悪意には悪意で

12時のトキノカネ

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完結1

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ごめんなさい、殿下。


「気でも狂ったか、ミリアーナ。妄言もそこまでくれば逆に天晴れだな。
王妃に対すのその物言い。それ相応の罰を受ける覚悟はあるのだろうな」

「殿下が王子から引きずり落とされるなんて失礼よ。謝りなさいよ!この性悪」


目を閉じて深呼吸をした後に
ミリは最後の終止符を打つ。

私は貴方の婚約者でしたのに結局、この結果しかもたらせなかった。
最後は貴方の支えとはなれない駄目な女ですわね。

「ねえマリア様。私どもは結局かごの中の鳥なのです。そしてこの学園は監視された箱庭。私どもにプライベートなどなく常に見張られているペットのようなものだって知っておりました?」


急に世間話を始めるようにミリがそれまでの語気を和らげマリアに語りかけた。

殿下はそれをいつも窮屈だと零しておられた。
思い出した思い出にミリは穏やかに笑った。


「私のような高位貴族や殿下のような王族は常に周囲を人で囲まれておりますの。それは生まれたころからで私達は慣れてしまっておりますが、貴方ならきっと息苦しさになれるのは大変でしょうね。
使用人に衛兵、護衛だと常に複数がぞろぞろと後ろに並ぶ。
でもそれだけじゃなく間者や密偵もおりますの。この学園内も例外なく。
貴方の行いも、私の行いもすべては陛下の知るところ。
でも不味いのはそれだけではないということですわ。」


マリアにも分かるようにミリは噛み砕いて説明する。


「一番にまずかったのはここが学園というところでしょうか…。」


ここには大勢の生徒がいる。
ほとんどが貴族だが中には少なからず特待生や豪商の庶民も混ざる。

そんな中で表向きは生徒はみな平等をうたって
この学校は生徒に学問を学ばせている。

王子も、男爵家の令嬢も一緒の授業が受けられる。
だからこそ彼らが出会ったといえるが

忘れてはならないのは他の生徒も同じように彼らの周りにいて
身分の隔たりもなく彼らの行いを見ていたことにある。

多くの生徒のいる学園で殿下率いる取り巻きたちはとても目を引いた。
そしてそこに混じる庶民出の一般生徒。

好機の目にさらされておかしいことはない。

その周囲の目の中で彼らはどのような行いをして
模範となるよう行動してきたか。それが問われる。


「なんなのよっ回りくどいわね」

「殿下達は浮かれてすべての責務も放棄し、あまつさえ一人の女性にかかりきりになり、婚約者をどう扱いましたか?
それは周囲にどのように写ったのでしょう」

「なによ謎かけのつもり?」

「浮かれて周りを見なかった貴方がたを王家は見ておりました。そして国家にとってふさわしくないものとして切り捨てる方針に決まりました。」

その瞬間、王子たちは息を呑みミリの言葉に顔を青ざめさせた。

私たちの知らないところですでに王家もその周辺も動いていた。
結局、女の私は政など知る権利もなく
できたのはせいぜいこの茶番劇を起こすことぐらいでしたわ。

はじめからすべてを知り、揺るがないところで大人たちは粛々と政治を進めていたということです。


「あんたがなんかしたの?王様に告げ口でもしたんでしょ!」


マリアさん、そんなレベルの話ではないのですよ。


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