ホウセンカ

えむら若奈

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おしゃべりなコデマリ

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「たまにでいいから返事欲しいって、頑張って我を抑えつつ送ったんだけどな」
「でもぉこのお店も、るーくんが予約してくれたんでしょおー?」
「うん。翔流は顔広いし、飲食店に詳しいから」
「んふふぅ。忙しくてもぉちゃーんと七海ちゃんの頼みごとを聞いてくれちゃうんだよねぇるーくんは。LINEを既読スルーしちゃうのも、きっと七海ちゃんに甘えたいからだよぉ」

 ゆったりした口調に反して、ヨネちゃんはテキパキとした動きで焼いたお肉を私たちの小皿へ置いていく。そしてまた、新しいお肉や野菜を網の上へ綺麗に並べる。焼肉マスターだ……。

「浅尾きゅんみたいに自立心が超強い人だとねぇ、自分が甘えるより甘えさせてあげたいって気持ちが前に出るんだろうけどぉ。るーくんはどっちかっていうと依存するタイプっぽいからねぇー。七海ちゃんの“こうしてほしい”が強く出ちゃうと“本当は自分が甘えたいのにぃ!”って思っちゃうのかもよぉ」

 なるほど……言われてみれば、そうかもしれない。

 桔平くんは、とてつもなく自立心が強い。もともと一生ひとりで生きていくつもりだったって言っていたし。家はお金持ちなのに、中学生の頃から投資で自己資金を増やすあたり、自立心の塊という感じ。家まで買っちゃうんだもん。

 一方で翔流くんは、人に甘えるのが上手なタイプ。しかもマイペースだから、七海のメッセージを読んでひとりで納得して終わりって感じなのかな。
 私は絶対返事くれなきゃ嫌なんだけど。自分からやり取りを終わらせるのはよくても、相手から切られるのは大嫌い。ええ、ワガママですから。

「……そうなのかなぁ」

 七海は納得しているような、していないような、半々といった表情でタン塩を口に運んだ。

「既読がつくのなら読んでるんだろうしぃ。労いの言葉とー気分転換したい時はいつでも言ってきてねーって送っておけばいいんじゃないかなぁ。追い込まれてる時に彼女から“甘えておっけぃ!”って来たら嬉しくなっちゃうかもだしねぇー」
「……そっか……うん……」

 ヨネちゃんって、人のことよく見ているなぁ。桔平くんもそうだけど、やっぱり絵を描く人は観察力があるよね。七海と翔流くんの性格、ちゃんと分かってるって感じ。

 七海が不満に感じているのは、自分に構ってくれないからというよりも、翔流くんが弱音すら零してくれないからなんだ。そうだよね。七海は頼られたい、甘えられたい性格だもんね。それなのに会えない寂しさが上回っちゃって、労いの言葉をかける余裕がなかったんだ。

 はぁ、なんだかとっても勉強になった。カップルの数だけ、いろんな形があるんだわ。
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