ユリを投げつけた公爵令嬢リリアンヌは豪奢なドレスをひるがえし、ハイヒールの靴音を響かせながら茶髪の侍女と共に客室から出て行った。
二人が立ち去った後、床に落ちた赤ユリを震える手で拾ったロゼッタは、木目細工の床上に落ちた赤ユリの黄色い花粉を白い布巾で拭き取った。しかし、ロゼッタが着ている紺色のドレスは公爵令嬢が赤ユリを投げつけたせいで、黄色い花粉がべったりと付着してしまった。
「ロゼッタ……。あんな人の言うこと、気にすることないわ」
「ありがとうございます。マリナ様……。私、着替えてきます。このままだと汚れが目立ってしまいますので……」
公爵令嬢リリアンヌの指摘にロゼッタは困惑の表情を浮かべているが、ストロベリーブロンドの公爵令嬢は目を細める。
「そうかしら? 貴方、いつもレナード殿下に色目を使っているでしょう? 私が気付かないとでも思っていたら大間違いよ!」
「い、色目なんて使った覚えは……」
動揺した様子で視線をさ迷わせて語尾が小さくなったプラチナブロンドの侍女、ロゼッタを見た公爵令嬢リリアンヌは方眉をつり上げた。
「どうかしらね? さっきだって私とレナード殿下が庭園にいるのを見ながら、これみがよしに涙を流していたじゃないの!?」
「あれは……! 目にゴミが入っただけで」
「フン、苦しい言い訳ね。レナード殿下が気付いて下されば、優しく声をかけて頂けるとでも思っていたのでしょう? おあいにくさま! 貴方が泣こうが、わめこうがレナード殿下は私の婚約者なのよ! 貴族の皮をかぶった平民の分際で、ちょろちょろとコバエのようにまとわりついて視界に入るのはやめてちょうだい!」
「そんな……」
ロゼッタは顔色を失い、水宝玉色の瞳からは涙がこぼれそうになっている。そんなプラチナブロンドの侍女を見た公爵令嬢リリアンヌは勝ち誇ったような笑みを浮かべて、手に持っている赤ユリを私たちに見せつけた。
「ねぇ、この大輪の赤ユリを見てごらんなさい。見事でしょう? 公爵令嬢たる私がこの美しい大輪のユリなら、平民のおまえたちは道ばたの雑草なんだから、身の程もわきまえず王宮にいるなら除草されるべきよね?」
「さすが、リリアンヌ様! おっしゃる通りですわ!」
茶髪の侍女フィオーレが公爵令嬢の言葉に感銘を受けた様子で拍手すると、リリアンヌはストロベリーブロンドの髪を揺らして満足げに頷いた。
「私が王妃になったあかつきには、これみがよしに色目を使うような薄汚い平民は王宮から排除いたしますわ! それが嫌なら、さっさと実家に帰ることね!」
そう言い終わると同時にプラチナブロンドの侍女、ロゼッタの胸元に向かって赤ユリを投げつけた公爵令嬢リリアンヌは豪奢なドレスをひるがえし、ハイヒールの靴音を響かせながら茶髪の侍女と共に客室から出て行った。
二人が立ち去った後、床に落ちた赤ユリを震える手で拾ったロゼッタは、木目細工の床上に落ちた赤ユリの黄色い花粉を白い布巾で拭き取った。しかし、ロゼッタが着ている紺色のドレスは公爵令嬢が赤ユリを投げつけたせいで、黄色い花粉がべったりと付着してしまった。
「ロゼッタ……。あんな人の言うこと、気にすることないわ」
「ありがとうございます。マリナ様……。私、着替えてきます。このままだと汚れが目立ってしまいますので……」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる