ホウセンカ

小さなイベリス

3

「しないよ。お触り一切なしって言ってたもん」
「えぇ～！やばいね、マジじゃん。さすがに遊びでそこまではしないだろうし、浅尾さんって本気で愛茉のこと好きなんだね」

　改めて他人の口からそう言われると、ものすごく恥ずかしくなる。

　遊ばれているのかもなんて、もう疑ってはいない。あんなに真っすぐで優しいんだもん。それが偽りじゃないことぐらいは分かる。

　ただ、その気持ちが刹那的なもので終わってしまうんじゃないかって思っているだけ。

「進展あったら教えてね。応援してるから！」

　応援というより、面白がっている感じ。でもそれを隠そうとしないのは、七海のいいところなのかもしれない。つくづく、私とは正反対だな。

　私は相手の性格とか状況を考えて、最適な言動を選択しようとする。思ってもいないことだとしても、平気で嘘をつける。本心なんて言えるわけがない。本当の私は、真っ黒で汚いんだもん。

　だからいつかボロが出た時に、嫌われてしまうような気がする。
　それでも、桔平くんに会いたいって気持ちを抑えることはできなかった。LINEの通知がくる度に期待して、落胆して。いつでも会えるように、毎日可愛い洋服で学校へ行った。

　でも、なかなか連絡は来ない。最初の数日は毎日のように連絡の有無を訊いてきた七海も、1週間が過ぎる頃には何も言わなくなった。
　遊ばれたわけじゃない。課題があるからすぐには無理かもって、ちゃんと言ってくれたもん。

　とは言え、やっぱり不安になってきた。桔平くんは食事を忘れるぐらい没頭するタイプみたいだから、私のことなんてすっかり忘れているんじゃないかって。

　次のデートの約束じゃなくてもいい。ちょっとした世間話でもいい。何でもいいから、連絡が欲しかった。