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電話の相手
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自分の席に戻ってくれば、古谷が俺の席にいた。
隣に座れば、たっつんも俺の隣に座った。
「あ。戻ってきたね。あれ? 白石も一緒だったの?」
「あ、いや! さっきトイレで会って……話した……」
って変な言い訳みたいだ!
「田杉さん、飲みすぎたみたいでフラフラしていたんで心配だったんです」
「ははっ。それ、わかるよ。田杉ってお酒弱いくせに飲みすぎるからね」
「そんな事ない……」
古谷にクスクスと笑われる。
たっつんは、俺より口が上手いな。
営業はそれぐらいできなきゃか……ちょっと悔しい。
「で? 古谷は何か用なのか?」
「なぁーにぃ? 用がなくても一緒に飲んでもいいでしょ?」
「用ないの?」
「富田部長が心配していたんだよ。一人にするなって」
「あの人も本当過保護だよ──なっ⁉︎」
畳の上に置いていた自分の手に別の手の感触がしてギョッとした。
そっと隣を窺えば、たっつんが古谷から見えないように手を重ねていた。
心臓がバクバク言っている。
「田杉って……わかんないの?」
「へ⁉︎ な、何が⁉︎」
「部長も苦労するな……」
たっつんの手の感触に意識が行ってしまって話が頭に入ってこない。
スリッと手を撫でられるとドキドキする。
「古谷さん、田杉さんは飲み過ぎたので帰るそうです」
「え? そうなの?」
「あ、ああ……悪いけど、先に帰るな」
「わかった。部長にも言っておくね」
「僕が家まで送りますから、心配いらないって富田部長に伝えて下さい。ね、田杉さん」
「そ、そうだな……」
「本当? なら、頼むね。僕は行くね。あっちの女子に誘われてたんだ。田杉とは、また同期の飲み会で飲もうね」
「わかった」
古谷を見送ってたっつんと二人きりになる。
「お前……何してんだよ……」
握られている手に視線をやる。
「だって、そこに正親さんの手があったら握るでしょ?」
「握らん!」
バッと手を振り払った。
恥ずかしくて赤くなった顔を誤魔化すようにまた酒を飲んだ。
「正親さん、本当飲み過ぎちゃいますよ? そしたら、僕とイイコトできませんよ?」
「なんだよ……そのイイコトって……」
嬉しそうに俺を見つめるなよ……。
「言わせたいんですか? 正親さんと──」
「わぁかった! わかったから……」
恥ずかしいなぁ……。
「ふふっ。もう帰りましょう。ほら、立って下さい」
たっつんに立たされて、荷物も持たれてしまう。
そのままタクシーに詰め込まれた。
二人きりの車内はなぜか緊張する。
すると、そこで俺のスマホが鳴った。
「知らない番号? 誰だ?」
「知らないなら出なくていいんじゃないですか?」
「取引先だと困る。ちょっと出ていい?」
「いいですよ」
通話ボタンを押して電話に出た。
「はい。田杉です」
『…………』
「もしもし?」
『──マサ』
この声は……。
「ケンちゃん……」
周りの音が全く聞こえなくなった。
隣に座れば、たっつんも俺の隣に座った。
「あ。戻ってきたね。あれ? 白石も一緒だったの?」
「あ、いや! さっきトイレで会って……話した……」
って変な言い訳みたいだ!
「田杉さん、飲みすぎたみたいでフラフラしていたんで心配だったんです」
「ははっ。それ、わかるよ。田杉ってお酒弱いくせに飲みすぎるからね」
「そんな事ない……」
古谷にクスクスと笑われる。
たっつんは、俺より口が上手いな。
営業はそれぐらいできなきゃか……ちょっと悔しい。
「で? 古谷は何か用なのか?」
「なぁーにぃ? 用がなくても一緒に飲んでもいいでしょ?」
「用ないの?」
「富田部長が心配していたんだよ。一人にするなって」
「あの人も本当過保護だよ──なっ⁉︎」
畳の上に置いていた自分の手に別の手の感触がしてギョッとした。
そっと隣を窺えば、たっつんが古谷から見えないように手を重ねていた。
心臓がバクバク言っている。
「田杉って……わかんないの?」
「へ⁉︎ な、何が⁉︎」
「部長も苦労するな……」
たっつんの手の感触に意識が行ってしまって話が頭に入ってこない。
スリッと手を撫でられるとドキドキする。
「古谷さん、田杉さんは飲み過ぎたので帰るそうです」
「え? そうなの?」
「あ、ああ……悪いけど、先に帰るな」
「わかった。部長にも言っておくね」
「僕が家まで送りますから、心配いらないって富田部長に伝えて下さい。ね、田杉さん」
「そ、そうだな……」
「本当? なら、頼むね。僕は行くね。あっちの女子に誘われてたんだ。田杉とは、また同期の飲み会で飲もうね」
「わかった」
古谷を見送ってたっつんと二人きりになる。
「お前……何してんだよ……」
握られている手に視線をやる。
「だって、そこに正親さんの手があったら握るでしょ?」
「握らん!」
バッと手を振り払った。
恥ずかしくて赤くなった顔を誤魔化すようにまた酒を飲んだ。
「正親さん、本当飲み過ぎちゃいますよ? そしたら、僕とイイコトできませんよ?」
「なんだよ……そのイイコトって……」
嬉しそうに俺を見つめるなよ……。
「言わせたいんですか? 正親さんと──」
「わぁかった! わかったから……」
恥ずかしいなぁ……。
「ふふっ。もう帰りましょう。ほら、立って下さい」
たっつんに立たされて、荷物も持たれてしまう。
そのままタクシーに詰め込まれた。
二人きりの車内はなぜか緊張する。
すると、そこで俺のスマホが鳴った。
「知らない番号? 誰だ?」
「知らないなら出なくていいんじゃないですか?」
「取引先だと困る。ちょっと出ていい?」
「いいですよ」
通話ボタンを押して電話に出た。
「はい。田杉です」
『…………』
「もしもし?」
『──マサ』
この声は……。
「ケンちゃん……」
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