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19 公爵令嬢、リリアンヌ
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「お邪魔するわね」
「えっ! あの、リリアンヌ様?」
戸惑うロゼッタに見向きもせず、公爵令嬢リリアンヌはハイヒールの高い靴音を響かせながら、茶髪の侍女フィオーレを引き連れて客室に入ってきた。ソファに座っている私の前にやって来ると、ストロベリーブロンドの公爵令嬢は冷ややかな目で私を見据える。
「ディルク殿下のお客様が滞在していると聞いて、ごあいさつに参りましたの……。私は第二王子、レナード殿下の婚約者リリアンヌ・フォン・ラティフォリアよ。貴方は?」
「あ、私は聖真理奈と申します」
「ヒジリ? ずいぶんと変わった名前ね?」
眉根を寄せた公爵令嬢に、茶髪の侍女フィオーレは小さな声で耳打ちする。
「リリアンヌ様。先ほど申し上げた通り、この者は平民でございますので……。私達には聞き覚えの無いような奇妙な名前なのでしょう」
「ああ、そうだったわね。貴方、平民らしいわね?」
「はい。まぁ、そうですが」
「下級貴族ですらない平民が第一王子の客人なんて……。一体どうやって、ディルク殿下に取り入って王宮に入り込んだの?」
「別に第一王子に取り入ったりしてません。私の意思で来たわけではないですし、呼ばれたんです」
「呼ばれた? 王子殿下が平民を? どんな用事があるというの?」
怪訝そうに顔をしかめた公爵令嬢の後ろに控えていた茶髪の侍女フィオーレは突然、眼光鋭く私をにらみつけて指さした。
「リリアンヌ様、この者は『文字が分からない』と申しておりました。学のない平民に重要な仕事を与えるために呼んだとは思えません!」
「まぁ、文字が分からないだなんて信じられないわね……。さては貴方、娼婦なのでしょう?」
「は? 娼婦!?」
そんなことを言われるとは夢にも思っていなかった為、唖然としていると公爵令嬢の横にいる茶髪の侍女フィオーレは頷きながら、私を一瞥して冷笑を浮かべた。
「さすがリリアンヌ様! 確かに、娼婦なら文字が読めないような平民でも出来ますわね!」
「お二人とも、失礼なことを言わないで下さい! マリナ様はお医者様です!」
これまで黙って事態を見守っていたロゼッタが声を荒げて反論した。しかし、公爵令嬢リリアンヌは軽く紅玉色の目を見開いた後、鼻で笑った。
「医者ですって!? 文字が分からない医者がいる訳がないでしょう! ウソをつくにしても、もっとマシなウソをつくことね?」
「ウソではありません!」
「まだ言うの? ロゼッタ、だいたい貴方は第二王子の幼馴染みだからって、ちょっと調子に乗っているんじゃなくって?」
「えっ! あの、リリアンヌ様?」
戸惑うロゼッタに見向きもせず、公爵令嬢リリアンヌはハイヒールの高い靴音を響かせながら、茶髪の侍女フィオーレを引き連れて客室に入ってきた。ソファに座っている私の前にやって来ると、ストロベリーブロンドの公爵令嬢は冷ややかな目で私を見据える。
「ディルク殿下のお客様が滞在していると聞いて、ごあいさつに参りましたの……。私は第二王子、レナード殿下の婚約者リリアンヌ・フォン・ラティフォリアよ。貴方は?」
「あ、私は聖真理奈と申します」
「ヒジリ? ずいぶんと変わった名前ね?」
眉根を寄せた公爵令嬢に、茶髪の侍女フィオーレは小さな声で耳打ちする。
「リリアンヌ様。先ほど申し上げた通り、この者は平民でございますので……。私達には聞き覚えの無いような奇妙な名前なのでしょう」
「ああ、そうだったわね。貴方、平民らしいわね?」
「はい。まぁ、そうですが」
「下級貴族ですらない平民が第一王子の客人なんて……。一体どうやって、ディルク殿下に取り入って王宮に入り込んだの?」
「別に第一王子に取り入ったりしてません。私の意思で来たわけではないですし、呼ばれたんです」
「呼ばれた? 王子殿下が平民を? どんな用事があるというの?」
怪訝そうに顔をしかめた公爵令嬢の後ろに控えていた茶髪の侍女フィオーレは突然、眼光鋭く私をにらみつけて指さした。
「リリアンヌ様、この者は『文字が分からない』と申しておりました。学のない平民に重要な仕事を与えるために呼んだとは思えません!」
「まぁ、文字が分からないだなんて信じられないわね……。さては貴方、娼婦なのでしょう?」
「は? 娼婦!?」
そんなことを言われるとは夢にも思っていなかった為、唖然としていると公爵令嬢の横にいる茶髪の侍女フィオーレは頷きながら、私を一瞥して冷笑を浮かべた。
「さすがリリアンヌ様! 確かに、娼婦なら文字が読めないような平民でも出来ますわね!」
「お二人とも、失礼なことを言わないで下さい! マリナ様はお医者様です!」
これまで黙って事態を見守っていたロゼッタが声を荒げて反論した。しかし、公爵令嬢リリアンヌは軽く紅玉色の目を見開いた後、鼻で笑った。
「医者ですって!? 文字が分からない医者がいる訳がないでしょう! ウソをつくにしても、もっとマシなウソをつくことね?」
「ウソではありません!」
「まだ言うの? ロゼッタ、だいたい貴方は第二王子の幼馴染みだからって、ちょっと調子に乗っているんじゃなくって?」
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