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魔族大戦

第百六十四話 私、領地もらっちゃった②

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「ご主人様、朝でございます」

 えっ、いきなり凛とした女性の声で起こされたので私はびっくりしてしまい、朝の弱い私でも珍しくきちんと目が覚めた。

 見るとレミィが起こしてくれたようだ。

「あっ、そうか、執事はレミィなんだ」
「え、ええ、そうよ、ミサ、じゃなかった、ご主人様。朝の用意はできております。どうぞ」

 テーブルを手の平で示したレミィはきっちりティーセットを準備してくれていた。レオから習っただけあって、完璧だったので私は感激して、

「ふへー、レミィはこういうの得意だったのね」
「ええ、あっそうだ、えっとそうです。朝や、誰かが見ている場合は私は執事としてご主人様に対応させていただきますので、それをご承知願いたいと思います」

「あっ、なるほど、ケジメね。レミィは真面目だから」
「レオも真面目だと思いますが……」

「レオは意外と砕けているからね、でもこういう朝もいいかも。お嬢様気分で」
「なら、お嬢様とお呼びしましょうか?」

「やめてよ照れるじゃない。レミィに言われると。……ちょっと呼んでみて」
「わかりました、お嬢様」

「くううう! いいわあ、カッコいい美少女にお嬢様って言われるの素敵だわ。でもだめ、ご主人様でお願い。私がにやけてしまって、恥ずかしいから」
「かしこまりました、ご主人様」

 と言うやりとりをし、朝食をまったりとったあと、ノックの音がして、誰かと思うと、ミリシアだった。彼女がなぜか黒の軍服でミニスカで入ってきたのでびっくりした。

「えっ、どうしたのミリシア!?」
「ええ、これから家政婦ハウスキーパーとして、ビシバシ働くつもりだから、気合の意味を込めて、自分でデザインして、ナターシャに作ってもらったんだけど、どう?」

「すごく、えっちです……」
「えっ、何聞こえない」

「え、えーと! かっこいいよ、ミリシア!」
「あら、ありがと。レミィも板についてきたみたいだし、私も頑張んなきゃね」

「ミリシア様、貴女もお茶はいかがですか?」

 とレミィが言ったので、気さくにミリシアは答えた。

「ありがと、レミィ、一杯頂くわ」

 と答えて、椅子に座って足を組んだので、白くすらっと伸びた長い脚が、ミニスカから光って見えてほんとにかっこいい。スタイル良いわあ。

 軍服って、スタイル悪い子が着ると、ずんぐりむっくりになっちゃうんだけど、ミリシアみたいにすらっとして、大人の女性のスタイルだとすごいカッコいい。セクスィ……。

 私は感激して新しい朝を堪能した。そのあとミリシアに言われて、メイドたちのブートキャンプの様子を見て欲しいと言われたので、観覧することとなった。

 ミリシアは直立不動となっているメイドたちの前に立ち、すらっと伸びた生足からのハイヒールのかかとを打ち鳴らし、大声でメイドたちに語り掛けた。

「今日からお前たちの上官となる家政婦ハウスキーパーのミリシアだ! お前たちがくだらない中身がなければオチもない井戸ばた会議を始める前に、私に返事するときは最後にマムとつけろ、いいな!」
「YES、マム!」

「私はお前たち変態マゾ奴隷どもをもはや人間として扱うことをしない、お前たちは名もなきメイドだ! 名前を呼んでもらう価値などないただの汚れた雑巾だ。右から貴様は、メイドA、メイドB、メイドC、メイドD、メイドEだ!

 ただの奉仕するだけのマゾどもにはちょうどいいだろう!? そうだろ、貴様ら!」
「YES、マム!」

 
「貴様らにこれから奉仕する悦びを身をもって感じてもらう。家事のことを男はただの無駄な雑務と思っているだろうが、それはただのママのおっぱいから離れられない、童貞へたれ野郎の妄想だ!

 毎日、主人を気持ちよく朝を送り出し、うまい食事を出し、聞き分けのないガキをしつけ、家の汚れを一切消し、家族を守る、立派な職業だ!

 だがほとんどの男どもはそれを評価しない。見てすらいない。しかし、女は見る。しかも減点方式だ。家事に加点などない! すべて完璧でなければ、女の責任にされる。それが主婦だ!

 貴様らにはそれ以上の苦しみを与え続けてやる。しかしこれは虐待ではない、お前たち変態マゾ奴隷どもにはむしろご褒美だ。

 私から放たれる罵詈雑言を気持ちいいと感じるようになったら一人前のメイドだ! 甘えなど許さん! ご主人様にすべてを捧げろ! ご主人様は神だ! 崇めたてまつれ!

 ほうきをご主人様と思って可愛がれ、雑巾をご主人様と思って可愛がれ、新聞紙をご主人様と思って可愛がれ、それが家庭という戦場で生きるための、お前たちを守る武器だ! わかったな!」
「YES、マム!」

 といったミリシアの訓示が続くけど、あれ、私の思っているメイドたちとの暮らしと違う……。まあ、いいか、みんな気合が入っているようだし! 気にしない気にしない。

 私はレオの執務室に領地経営の様子を見に行った。家の者がたくさん彼に相談をして、あれこれ差配をしている。うんうん、やっぱり才能のある子だ。この子はきっと未来の宰相にふさわしい少年だ。

 私の見ている範囲で、経験積ませて、大きくなるよう育てないと。逆源氏物語、じゃないけど、レオにふさわしい教養と知識が吸収できるよう私はサポートしていた。

 レオが私に気づいたようで、私は彼のテーブルの近くに寄った。でも、レオはなんだか私をちょっと気おくれしたように見ている。なんかやらかしたのだろうか、聞いてみよう。

「どうしたのレオ、困っていることがあるの?」
「い、いえ、ミサ様がドレス姿なのをはじめてみたので……」

 ああ、私も女伯となり、立派な女貴族だからそれに恥じないよう、半ば男装していた宰相服からドレス姿に着替えている。最近私のカラダが成長してきたので、髪も伸ばし、肩まで黒髪を垂らしていた。

 そう言えばレオに私が女性らしいとこ見せてなかったなあ。私はからかい半分に聞いてみた。

「あら、気づいてくれたんだ。どう、可愛い?」
「と、とても素敵です、ミサ様」

「ありがと。それで、私の領地はどうなっているかしら?」
「え、ええ。ミサ様に教えてもらった複式簿記ふくしきぼきを家人に徹底させて、ようやく領地財政の全容がわかってきました」

「そうよかったわ。私はネーザン宰相のとき、国王領の州県制を来年度から始めると決めたけど、どうやら、まだ地方では人材教育がちぐはぐみたいね。

 ジャスミンに言って、中央から官僚を派遣するしくみから地方自治に変わる前に、人材教育しないと。宰相府にこもってばかりじゃ実態がわからないから」
「え、えっと、リーガン領の財政の話なんですけど……」

「あら、ごめん、宰相だった癖が抜けなくて。統一宰相府ができるまで私は領地経営しないといけないんだった。で、どうなの、リーガン領は?」

「ええ、とても良好です。人々も気の良い人ばかりでまじめな農民が多く、商業も発達しております。財政状況を見ますか?」
「ええ、資料を頂戴」

 私はレオから財務諸表を渡されて、しばし悩んだ。そして一言。

「どうやら、ここは豊か過ぎて、経済成長が滞っているみたいね」
「えっ!?」

「金の集まる場所なんだけど、豊か過ぎて競争力が弱く、技術発展がまだまだのようね。中央の財務状況と逆の指標を表しているわ」
「ど、どうしてそんなことがわかるんですか!?」

「前年同月比よ。さらにここからさかのぼってみても、経済指標にそれほど変化がない。私が改革をしたあと、戦争で最近まで経済が混乱していたのに、全く反映されていない。

 主要産業のワイン業、および、小麦栽培から考えて、戦争中は特需があってもいいくらいなのに。むしろ豊か過ぎて、民間の競争力が落ちて、この地方内で需要と供給が完結してしまっているみたいね。

 どんなに金があっても流通してなければそれほど価値がない。ただの数字の羅列よ、これじゃあ」
「ど、どうすればいいでしょう?」

「まずは工場誘致のために銀行から借金することから始めた方が良いわね」
「借金ですか!? 黒字なのに!」

「借金はむしろ、土地など固定財産がある業務では信用財産よ。簿記でなんとなくわかるでしょ、そこらへん」
「ま、まあ、ちょっと変わった分け方してましたけど」

「あれは総資産を数字に出すための方法よ。負債も資産になる。それぞれの業務によって概念が変わるからね、借金て。

 で土地を担保にお金を借りて工場を建てて経済を回すと、領地内に借金した分、経済規模が増えることになるわ。その分銀行からお金を受け取ったんだから。

 もちろん、返す当てがなければ破算だけど。でも、こんな真っくろ黒字じゃ逆に人手不足で、需要不足になり、破産しかねないわ。他の領地との競争に負ければ、輸入するようになるから」
「な、なるほど……。経営って奥が深いんですね」

「私が宰相で培ったコネを使って、経済学者や銀行員を集めて開発企業を立ち上げるわ。貴方が中心となって働くのよ。もちろん私が手取り足取り教えてあげるから」
「流石ミサ様。だてに幼女なのに長年宰相をやってるわけじゃないんですね……」

「正味4年半ぐらいよ」
「人生の半分ぐらい宰相やってたなんて……むしろすごすぎですよ」

「まあ、それは確かに。とりあえず、気の利いたやつをこさえてあげるから、領民に周知させておいてね」
「かしこまりました! ご主人様!」

「ふふふ……」

 うん頑張ってるなレオも。良きかな良きかな。さっーて、今度はお客様の出迎えだ。昼頃になると、知らせ通り、私の友達以上恋人未満のテットベリー伯ジェラードが祝いに駆け付けてくれた。

 私は彼を出迎えて、貴族の礼カーテシーをする。彼もそれに応対し、笑いあった。

「女伯、拝領おめでとう。パーティー以外でミサのドレス姿は初めて見るな」
「あら、似合わない?」

「いや、挨拶カーツィが似合う立派なご令嬢レディだ」
「どういたしまして。歓迎の席は用意してあるわ、レミィ、案内してあげて」

「はい、かしこまりました。ご主人様」

 ジェラードは魔族の女執事にびっくりして、気おくれした様子があったけど、百戦錬磨のジェラード様はすぐに貴族らしく堂々とレミィの案内に従う。私は彼を十分に歓待した。

 彼も上機嫌でお付きの者に命じる。

「テスター、例の物を」
「はっ、かしこまりました、伯爵様」

 そう言って、彼は民族文様の絨毯や刺繍を私にプレゼントしてくれた。

「綺麗、とても生地が良くて、繊細な刺繍模様。ねえ、これって」
「ああ、私のテットベリー領の特産品だ。領地は占領されたままだが、職人はこちらに難民として今はレスターにいる。よかったらこれからも世話になるかもしれない」

「なるほど、商売上手ね。最初は無料であげて、それから先は私に買わせようと」
「おいおい、そんな嫌味な言い方はよしてくれ。私の領民たちも必死なのだ、難民として食っていくので。領主としては職人たちは得難いからな、食わせて行かないと」

「確かに。参考になります。伯爵先輩」
「なんだそれは、ははは……」

 そう言って、彼と食事をとった後、ワインをお互い飲みながら私たちは歓談した。

「どう、ジェラード。我が領地のリーガンワインは」
「ふむ、なるほど、コクがあるな」

「正直言っていいよ、古臭いって」
「そういう言い方は……。好きなやつは好きだぞ」

「まあ、そうだから結構、もうけているみたいだけど、正直若い子は飲まないわね、最近いろんなブランドのワインが入ってきているから」
「戦争が起こってたからな、主に無事なのはネーザンぐらいだから、ワイン産業も生き残るため必死なのだろう」

「みたいね。とりあえず、リーガンワインの質の向上と、若い子が飲みやすいよう改良するつもりよ。ネーザンは今若い年齢層が多いから、客の需要に合わせないと」
「すっかり商売人だな、ミサも」

「じゃあ、宰相の話する? テットベリー伯爵」
「ん、どんな話がしたい」

「困っていることがあるのよ、私」
「なんだ、私が答えられるなら、善処しよう」

「戦闘指揮よ。私、従軍経験はあっても、直接部隊を指揮したことないから。統一宰相とはいえ、なるべく前線にいないと、諸外国の手前上示しがつかないわ。後方でぼさっとしていると」
「つまり、統一宰相閣下は戦争を再開するおつもりと? 戦闘指揮は私がおいおい教えればいいが」

「こっちから手出しはしないけど、いずれそうなるでしょうね。半分の国は領地を魔族に抑えられたままだし。国王も死んで交代したところも結構あるから、このまま終わらそうと思っても終わらないもの」
「それは良いが、戦争目標はなんだ。目的は? 前の停戦は実現したぞ。次に何を望む」

「最終的な解決として、人間と魔族との共存共栄よ」
「ふむ、続けてくれ」

「で、私が前回の西部戦線で分かったことだけど、武力で解決するにはいまの十倍以上の規模の軍隊が必要になってくる。でもそんなもの、今の状態じゃ望めそうもないし、何十年もかかる」
「なるほど、なら、発想を変えてみよう。どうすれば魔族があきらめる。もしくは人間側が納得のできる戦争の終わり方ができる?」

「決定的な勝利、魔族の軍事力を大きく割いて、歴史に残る勝利を得る。そのうえでの魔族との交渉」
「ああ、そうだな。現実的だ」

「そのためには魔族軍の強さの重心はどこかってことね」
「なるほど、彼らの力の源泉、もしくは彼らの戦争目標を達成するための必要条件だな」

「ええ。私はこれまで魔族は国を持っていたと思っていたわ。でも実態は違う。ナターシャに聞いたところ、魔族がこの大陸を追い出される前、魔族たちは国を持っていなくて、それぞれの部族で人間たちと共存していたらしいの。

 つまり彼らには国という概念がない。だから魔王エターリアはあっさりチチェスタ―戦で領土を捨てられた。土地にこだわりがないのよ。

 彼らが食うための十分条件。必要条件じゃないわ、領地は。だから彼らから占領地を奪っても解決しない」
「なるほど、良い政治的分析だ。では聞くが、彼らの重心はなんだ? 何に重きを置いている?」

「それは人よ?」
「人?」

「リーダー、つまり、エターリアやヴェルドーのことよ。彼らを従わせる強いリーダーが彼らにとって強みよ。

 魔族軍は命令に従順で規律を重んじる。それは強いリーダーに従い、戦争に勝利するための彼らの民族的方法。なら……」
「魔王を殺すと?」

「逆だわ、エターリアを殺してしまうと、敗戦のあと魔族たちをまとめてくれて、交渉とならずに、魔族の破滅まで絶対的戦争になってしまう。民族浄化なんて愚の骨頂よ。

 そうじゃなくてヴェルドーの方を倒すのよ」
「当初お前が言ってたことだな」

「あの時はぼんやりした女のカンだったけど、今ははっきり言える。魔族が強気でこちらを攻めてこられるのはヴェルドーという猛将がいるせいよ。

 調べたところ崩壊してもおかしくない東部戦線戦場でも魔族は彼の武名を頼りにして勝ち残った。その精神的支柱、ヴェルドーを排除しないと戦争は終わらない」
「だが、前回はそうはならなかった。それをどう分析する?」

「それは私たちはまだ十分に魔族のことを知らなかったってことよ」
「というと?」

「魔王とヴェルドーは実は同盟を結んでいる状態なのよ。お互いを利用できるように。私の分析したところ、ヴェルドーは政治ができない。そこらかしこで略奪をして、彼の軍は補給の危機にひんしていた。

 それを援助していたのが魔王エターリア。大陸西部からの物資をうまく船や陸路を使って、補給してあげて、ヴェルドー軍を維持していた。それで東部戦線を支え、戦線を拡大し、魔族の占領地を増やしている。

 なら答えは簡単、二人を分断すればいいのよ。エターリアを倒してしまうと私たちは詰んでしまう以上、ヴェルドーを孤立化させて、私たちがそれを倒す。

 そのあと、どうなるかは戦況によるけど、エターリア単独では大陸半分も維持できないから、交渉に応じると思うわ。

 それで領地を返還する代わりに魔族との共存共栄関係を育む。条約でね。これが最終的解決よ。つまり戦争目的は魔族との融和、戦争目標はヴェルドーの打倒よ」
「そのための統一軍か……理解できた。お前の思想が」

「そこでなんだけど、陛下にはすでに伝えているけど、ジェラード、貴方、統一内閣府の軍務司令官をやってくれない?」
「いきなりだな。しかし、私は軍務経験があるとはいえ、またネーザン貴族とは言え、元はエジンバラ貴族だぞ、ネーザン貴族が納得するのか?」

「そこらへんは私が何とかするし、ネーザン貴族も大体は政治貴族になっているわ。今じゃ。統一軍を名乗り、諸国を指揮する以上、統一宰相府がネーザンの人材だらけだと、諸侯から不満が出るでしょう。

 そこら辺の政治的配慮も考えてくれるとありがたいわ」
「なるほど、陛下から辞令が出れば、私も断れないか。なら、そのときになったらお前の助けになろう」

「ありがとう、良い話ができたわ」

 そう言ってお互いが握手しあったあと、外に出ると、メイドAに出くわした。私たちを見て礼をしたので、笑顔で返すと、突然、ミリシアがやってきてメイドAを叱りだした。

「メイドA! これはなんだ!」
「え、ほこり……」

 ミリシアは人差し指で、わずかについたほこりを見せてメイドAを叱りつける。

「貴様が掃除した窓の桟に残っていたぞ、これが!」
「な、何ですって!? お、お姉さま、お許しを……」

「謝るくらいならするな! もし、戦場で敵の動作を見逃していたらどうなる!?」
「我がメイド戦隊は全滅です!」

「そうだ、お前のうっかりで、みんなの命がなくなってしまうんだぞ!」
「ああっ!? なんてことなの! 私がみんなを殺してしまうなんて!」

「しかも今回はお客様がいらっしゃるところでこのミスだ! このミスをどうするつもりだ!」
「なんてことを、私は……。どうすればいいですか、ご主人様!?」

「へっ!?」

 キラーパスが来て、私はどうしていいかわからず、ミリシアに向かって、

「とりあえず、許してあげなさいよ、ミリシア……」

 というと、なぜかメイドAが私の意見を否定した。

「そんな、ご主人様! 私は望んでミリシアお姉さまの罵倒を受けているんです! まさか、もう、私を、ご主人様はお見限りですか!?」

 うわーめんどくさい。何だこのメイドのテンションは……。私の表情を見たミリシアはメイドAに言った。

「みろ、ご主人様が、白い目でお前を見ているぞ! お前のことを変態メイドだと思っているぞ!」
「ああ、ご主人様が、幼女が、冷たい目で、私を見下してる……! ──なんて気持ちがいいのかしら! 快感がカラダを駆け巡る! これが、これが、奉仕の、よ・ろ・こ・び……!」

「わかってくれたか! メイドA!」
「はい! ミリシアお姉さまー!」

 そう言って二人は涙ながら抱き合っている。もう勝手にやってください、やばい女子中学生のノリは。私はドン引きしながらも、心の底で何故かくすりと笑ってしまうのだった。
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