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第四章 ソルフゲイルの謀略
第61話 『ファタルの子』
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コレットの心を表層意識に戻す為、ミカゲの魂をコレットの中に送り込んだが、セレスとレオルステイルには待つしか無い状態だった。
それにしても・・・と、セレスは一つの疑問を抱いた。
先程の詠唱の中で、レオルステイルがコレットの事を『ファタルの子』と呼んで魔法を発動させていたのだ。
「ねぇ母さん、ちょっと聞くけど、何でコレットの事を『ファタルの子』って呼んでたのさ?コレットは人間だから、この蒼壁の大陸では総称として『蒼き大地の子』と言うのがこの辺では正しい呼び方だと思うんだけど?」
セレスの問いかけに、うんうんと首を縦に振りながら聞いていたレオルステイルは、すぐに回答を話し出す。
「実はなセレス、この子の事は最初に会った時から観察していたのじゃがな、多分と言うか高確率でこの子は普通の人間では無いのじゃよ。」
そう言って、服のポケットから乾燥した世界樹の葉を取り出す。
「この世界樹の葉は、強力な魔力とマナの集合体でもある。普通の人間が口にすれば、生命力が活性化し過ぎて身体の中の魔力が反転する可能性もある、人間にとっては使い方次第では紙一重の素材なのじゃ。所がコレットは、世界樹の葉のお茶を飲んでも何ともなかった。儂ら高位のエルフ以上の存在ならばなんて事の無い緑茶の様な感覚で飲める茶じゃがの、人間のコレットには本来ならば何かしらの異変が生じてもおかしくは無かったのじゃ。しかし・・・」
「しかし?」
急かすセレスを手のひらで制して、「まぁ、待て」と一言言うと、レオルステイルは今度はその世界樹の葉に向かって小さく詠唱をした後、飴玉の様なものを作った。
そして、その飴玉を口の中にポイっと放り込む。
「久しぶりにたくさん喋り過ぎてるからの、のど飴的なモノじゃ。お前にも作れるじゃろうて。」
そう言ってまたポケットから乾燥した世界樹の葉を出そうとする。
「葉っぱはこの際どーでもイイよ、アタシは、コレットがどうして『ファタルの子』と呼ばれるのか、その理由が知りたいだけなんだ!」
セレスの剣幕に少し驚いたレオルステイルは、
「分かった分かった。じゃ続きを話すぞ。」
と言って、世界樹の葉を仕舞う。
「何故『ファタルの子』なのか?と言う疑問の回答をまず話そう。実はあの子は、アリエルシアの直系の子孫なのじゃ。コレットの家の家系がそうなのか?と思って調べてみたが違う。どうやらこの子は、どこかしらのタイミングであの家に紛れ込まされた可能性が高いと、儂は考えておる。つまり『ファタル』とは、古代語で神族を意味する言葉なので、その子供であるコレットは『ファタルの子』と言う事になる訳じゃ。」
サラリと、レオルステイルは凄い事を言った事だけは間違い無かった。
ええ?神族?
セレスは自分の頭の中がまたグルグル混乱して行くのだけが分かった。
どうにもセレスは、突拍子もない事実を突きつけられたり、自分の許容範囲を超えた現実や魔法を目の当たりにすると、頭の中が自分の意思でコントロール出来なくなってしまうのだ。
コレットと最初に出会ったあの日から、作戦決行の直前までのコレットとの会話や仕草、態度や言葉に至るまで色々と思い出してはみたモノの、どこにも神族らしき空気も雰囲気も醸し出して居なかった事だけは分かった。
目の前で、自分の娘が何やら思考をグルグルこねくり回し過ぎて混乱しているさまを見つめていたレオルステイルは、
「ソラ殿から逐一報告は聞いていたが、お主は本当に気性が慌ただしいヤツよの。もう少し肝を据えて考えるのじゃ。思考は頭だけでは無く腹でも考えられるのじゃ。そもそも魔力は頭よりも腹から出て来るモノじゃからの。」
そう言って、頭を抱えるセレスの頭をグリグリとこねくり回した。
「母さ~ん!」
「何歳になっても子供は、いつまで経っても子供のままじゃの。」
微笑みながら更に髪をもじゃもじゃにした。
髪をもじゃもじゃにされまくった所でやっとこ手が止まったレオルステイルは、何かを思い出したようにポンと手を叩いた。
「そうか、分かったぞ。あのコレットの家にアリエルシアの弓があった理由は、コレットがあの家に来た時に齎されたものなのじゃろう。いつの年代にコレットが来たのかは不明じゃが、『ファタルの子』たるコレットなら、無意識下で自身の置かれている状況を自身に有利な方向へ傾けることも可能だった筈じゃ。しかも最初にあの家に来た時はまだ、『ファタルの子』としての意識も十分に残っており、メルヴィレッジでもそこそこ地位の高いあの家の住民を上手く自分の立ち位置を維持するために使っていたに違いない。と、儂は仮説を立てているのじゃが。」
言い終わったレオルステイルは、横に座るセレスの顔をマジマジと見つめた。
そして、
「どうじゃ!儂の仮説は?お前にはチリ一つも思い浮かばなかった事じゃろう?」
と、得意げに胸を張った。
セレスの方はと言うと、散々もじゃもじゃにされた頭をそのままにして、レオルステイルの仮説に頷くしかない状態になっていた。
「ほうほう、流石!稀代の世果樹の守護者!頭の中カサカサのアタシには考えもつかなかったよ・・・・」
と言って、膝を抱えた。
「本当に、それだけか?」
レオルステイルの問いかけに、膝を抱えたままセレスは、
「もしこれが本当なら、コレットが追われていた理由は別にある。」
セレスは、最初にコレットに会った日の事を思い出していた。
あの日、本当に嵌められただけの理由で追われていたのか?
それとも、『ファタルの子』だから追われていたのか?
真実は、更に深い闇の中から探し出さなければならなくなりそうだった。
それにしても・・・と、セレスは一つの疑問を抱いた。
先程の詠唱の中で、レオルステイルがコレットの事を『ファタルの子』と呼んで魔法を発動させていたのだ。
「ねぇ母さん、ちょっと聞くけど、何でコレットの事を『ファタルの子』って呼んでたのさ?コレットは人間だから、この蒼壁の大陸では総称として『蒼き大地の子』と言うのがこの辺では正しい呼び方だと思うんだけど?」
セレスの問いかけに、うんうんと首を縦に振りながら聞いていたレオルステイルは、すぐに回答を話し出す。
「実はなセレス、この子の事は最初に会った時から観察していたのじゃがな、多分と言うか高確率でこの子は普通の人間では無いのじゃよ。」
そう言って、服のポケットから乾燥した世界樹の葉を取り出す。
「この世界樹の葉は、強力な魔力とマナの集合体でもある。普通の人間が口にすれば、生命力が活性化し過ぎて身体の中の魔力が反転する可能性もある、人間にとっては使い方次第では紙一重の素材なのじゃ。所がコレットは、世界樹の葉のお茶を飲んでも何ともなかった。儂ら高位のエルフ以上の存在ならばなんて事の無い緑茶の様な感覚で飲める茶じゃがの、人間のコレットには本来ならば何かしらの異変が生じてもおかしくは無かったのじゃ。しかし・・・」
「しかし?」
急かすセレスを手のひらで制して、「まぁ、待て」と一言言うと、レオルステイルは今度はその世界樹の葉に向かって小さく詠唱をした後、飴玉の様なものを作った。
そして、その飴玉を口の中にポイっと放り込む。
「久しぶりにたくさん喋り過ぎてるからの、のど飴的なモノじゃ。お前にも作れるじゃろうて。」
そう言ってまたポケットから乾燥した世界樹の葉を出そうとする。
「葉っぱはこの際どーでもイイよ、アタシは、コレットがどうして『ファタルの子』と呼ばれるのか、その理由が知りたいだけなんだ!」
セレスの剣幕に少し驚いたレオルステイルは、
「分かった分かった。じゃ続きを話すぞ。」
と言って、世界樹の葉を仕舞う。
「何故『ファタルの子』なのか?と言う疑問の回答をまず話そう。実はあの子は、アリエルシアの直系の子孫なのじゃ。コレットの家の家系がそうなのか?と思って調べてみたが違う。どうやらこの子は、どこかしらのタイミングであの家に紛れ込まされた可能性が高いと、儂は考えておる。つまり『ファタル』とは、古代語で神族を意味する言葉なので、その子供であるコレットは『ファタルの子』と言う事になる訳じゃ。」
サラリと、レオルステイルは凄い事を言った事だけは間違い無かった。
ええ?神族?
セレスは自分の頭の中がまたグルグル混乱して行くのだけが分かった。
どうにもセレスは、突拍子もない事実を突きつけられたり、自分の許容範囲を超えた現実や魔法を目の当たりにすると、頭の中が自分の意思でコントロール出来なくなってしまうのだ。
コレットと最初に出会ったあの日から、作戦決行の直前までのコレットとの会話や仕草、態度や言葉に至るまで色々と思い出してはみたモノの、どこにも神族らしき空気も雰囲気も醸し出して居なかった事だけは分かった。
目の前で、自分の娘が何やら思考をグルグルこねくり回し過ぎて混乱しているさまを見つめていたレオルステイルは、
「ソラ殿から逐一報告は聞いていたが、お主は本当に気性が慌ただしいヤツよの。もう少し肝を据えて考えるのじゃ。思考は頭だけでは無く腹でも考えられるのじゃ。そもそも魔力は頭よりも腹から出て来るモノじゃからの。」
そう言って、頭を抱えるセレスの頭をグリグリとこねくり回した。
「母さ~ん!」
「何歳になっても子供は、いつまで経っても子供のままじゃの。」
微笑みながら更に髪をもじゃもじゃにした。
髪をもじゃもじゃにされまくった所でやっとこ手が止まったレオルステイルは、何かを思い出したようにポンと手を叩いた。
「そうか、分かったぞ。あのコレットの家にアリエルシアの弓があった理由は、コレットがあの家に来た時に齎されたものなのじゃろう。いつの年代にコレットが来たのかは不明じゃが、『ファタルの子』たるコレットなら、無意識下で自身の置かれている状況を自身に有利な方向へ傾けることも可能だった筈じゃ。しかも最初にあの家に来た時はまだ、『ファタルの子』としての意識も十分に残っており、メルヴィレッジでもそこそこ地位の高いあの家の住民を上手く自分の立ち位置を維持するために使っていたに違いない。と、儂は仮説を立てているのじゃが。」
言い終わったレオルステイルは、横に座るセレスの顔をマジマジと見つめた。
そして、
「どうじゃ!儂の仮説は?お前にはチリ一つも思い浮かばなかった事じゃろう?」
と、得意げに胸を張った。
セレスの方はと言うと、散々もじゃもじゃにされた頭をそのままにして、レオルステイルの仮説に頷くしかない状態になっていた。
「ほうほう、流石!稀代の世果樹の守護者!頭の中カサカサのアタシには考えもつかなかったよ・・・・」
と言って、膝を抱えた。
「本当に、それだけか?」
レオルステイルの問いかけに、膝を抱えたままセレスは、
「もしこれが本当なら、コレットが追われていた理由は別にある。」
セレスは、最初にコレットに会った日の事を思い出していた。
あの日、本当に嵌められただけの理由で追われていたのか?
それとも、『ファタルの子』だから追われていたのか?
真実は、更に深い闇の中から探し出さなければならなくなりそうだった。
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