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5巻
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しおりを挟む1 朝飯を食らう女達 竜に備え始める男達
輝く朝焼けに包まれたケンイチの牧場。その中にある女子寮の扉がパッと開いた。窓に目をやったイツカは、まぶしそうに目を細め、両手を振り上げて大きく体を伸ばす。
「ふっ、んー!」
声とともに、体のそこかしこからポキポキと音がする。凝り固まった箇所が伸びていく感覚が気持ちよく、重い頭が少しだけハッキリしてきた。
そして一気に脱力。
「本格的にやばくなったらキョウジくんに頼もっかな」
キョウジの能力を使えば、体の不調は一瞬で治療してもらえる。
けれど、イツカ的にはそれは最後の手段にしたかった。
体を治療するついでに、毒素、つまり、アルコールまで抜かれるからだ。
体に悪いから、というのがキョウジの言い分だが、イツカとしてはアルコールが体内にない方が調子が出ない。
イツカにとってアルコールとは、生きるのに必要なアミノ酸とか酸素に近いものなのである。
まあ、もちろん実際には気持ちの問題であって、なくなったところで死にはしないのだが。
「さて。そんなことよりご飯をもらいにいきましょーかねぇー」
そう言うと、イツカはのんびりとした足取りで、寮内にある食堂へ向かう。朝食を調達するためだ。
ガッツリ食わないと、まともに仕事なんてできない。
そんなケンイチの方針により、牧場の従業員には無料で食事が提供されている。
イツカも一応従業員なので、タダ飯にありつけるのだ。
牧場の従業員が暮らしている寮なだけあって、住民達の朝はすこぶる早い。日が昇る前には起き出し、家畜の世話をしなければならないからだ。
まだ朝焼けがまぶしい時間帯だが、もう朝食の準備はできているだろう。
イツカが食堂に入ると、すでに朝食を食べている女性従業員が何人も居た。食器を下げて、小走りで外へ向かう者もいる。おそらく、家畜の世話をしに行くのだろう。配膳口の前まで来ると、厨房で働く女性従業員がイツカに気がついて挨拶をしてきた。
「あ、イツカさん。おはようございます」
「おっはよー。朝ごはん、よろしくねー」
イツカはひらひらと手を振って、にへらっと笑って答える。
従業員は、すぐにトレイに食器を並べ、料理を盛り付けていく。そして出来上がった二つのトレイを、イツカの前に置いた。
礼を言って、イツカはそれぞれ片手で持ち上げる。
「よく片手で一食分持てますよね。そこそこ重たいのに」
「うちの親戚がレストランやってて、ウェイトレスやらされたことあってねー。このトレイなら五つまでいけるよ」
「おー、意外な特技ですね」
驚いている女性従業員にドヤ顔を決めて、イツカはトレイを持ったまま自室へ戻って行く。ほかの従業員は食堂で食べるのだが、イツカだけは毎回別の場所で食べていた。
部屋の前に来ると、イツカは器用にドアを開け、中に向かって声をかける。ドアノブに足をひっかけて回す姿は器用そうではあるが、行儀はすこぶる悪い。
「ただいまー。ジャビコ、転移トラップの準備ヨロシコ」
「お帰りなさい。分かりました、少々お待ちください」
そうは言うものの、大して時間はいらなかったらしい。ものの数秒で、再び言葉を発する。
「準備が整いました。いつでも転移できます」
部屋の中央付近に浮いた黒い球体、ジャビコの返事に、イツカは満足気な様子で頷く。
ジャビコはイツカの能力の外部装置だ。様々な面でイツカを補佐している。
「ほんとすぐ準備終わるよねいつも。ちょーはやぁーい。さ、妖精さん達ー。お家帰るよー」
イツカの声に反応したのは、部屋の中を飛び回っていた妖精達である。彼らは昼夜問わず発光しているため、よく照明代わりにされていた。普段は牧場地下のダンジョンに置いてあるのだが、夜通し作業をするイツカがここに連れて来ていた。
妖精達は一斉にイツカに近づき、ポケットや服の中に入っていく。そうしていると、転移トラップで一緒に転送できるからだ。
人間が手に持っていたり身に着けていたりすると、生き物でも持ち物と認識されるらしい。
ジャビコも空中を漂い、イツカの近くへとやって来る。
イツカはその上に片肘を置いて、欠伸を噛み殺した。
「あー。ねっむ。メシ食ったら寝よっと。ジャビコ、やって」
「分かりました。転送します」
次の瞬間、イツカの体が光に包まれ、一瞬で別の場所に転送される。
そこは、牧場地下ダンジョンの牢獄地帯にある、「ケンイチ牧場さわやか地下監獄」と命名されたムツキの部屋だ。
「ちーっす。おつかれーっす」
牢獄の前で詰めている数名の兵士に、イツカは挨拶をする。ロックハンマー侯爵が送ってきた兵士達だ。
「おはようございます、イツカさん。今開けます」
「ありがとうございまーす。あ、もうゴハン食べました? 昨日ケンイチさんが海行ったから、今日焼き魚定食ありましたよ」
「おお、ホントですか!? いやぁー、俺、農村出身なんで。海の魚なんて地下監獄に来て初めて食べましたよ」
「ドイナカだけど、食べ物だけは充実してますからねー」
世間話をしつつ鉄の扉を潜ると、左右に戦闘用ゴーレムの姿があった。
イツカが近づいて行くと、ゴーレムは敬礼の姿勢を取る。
次の鉄扉は独りでに開き、イツカが通った後は静かに閉まっていく。実はこの扉も、ゴーレムなのだ。同じような扉をもう一度通過すると、そこには鉄格子を嵌められた、牢屋があった。
いろいろと事情があり、ここに来るまでの警備は以前よりも厳重になっている。とはいえ、イツカにとってみれば自分の庭のようなものだ。
鉄格子の間から、にょっきりと二本の腕が出てきた。その僅かな隙間から、中に居る人間の顔の一部が覗く。
「あ、イツカさん。おはようございます!」
「ちゅーっす。はやいねぇ、ムツキちゃんも。はい、朝飯」
「ありがとうございまーす」
ムツキの牢屋の中にトレイを入れると、イツカは近くにある食卓に腰をかけた。
使い勝手の良さそうなキッチンも用意されているが、それはもっぱら酒のつまみを作るのに使われている。
「じゃ、いただきまーす」
「いただきますー」
イツカとムツキは手を合わせると、鉄格子を挟んで食事を食べ始める。ここ最近、二人は一緒に朝食を取るようになっていた。性格は多少違うものの、二人は気が合うようなのだ。
「あ、そういえば。ナナナちゃんが隣の部屋に来るのって、明日でしたっけ?」
「牢屋を部屋って言うのもどうかと思うけど。そうよー」
思い出したように言うムツキに、イツカは頷いてみせる。
「懲役の年数も決まったみたいだし」
ナナナというのは、数ヵ月前にいざこざを起こした日本人だ。隣国の兵士と共に、ハンス達の国の領海に巨大人工浮島を浮かべて魔石採掘をしていたのである。なんやかんやあってハンスと日本人が捕まえたのだが、その身柄は今ロックハンマー侯爵に預けられていた。だが、彼女への罰が決まったのは、ここ最近だった。今までに事例のないことばかりやらかしたため、どう扱えばいいか判断がつかなかったからだ。
「まあ、そりゃいきなり変な能力持った変なヤツが、海に変なもの浮かべて変なことしてるんですもんね。どうすればいいか分からなくて当たり前ですよ!」
「うん。私達が言えた義理じゃないけどね」
イツカはともかく、ムツキに至っては犯罪者だ。しかも大貴族に魔法をぶっ放した、大罪人である。
「一緒に居た人達、結局何も喋らなかったんでしたっけ?」
「そーみたいよ。まあ、ロックハンマー侯爵お抱えの尋問官の人が全部洗いざらい調べ上げたみたいだけど」
一緒に居た人達、というのは、ナナナを護衛していた女兵士達のことだ。
捕まった後、彼女達は黙秘か、あるいは「自分達は海賊だ」などといった明らかに事実とは異なる証言を繰り返していたのだという。
そこで、ロックハンマー侯爵が信頼を寄せている尋問官が呼ばれたらしい。
「しかし、尋問官の手持ち魔法が『相手の表層意識を読める』ってどうなのよ。無敵じゃん」
「私の能力だと再現できませんでしたから、多分特殊な魔法なんでしょうねー」
しみじみとした様子で、ムツキは腕を組んだ。
イツカの言うように、「相手の表層意識を読める」のだから、無言を貫こうが嘘をつこうが、まったく意味はない。女性兵士達の素性も目的も、ロックハンマー侯爵はすっかり把握できていた。
とはいえ、末端の兵士が知っていることなど高が知れている。
「結局、分かったのってあの人達が隣国の兵隊さんで、でっかい人工の浮島作って魔石を掘ってたってことだけなんでしたよね?」
「みたいよー。まあ、全容が分かっても、私らが教えてもらえることなんてごく一部でしょうけどねー」
「キョウジ先生もあんまり詳しい話、聞いてないって言ってましたよ。でも、あの人の場合わざと聞かないのかもしれませんけど」
「ビビリだからねぇー。知らない方が心の安寧も保てるし、情報を持ってない方が安全だと思ってるんだろううね」
「今更ですよねー」
ナナナからの事情聴取も終わっていた。
彼女の刑期は、五年。
取り立てて抵抗をしなかったということもあり、罪状は魔石の盗掘だけということになったらしい。
「でも、なんで尋問官はナナナちゃんには『相手の表層意識を読める』魔法、使わなかったんですかね?」
考え込むような仕草で、ムツキは首を捻った。
「ロックハンマー侯爵が、その手の魔法を使って何か反動があったら怖いから、ってやめさせたらしいのよねー。ハンスさんも、やめた方が無難だろうって進言したんだって」
「そうなんですかー」
基本的に牢獄から出られないムツキだが、外の事情にはそれなりに明るかった。よくこの場所に人が出入りするためである。イツカが自分用に改造し、牢獄内部は無闇に居心地がいい空間だった。そのせいか、キョウジやらミツバやらが入り浸っているのだ。当然、イツカ自身も毎日のように顔を出していた。
「まぁー、あれだぁーねぇー。ロックハンマー侯爵の方は、ナナナちゃんの能力を警戒して、手の内を見せないようにしようとしたんだろうけど。ハンスさんはねぇ」
「お人好しですよね。もちろん、いろいろ考えてのことなんでしょうけど」
ムツキは訳知り顔でおもむろに腕を組んだ。
「私のことも結構気にしてくれてるんですよ。それにキョウジ先生とかイツカさんにも声かけてくれてるみたいですし」
「気にかけてやってくれって言われてるねー。あの人は苦労するよ、ずーっと。今日もなんか呼ばれてるみたいだし」
今日この後、ハンスはロックハンマー侯爵の領主館へ行く予定だった。移動方法は、イツカの転移トラップである。
ここ最近、ハンス達の街と領主館の間で人の行き来が激しくなったこともあり、転移トラップを設置したのだ。これにより、往来はかなり楽になっていた。
以前ならば、ハンスを快く思っていない貴族達を警戒して、これほど派手には動けなかっただろう。だが、現状そんなことを言っている場合ではなくなっていた。
隣国の動きや、ナナナのこと。
相手方に「ほかの日本人もいるかもしれない」となれば、この世界の常識は通用しない。警戒しすぎるということはないだろう。
幸い、隣国との関係がきな臭くなってきている事情もあり、ハンスを快く思っていない貴族達も、ハンスのことを気にかけている余裕を失っているらしかった。
それに山脈があるとはいえ、この街は隣国との国境沿いである。ある程度警備を強化するのは、今のご時勢を考えれば自然な流れなのだ。
たとえ文句を言ってきたとしても、突っぱねるだけの理由も用意されている。
「あ、しまった。そうか、ハンスさん飛ばさなきゃいけないんだ。私起きてないと。あ、いや、いいんだ。ジャビコ、勝手にやっといて。メシ食ったら寝るから」
「了解しました。ハンス様にもそのように伝えておきます」
「よろしこー。睡眠不足はお肌のタイテキなのよねぇー」
ジャビコの返事を聞き、イツカは難しい顔で頷きながら食事を再開した。お肌を気にするなら夜更かしも問題なのだが、その辺を突っ込んでくれる人はいない。代わりに、ムツキが不思議そうに首を捻りつつ尋ねた。
「ハンスさん、どんな用事で呼ばれたんです?」
「んー? いや、ナナナちゃんのことかなぁー、と思ってたんだけど、なんか違うらしいのよねぇー。なんか自然災害系の話だって言ってたけど」
イツカはオカズを一つ口に放り込むと、数回咀嚼して呑み込む。
「どーせ厄介ごとだよ。ハンスさんだし」
「巻き込まれ体質ですよね。いい人なんですけど」
それが分かる程度には、ムツキもハンスと関わっている。締めるところは締める人物だが、基本的にハンスはお人好しだ。そのせいで、いろいろなことに巻き込まれるのだろう。
日本人のことに関してもそうだ。
いろいろ気を回して、良くしてくれている。
巻き込まれるだけで終わらず、大体を解決に導いているのだ。それだけ、優秀な人物なのだろうと、ムツキは判断していた。
ムツキは大きく溜め息を吐いて、しみじみと呟く。
「これで、イケメンなら文句ないんですけどねぇー」
「ブレないねムツキちゃんも。レインさんに殺されるよ?」
呆れたように肩を竦めつつも、イツカは笑いを浮かべるのであった。
◇◆◇◆◇
モンスター、魔物、魔獣。
人間を圧倒するものが存在するこの世界では、時としてそれらは災害として扱われていた。
その代表的なものが、ドラゴンである。
ドラゴンは強力な個体が多く、撃退には軍を動かす必要があった。
ただし、一般的なものであればそういった対処も取れるのだが、討伐が不可能なドラゴンも、数種類確認されている。このような竜種は、巨大な体躯、強靭な肉体、空を自在に飛ぶ翼のほかに、災害規模の魔法を駆使する。遥か上空から一方的に災厄を撒き散らし、地上に降り立てば鋭い爪でどんなものでも引き裂く。
まさに天災に等しい、恐怖の権化だ。
それでも強力な攻撃魔法使いを大量に集め、一斉に攻撃すれば、からくも撃退できるかもしれない。事実、過去にはその方法で対処不可能と言われていた竜を倒した記録も残ってはいる。
だが、それは現実的な方法ではない。相手が相手であるため、魔法使いが全滅して、ドラゴンは無傷、なんてことも考えられる。ドラゴンはただ強いだけでなく、翼を持つがゆえに素早く移動できるからだ。
逃げるドラゴンを、多人数で追いかける。
あまり現実味のある話ではないだろう。
仮に網を張ったとしても、事は容易ではない。なにせ相手は野生動物であり、沢山の人間が待ち構えているところにわざわざやって来てくれるわけもないからだ。
強力なドラゴンを倒すなんて、ほぼ机上の空論。過去に討伐した例があるとはいえ、すでに百年以上前の話なのだ。現状、そういった災害に分類されるドラゴンへの対処法は、ただ一つ。
通り過ぎるのを祈り、安全な場所に隠れる。それに尽きるのである。
ハンスがロックハンマー侯爵に呼び出された用件は、そんな大災級のドラゴンに関してであった。
ロックハンマー侯爵から一連の状況を聞き終えたハンスは、なんとも言えない表情で固まっていた。
頭を抱えたいところだが、目の前にロックハンマー侯爵が居るため、そうするわけにもいかない。代わりに痛む胃をさすりながら、内容を確認する。
「ドラゴンが街に向かっている、ということですか?」
「そういうことになると思うのだがね」
ロックハンマー侯爵は大きく頷くと、よく味わうように紅茶を口に含んだ。顔に似合わなくはあるが、ロックハンマー侯爵は無類の紅茶党である。
まあ、それはともかく。
少し前から、ロックハンマー侯爵はコウシロウに依頼し、領内の地図を製作していた。この世界では、地図は軍事機密として扱われる情報だ。そのため重要度が高く、製作は難しい。
なにしろ、人が住んでいる場所以外はほとんどが危険地帯であり、測量もままならない。それでも地図は必要であり、これまでにも作られてはいた。だが、それらは正確性に欠けるものばかりだったのだ。
しかし。
コウシロウの能力「千里眼」を使えば、かなり精密な地図を作ることができる。以前、隣国の実験部隊を撃退したとき、それは証明されていた。
それに目をつけたロックハンマー侯爵が、地図の製作を依頼した、というわけだ。防衛にも役立つ自領の正確な地図は、土地の守護を司るロックハンマー侯爵にとって、喉から手が出るほど欲しいものだったのである。
その地図の製作時に、コウシロウが思わぬものを発見したのが、今の話の始まりなのだという。
「コウシロウ殿が、巨大なドラゴンが居ると言ってね。特徴から、風雪竜。あるいは、ウィンタードラゴンと呼ばれる種であることが分かったのだがね」
それは、ドラゴンの中でもとりわけ強力な部類に入る、まさしく災害規模の種だった。ドラゴンにしては珍しく低気温を好み、冬になると活発に行動する。逆に、夏は標高の高い山岳部などに穴を掘り、夏眠状態になるのだ。
「北部ではもう積雪も確認されているからね。活発になってきているようなのだが、どうもそれが移動しているらしくてね。念のため調査をさせたのだが、どうやら間違いないようなのだよ」
「確かウィンタードラゴンは縄張り意識が強く、滅多にそこから出ないものだと記憶していましたが」
「ふむ。よく知っているね」
「国内で確認されているおおよその天災級魔獣の情報は、頭に入れていますので」
ロックハンマー侯爵は生真面目なハンスの顔を呆れ顔で見る。
確かにそういった知識を持つことは、騎士としてはよいことだろう。ドラゴンと遭遇する確率というのはかなり低いものではあったが、ないわけではない。持っていて無駄な知識ではなかった。だが、必ずしも必要な知識ではない。
勉強熱心なのか心配性なのか。
ハンスの場合は、その両方だろう。
「うむ。なら、話は早いね。この種は個体ごとに厳格に縄張りを持っているそうでね。それを守る傾向があるのだが。ほかの縄張りが空くと、そこに移動することもあるそうでね」
「つまり、どこかのウィンタードラゴンが何らかの理由で縄張りを離れた。そこで、コウシロウ殿が見つけたウィンタードラゴンが、その縄張りを得ようと移動している。ということでしょうか」
「私の部下がそう考えてね。少し調べてみたのだよ。周囲でドラゴン関連の何かがないか、と思ってね。そうしたら、思わぬところで当たりが出てね」
眉間に皺を寄せるハンスをよそに、ロックハンマー侯爵は紅茶を啜る。
「隣国で、長く縄張りを保っていたウィンタードラゴンが一頭、居なくなったそうでね。人里近くに縄張りを持っているので警戒されていた個体なのだが、先ごろ飛び立って以来戻っていないそうなのだよ」
「その空いた縄張りを狙って、我が国のウィンタードラゴンが移動している、と」
「うむ。隣国のウィンタードラゴンがどうなったのかは分からないが、戻っていないのは事実らしいからね。彼らの習性や時期的なものを考えて、無関係ではないと思うのだがね」
別の縄張りに動いたのか、狩りに行っているだけなのか、ほかの魔物に倒されたのか。なんにしても、ハンス達の国のウィンタードラゴンがそこを狙っているのであれば、大きな問題だ。
たとえばその進路上に、村などがあった場合である。上を通り過ぎるだけなら、まったく問題ないだろう。だが、行きがけの駄賃とばかりに、村が破壊される恐れもあるのだ。ウィンタードラゴンは肉食であり、人間は彼らにとって「襲いやすい獲物」なのである。
となれば。
ハンスが呼ばれ、こんなことを話されている理由は、ある程度予想がつく。
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