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クォーツ島
種族
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日が落ちる頃には風も雨も穏やかになっていた。寺院の敷地内には飛んできた木の葉やキコの実で散らかっている。
島人たちの中にはちらほらと、家に帰る者も現れた。どこか重かった空気もだいぶ和らいできている。
「明日は皆で寺院の掃除だな」と談笑しているのが聞こえる。世話になったのだから自分も参加しようか。いや、早く立ち去った方が良いか、などと考えていると背中をつつかれた。
「ひゃっ!」
濡れる前提の薄い服ということもあり、油断していたせいで飛び上がってしまう。
変な声が出た口を押えて押さえ振り返ると、人差し指を立てていたのはレリスがここまで担いできた丸体型の男性だった。眠いのか、瞼を半分ほど下ろしている。
「ごめん。驚かせたな」
謝りながらもつつこうとしてくるので、バチンと手を叩き落とす。
「いたい……」
「ど、どうしました?」
「おいらもう家に帰るから。また肩を貸しておくれよ」
三十代も過ぎそうな男性が。小さい子が抱っこをねだるように両腕を伸ばしてくる。
中にはこの男性のように、卵の話を振っても全く気にしない者もいる。
「……」
帰りは下り道なんだから転がっていけと言いかけたが、住民たちの神に守ってもらったのだ。このくらいはやっておくべきか。
「いいですよ」
「助かるぜー」
こちらが立ち上がる前に腕を肩に回してくる。よし。あとは行きと同じように運べば……
「これ。旅の人。あまり甘やかすんじゃないよ!」
老婆二人が叱るように唾を飛ばす。
「そいつはすぐだらけるんだからね」
「うるせえぞババア。口出しすんな」
丸体型は負けじと言い返す。
――おっと。女性にそんな口の利き方をする奴に、手は貸せないな。
レリスはパッと身体をずらした。
「ぁうえ?」
支えを失った男性は床にぼすんと倒れ込む。
「な、なに?」
「人に優しくしない者に、俺は優しくしないぞ」
男性は「待って~」と手を伸ばしてくるがレリスは振り返らなかった。おばあさん二人にケツをぺちぺちと叩かれている。反省してくると良い。
「あ」
「おや。あんたも宿に戻るのかい?」
宿の女性とばったり会う。
「避難所に荷車置きっぱなしなんだ。宿まで運んでくれないかい?」
「お安い御用です」
寺院から避難所までの道。並んで階段を下って行く。この女性は卵の話をしたときはギョッとした顔をしていたのに。何事もなかったように接してくれる。
「ところで、あんたがさっき話していた娘たちは? 一緒じゃないのかい?」
「ええ」
「あれ? 兄姉かと思ったんだけど、違うんだ」
レリスは一度だけ瞬きした。仲が良さそうに見えたってことか。
「……」
嫌われちゃったけどな。
適当に頷いておく。
「ええ。さっき知り合ったばかりです」
「へえ。モテるんだねぇ? 女遊びもほどほどにしなよ」
酷い誤解だ。フードから零れ落ちた髪を耳にかける。
「多少モテるくらいですよ」
「はっはっはっ! 正直だねー。良いよぉ? そういう子」
宿の女性の後ろで顔を覆う。さっきからなんでこんな恥ずかしいことばっか言っているのだろうか。謙遜するよりかは人が踏み込んでこないため、良い作戦なのだがレリスのメンタルと合っていなかった。
「ところで。うちの宿で何泊予定だい?」
ぱっと両手を下ろす。
「今夜一晩。朝になれば出発します」
「お土産は買ったのかい? 宿にいいクォンツ酒がいくつか置いてあるから、買っていきなよ」
無駄遣いはさけるべきなのだが酒は美味しかった。酒ならロッドも飲めるので悪い買い物ではないはずだ。
「ありがとうございます」
「いいっていいって!」
置きっぱなしでも無事だった荷車を引いて宿に戻る頃には、夜空に星が輝いていた。
坂道を下り終えると見えてくる現状。
「あちゃー。扉を塞いでないと良いけど」
窓は板が打ち付けてあり室内は汚れていなかったが、宿の前の道もゴミやら木の枝やらで少々危険な状態だ。人間だけなら隙間に足を置いて通れそうだが、荷車は通らないだろう。
「仕方ないね。荷車は隣の家にでも置かせてもらって……」
「あの。この荷車に乗ってください」
「へ?」
レリスはしゃがむと荷車の底に手のひらを添える。彼が立ち上がると、荷車の車輪が地面から浮いた。
「……」
大荷物の、いやそもそも荷車だけでも人が一人で持ち上げられる重量ではないのに、それを片手で持ち上げ平然としている。
「あ、あんた。人間じゃないのかい……?」
例えばレリスが魚人であればこの怪力にも驚かないが、顔は見えにくいとはいえ彼は……どれだけ眺めても人間だ。ウロコも水かきも備えてはいない。
レリスは気にせず質問にも答えず荷車を地面に下ろす。
「じゃ、乗ってください。足を怪我したら大変だ。俺が、運びます」
「……」
言葉も無いようだったが、ぽかんとしながらも女性は荷台の隅に乗っかってくれた。
「掴まっててくださいね?」
「う、うん」
彼女がしっかりと縛られている荷物を掴んだことを確認すると、荷車を担ぎ上げ軽々跳び上がった。
ぽーんと屋根を越え、木の枝やゴミが密集した地帯を跳び越え、宿の敷地内に着地した。荷車に衝撃がいかないように腕をバネ代わりにして受け流す。
敷地を取り囲むように植えられている低木のおかげで、敷地内は比較的きれいだ。芝生も手入れされていて踏んでいて踏んだ時の音が気持ち良い。ここなら裸足の人が歩いても怪我はしないだろう。
荷車を下ろす前に女性が飛び降りた。
「いや! すごいね。あんた何? 人間じゃなかったのかい? なんの種族さ」
興味津々に訊ねてくる。
多種多様な種族が存在するが、陸地で二~三番目に数が多いのは人間と言う種族だ。これはすごい事で。獣人の中で無限増殖する鼠族や、適応力がずば抜けている虫人と肩を並べているのだ。
陸に上がってきたばかりの魚人や水中生物たちがよく「え? なんで?」という顔をしている。
年中子どもをつくれるとはいえ、一度に何人もポコポコ産めるわけでもない。
それに、非力だ。扱いを間違えれば、獣人たちがノリツッコミ(殴っただけ)で死んでしまう危険がある。陸地や陸地生物のことをよく知らない彼らが驚くのもむべなるかな。
「人」や「人族」などと呼んだりもするが、一般的には「人間」で通っている。数は多いが、強さでは下から数えた方が早い。そのためどっかの海龍ほど露骨ではなくとも、他種族から下に見られがちとなる。
そんな人間に親切に接してくれる種族は貴重だ。女性が気になるのも無理はないだろう。
レリスは慎重に荷車を置いた。
「俺は人間ですよ」
「嘘おっしゃい! そんな……人間がこんなこと出来るはずないだろう」
「この宿って夜食は出るんですか? お腹空きました」
「……」
空腹を訴えると宿の女性がピタリと止まる。脳内で「好奇心」と「仕事」の天秤が競り合っているのだろう。やがて天秤は仕事に傾いたようだ。表は封鎖されているため裏口から入る。
「しょうがないね……。荷車を運んでくれたから、夜食代はサービスしてあげるよ。ほい」
小雨とはいえ結構濡れたので、女性がタオルを投げ渡してくれる。
「ありがとうございます」
「すぐ作るから、部屋で休んでな」
「ええ」
フードや二の腕を拭きながら宿に入る。寺院と同じく板張りの床。歩くと少々不安になる音を立てるが、建物自体は頑丈そうだ。お洒落な置物などは無く、天井から下げられた野菜やら生活用品が多数。民家を改造した宿屋のようだった。
こぢんまりしていて落ち着く。
「部屋は二階の一番奥ね」
「はい」
これまた放り投げられた鍵を片手でキャッチし、階段を上がろうとしたら襟首を掴まれた。
「え?」
「忘れてた! 荷車の荷ほどき手伝ってくれる? 荷物も運んでちょうだい!」
「え、ええ?」
人手が足りないのか種族を誤魔化した腹いせか(誤魔化してない)。あれこれこき使われ、夜食を食べ終えて部屋に入れた頃には海を月が照らしていた。
寝台に倒れ込む。
「つっかれた……」
やわらかなベッドではなかったようで、鼻先が痛かったがもうどうでもいい。横になりたい。
ごろりと寝返りを打ち、天井を見上げる。フードが外れ、銀髪をかき分けて伸びる長い耳が露わになった。
レリスが隠しているのは瞳ではなく、いや瞳もだが、本命はこの尖った耳。
「はあ……。人間の耳じゃないよなぁ」
小船の姉妹や宿の女性の耳を思い浮かべ、指で自分の耳先を弄る。
これのせいで別の種族に間違われる。フードで隠しても次は身体能力が人間ではないと言われた。今まで面倒ごとが起こっても海に逃げればいいやというスタンス……つまり調整をサボっていたのでいい塩梅が分からずじまいだ。
自業自得すぎて笑えてくる。
瞳はまだ良い。「見る者が見れば」一発で分かるが、それ以外なら「変わった目だね」という感想で終わる。が、尖った耳は誰もが知っている妖精や精霊の特徴だ。
平和な旅をしたいのに、ちょっと顔のパーツが邪魔過ぎる。
――いっそお面でも被るか?
(……駄目だな)
自分でも「名案!」と思ったが、駄目だ。波で殴られ紛失する。海で物を失くせば一生見つからない。
(ロッドが探してくれるわけないし)
手の甲でシーツを撫でる。固い。
寝心地が良くないのか、何度も寝返りを繰り返す。あのふかふか龍のベッドに身体が慣れたのか、ふわふわ具合が物足りない。
「んう~」
我慢するように枕を抱き締め、なんとか眠りに落ちた。
日が落ちる頃には風も雨も穏やかになっていた。寺院の敷地内には飛んできた木の葉やキコの実で散らかっている。
島人たちの中にはちらほらと、家に帰る者も現れた。どこか重かった空気もだいぶ和らいできている。
「明日は皆で寺院の掃除だな」と談笑しているのが聞こえる。世話になったのだから自分も参加しようか。いや、早く立ち去った方が良いか、などと考えていると背中をつつかれた。
「ひゃっ!」
濡れる前提の薄い服ということもあり、油断していたせいで飛び上がってしまう。
変な声が出た口を押えて押さえ振り返ると、人差し指を立てていたのはレリスがここまで担いできた丸体型の男性だった。眠いのか、瞼を半分ほど下ろしている。
「ごめん。驚かせたな」
謝りながらもつつこうとしてくるので、バチンと手を叩き落とす。
「いたい……」
「ど、どうしました?」
「おいらもう家に帰るから。また肩を貸しておくれよ」
三十代も過ぎそうな男性が。小さい子が抱っこをねだるように両腕を伸ばしてくる。
中にはこの男性のように、卵の話を振っても全く気にしない者もいる。
「……」
帰りは下り道なんだから転がっていけと言いかけたが、住民たちの神に守ってもらったのだ。このくらいはやっておくべきか。
「いいですよ」
「助かるぜー」
こちらが立ち上がる前に腕を肩に回してくる。よし。あとは行きと同じように運べば……
「これ。旅の人。あまり甘やかすんじゃないよ!」
老婆二人が叱るように唾を飛ばす。
「そいつはすぐだらけるんだからね」
「うるせえぞババア。口出しすんな」
丸体型は負けじと言い返す。
――おっと。女性にそんな口の利き方をする奴に、手は貸せないな。
レリスはパッと身体をずらした。
「ぁうえ?」
支えを失った男性は床にぼすんと倒れ込む。
「な、なに?」
「人に優しくしない者に、俺は優しくしないぞ」
男性は「待って~」と手を伸ばしてくるがレリスは振り返らなかった。おばあさん二人にケツをぺちぺちと叩かれている。反省してくると良い。
「あ」
「おや。あんたも宿に戻るのかい?」
宿の女性とばったり会う。
「避難所に荷車置きっぱなしなんだ。宿まで運んでくれないかい?」
「お安い御用です」
寺院から避難所までの道。並んで階段を下って行く。この女性は卵の話をしたときはギョッとした顔をしていたのに。何事もなかったように接してくれる。
「ところで、あんたがさっき話していた娘たちは? 一緒じゃないのかい?」
「ええ」
「あれ? 兄姉かと思ったんだけど、違うんだ」
レリスは一度だけ瞬きした。仲が良さそうに見えたってことか。
「……」
嫌われちゃったけどな。
適当に頷いておく。
「ええ。さっき知り合ったばかりです」
「へえ。モテるんだねぇ? 女遊びもほどほどにしなよ」
酷い誤解だ。フードから零れ落ちた髪を耳にかける。
「多少モテるくらいですよ」
「はっはっはっ! 正直だねー。良いよぉ? そういう子」
宿の女性の後ろで顔を覆う。さっきからなんでこんな恥ずかしいことばっか言っているのだろうか。謙遜するよりかは人が踏み込んでこないため、良い作戦なのだがレリスのメンタルと合っていなかった。
「ところで。うちの宿で何泊予定だい?」
ぱっと両手を下ろす。
「今夜一晩。朝になれば出発します」
「お土産は買ったのかい? 宿にいいクォンツ酒がいくつか置いてあるから、買っていきなよ」
無駄遣いはさけるべきなのだが酒は美味しかった。酒ならロッドも飲めるので悪い買い物ではないはずだ。
「ありがとうございます」
「いいっていいって!」
置きっぱなしでも無事だった荷車を引いて宿に戻る頃には、夜空に星が輝いていた。
坂道を下り終えると見えてくる現状。
「あちゃー。扉を塞いでないと良いけど」
窓は板が打ち付けてあり室内は汚れていなかったが、宿の前の道もゴミやら木の枝やらで少々危険な状態だ。人間だけなら隙間に足を置いて通れそうだが、荷車は通らないだろう。
「仕方ないね。荷車は隣の家にでも置かせてもらって……」
「あの。この荷車に乗ってください」
「へ?」
レリスはしゃがむと荷車の底に手のひらを添える。彼が立ち上がると、荷車の車輪が地面から浮いた。
「……」
大荷物の、いやそもそも荷車だけでも人が一人で持ち上げられる重量ではないのに、それを片手で持ち上げ平然としている。
「あ、あんた。人間じゃないのかい……?」
例えばレリスが魚人であればこの怪力にも驚かないが、顔は見えにくいとはいえ彼は……どれだけ眺めても人間だ。ウロコも水かきも備えてはいない。
レリスは気にせず質問にも答えず荷車を地面に下ろす。
「じゃ、乗ってください。足を怪我したら大変だ。俺が、運びます」
「……」
言葉も無いようだったが、ぽかんとしながらも女性は荷台の隅に乗っかってくれた。
「掴まっててくださいね?」
「う、うん」
彼女がしっかりと縛られている荷物を掴んだことを確認すると、荷車を担ぎ上げ軽々跳び上がった。
ぽーんと屋根を越え、木の枝やゴミが密集した地帯を跳び越え、宿の敷地内に着地した。荷車に衝撃がいかないように腕をバネ代わりにして受け流す。
敷地を取り囲むように植えられている低木のおかげで、敷地内は比較的きれいだ。芝生も手入れされていて踏んでいて踏んだ時の音が気持ち良い。ここなら裸足の人が歩いても怪我はしないだろう。
荷車を下ろす前に女性が飛び降りた。
「いや! すごいね。あんた何? 人間じゃなかったのかい? なんの種族さ」
興味津々に訊ねてくる。
多種多様な種族が存在するが、陸地で二~三番目に数が多いのは人間と言う種族だ。これはすごい事で。獣人の中で無限増殖する鼠族や、適応力がずば抜けている虫人と肩を並べているのだ。
陸に上がってきたばかりの魚人や水中生物たちがよく「え? なんで?」という顔をしている。
年中子どもをつくれるとはいえ、一度に何人もポコポコ産めるわけでもない。
それに、非力だ。扱いを間違えれば、獣人たちがノリツッコミ(殴っただけ)で死んでしまう危険がある。陸地や陸地生物のことをよく知らない彼らが驚くのもむべなるかな。
「人」や「人族」などと呼んだりもするが、一般的には「人間」で通っている。数は多いが、強さでは下から数えた方が早い。そのためどっかの海龍ほど露骨ではなくとも、他種族から下に見られがちとなる。
そんな人間に親切に接してくれる種族は貴重だ。女性が気になるのも無理はないだろう。
レリスは慎重に荷車を置いた。
「俺は人間ですよ」
「嘘おっしゃい! そんな……人間がこんなこと出来るはずないだろう」
「この宿って夜食は出るんですか? お腹空きました」
「……」
空腹を訴えると宿の女性がピタリと止まる。脳内で「好奇心」と「仕事」の天秤が競り合っているのだろう。やがて天秤は仕事に傾いたようだ。表は封鎖されているため裏口から入る。
「しょうがないね……。荷車を運んでくれたから、夜食代はサービスしてあげるよ。ほい」
小雨とはいえ結構濡れたので、女性がタオルを投げ渡してくれる。
「ありがとうございます」
「すぐ作るから、部屋で休んでな」
「ええ」
フードや二の腕を拭きながら宿に入る。寺院と同じく板張りの床。歩くと少々不安になる音を立てるが、建物自体は頑丈そうだ。お洒落な置物などは無く、天井から下げられた野菜やら生活用品が多数。民家を改造した宿屋のようだった。
こぢんまりしていて落ち着く。
「部屋は二階の一番奥ね」
「はい」
これまた放り投げられた鍵を片手でキャッチし、階段を上がろうとしたら襟首を掴まれた。
「え?」
「忘れてた! 荷車の荷ほどき手伝ってくれる? 荷物も運んでちょうだい!」
「え、ええ?」
人手が足りないのか種族を誤魔化した腹いせか(誤魔化してない)。あれこれこき使われ、夜食を食べ終えて部屋に入れた頃には海を月が照らしていた。
寝台に倒れ込む。
「つっかれた……」
やわらかなベッドではなかったようで、鼻先が痛かったがもうどうでもいい。横になりたい。
ごろりと寝返りを打ち、天井を見上げる。フードが外れ、銀髪をかき分けて伸びる長い耳が露わになった。
レリスが隠しているのは瞳ではなく、いや瞳もだが、本命はこの尖った耳。
「はあ……。人間の耳じゃないよなぁ」
小船の姉妹や宿の女性の耳を思い浮かべ、指で自分の耳先を弄る。
これのせいで別の種族に間違われる。フードで隠しても次は身体能力が人間ではないと言われた。今まで面倒ごとが起こっても海に逃げればいいやというスタンス……つまり調整をサボっていたのでいい塩梅が分からずじまいだ。
自業自得すぎて笑えてくる。
瞳はまだ良い。「見る者が見れば」一発で分かるが、それ以外なら「変わった目だね」という感想で終わる。が、尖った耳は誰もが知っている妖精や精霊の特徴だ。
平和な旅をしたいのに、ちょっと顔のパーツが邪魔過ぎる。
――いっそお面でも被るか?
(……駄目だな)
自分でも「名案!」と思ったが、駄目だ。波で殴られ紛失する。海で物を失くせば一生見つからない。
(ロッドが探してくれるわけないし)
手の甲でシーツを撫でる。固い。
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