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63.ミリア台風
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『さぁさぁ! 待ちに待った武闘大会がようやく開催されるぞぉぉぉ! 実況を担当するマースです! 今回は拡声魔道具にて実況させて頂きます!』
「「「「ワアァァァァァァ!」」」」
地響きのような腹に来る歓声が鳴り響く。
娯楽がないこの世界だ。この大会を楽しみにしていた人は相当な数いたと思われる。
『本日は、まずは獣人族部門からとなっており、明日が魔族部門となっております!』
実況が言った通り、今日は獣人族部門ということなので俺は観客としてこの大会を楽しんでいる。
もちろん、今日出るのはミリアだ。
ハッコツ家の人達は貴族専用の席で観ている。一緒に観ないかと言われたんだが、遠慮しておいた。貴族というのは俺には合わない気がする。
『それではAブロックから行きましょう! まずは本戦の出場を決めるバトルロイヤルです! Aブロックの方は中央のステージに集まってください!』
この会場は円形になっていて外側には観客席が階段状に高くなっている構造であり、内側には中央に円形のステージ。直径百メートル程の円だと思われる。
そこに今、ゾロゾロと選手が出てきた。
ざっと三十人程といった所であろうか。
犬、猫、虎、鷹、象と様々な獣人族が集まっている。なんだか動物園で行われているイベントを観ているような感覚になってくる。
そんな中にミリアが出てくるのかと思うと、目立つのだろうなと考えてしまう。
一体何ブロックになったのか。ちゃんと見てこなかったからいつ出てくるのか分からないのだ。
何せ皆が割り振りの紙を見るのに必死で張り出されている場所が大変な朝の満員電車の様相を呈していた。
俺はあそこに入っていく気には到底ならなかった。
『あーーーっとぉぉぉ! このブロックは虎の獣人族に決まりましたぁぁぁ!』
「「「「ワアァァァァァァ!」」」」
次々とブロックごとのバトルロイヤルが終わっていく中、次のブロックの人達が出てきた。ある人が出てきた時に突如会場がザワついた。
「おい! 人族の女の子がいるぞ!?」
「あの子は何かの間違いじゃないのか?」
「あれ、大丈夫か!? 迷子じゃねぇよな?」
会場をザワつかせている張本人はミリアだ。
本人は気にした素振りを見せずに手を振りながらステージに上がっていく。
『それではHブロックのバトルロイヤルを開始します! 始め!』
ステージにいる獣人族の注目はもちろんミリアだ。だが、ただ注目されているだけで闘いの標的にはならないようだ。
ミリアをそっちのけで戦いが始まっている。みんな武器はそれぞれ。
実はこの武闘大会、命の危険がある危ない大会なのだ。
出場者は死んだら自己責任となり、開催者側は責任を持ちませんよと謳われている。
そんな中に人族の女の子が紛れているのである。それは観客は心配する。
「あの子、大丈夫か?」
「なんであんな所に?」
「誰か助けてやれよ」
口々にミリアを心配する声を発している。
俺は落ち着いたものでジッとミリアの動向を見つめる。ただ除け者にされているだけでは終わらない。
ミリアが動いた。
近くにいたものの腕を掴んだ。
と思ったらそのままその人を振り回し始めた。
「おい! あの子馬の獣人族を振り回しているぞ!?」
「なんて力なんだ!」
「みんな呆気に取られてるぞ!?」
その観客の言葉通り、ステージにいた獣人族達は目と口を開いて固まっている。
お構い無しのミリア台風は選手達をドンドン場外に吹き飛ばしていく。
『クックックックッ。ミリアはホントに滅茶苦茶だな』
退屈しないなミリアは。
きっとトウカお嬢様も喜んでいるに違いない。
ある程度の人数を吹き飛ばしたら掴んでいた馬の人は場外に投げ捨てた。
その出来事を目の当たりにした他の選手達の矛先はミリアに向いた。
集中して攻撃されだしたのだ。
避けては正拳突き。避けては上段蹴り。避けては回し蹴り。
次々と場外に吹き飛ばされていく獣人族達。
「あの子の攻撃綺麗じゃないか?」
「あぁ、なんだか蹴りの形とかカッコイイよな」
「なんだか、舞っているみたいだ」
そう。ガルン流空手を修めたミリアのは演舞をしているような。攻撃を避ける動作、攻撃をする動作に無駄がなく。蝶のように舞い蜂のように刺すとはまさしくミリアにピッタリの言葉に思えた。
ステージ上に残りの人数が少なくなってくると、みんな警戒しながら離れて行く。
バトルロイヤルは一人になるまでは終わらない。時間稼ぎというものは通用しない大会だ。
そうなって来ると撃沈覚悟で向かってくる者がいる。
ただまっすぐ突っ込んでくる猪の獣人族をスルリと横に避けてコメカミに引き絞った突きを放つ。重量感のある音をさせてステージに倒れた。それを片手で持って場外にヒョイと避けてあげるミリア。
もはや前前世の時にいた猛獣使いのようにも見えてくる。
迫り来る獣達をヒラリと躱してステージにまた一人沈めた。
こうなってくるとミリアの独壇場である。
最後にステージに立っていたのはやはりミリアだった。
『なんとなんとぉぉぉぉ! このブロックの通過者は人族の女の子だぁぁぁぁぁ! 一体誰が予想できたでしょうかぁぁぁぁ!?』
この武闘大会に巻き起こったミリア台風はもっと大きくなって観客の心に旋風を巻き起こす。
「「「「ワアァァァァァァ!」」」」
地響きのような腹に来る歓声が鳴り響く。
娯楽がないこの世界だ。この大会を楽しみにしていた人は相当な数いたと思われる。
『本日は、まずは獣人族部門からとなっており、明日が魔族部門となっております!』
実況が言った通り、今日は獣人族部門ということなので俺は観客としてこの大会を楽しんでいる。
もちろん、今日出るのはミリアだ。
ハッコツ家の人達は貴族専用の席で観ている。一緒に観ないかと言われたんだが、遠慮しておいた。貴族というのは俺には合わない気がする。
『それではAブロックから行きましょう! まずは本戦の出場を決めるバトルロイヤルです! Aブロックの方は中央のステージに集まってください!』
この会場は円形になっていて外側には観客席が階段状に高くなっている構造であり、内側には中央に円形のステージ。直径百メートル程の円だと思われる。
そこに今、ゾロゾロと選手が出てきた。
ざっと三十人程といった所であろうか。
犬、猫、虎、鷹、象と様々な獣人族が集まっている。なんだか動物園で行われているイベントを観ているような感覚になってくる。
そんな中にミリアが出てくるのかと思うと、目立つのだろうなと考えてしまう。
一体何ブロックになったのか。ちゃんと見てこなかったからいつ出てくるのか分からないのだ。
何せ皆が割り振りの紙を見るのに必死で張り出されている場所が大変な朝の満員電車の様相を呈していた。
俺はあそこに入っていく気には到底ならなかった。
『あーーーっとぉぉぉ! このブロックは虎の獣人族に決まりましたぁぁぁ!』
「「「「ワアァァァァァァ!」」」」
次々とブロックごとのバトルロイヤルが終わっていく中、次のブロックの人達が出てきた。ある人が出てきた時に突如会場がザワついた。
「おい! 人族の女の子がいるぞ!?」
「あの子は何かの間違いじゃないのか?」
「あれ、大丈夫か!? 迷子じゃねぇよな?」
会場をザワつかせている張本人はミリアだ。
本人は気にした素振りを見せずに手を振りながらステージに上がっていく。
『それではHブロックのバトルロイヤルを開始します! 始め!』
ステージにいる獣人族の注目はもちろんミリアだ。だが、ただ注目されているだけで闘いの標的にはならないようだ。
ミリアをそっちのけで戦いが始まっている。みんな武器はそれぞれ。
実はこの武闘大会、命の危険がある危ない大会なのだ。
出場者は死んだら自己責任となり、開催者側は責任を持ちませんよと謳われている。
そんな中に人族の女の子が紛れているのである。それは観客は心配する。
「あの子、大丈夫か?」
「なんであんな所に?」
「誰か助けてやれよ」
口々にミリアを心配する声を発している。
俺は落ち着いたものでジッとミリアの動向を見つめる。ただ除け者にされているだけでは終わらない。
ミリアが動いた。
近くにいたものの腕を掴んだ。
と思ったらそのままその人を振り回し始めた。
「おい! あの子馬の獣人族を振り回しているぞ!?」
「なんて力なんだ!」
「みんな呆気に取られてるぞ!?」
その観客の言葉通り、ステージにいた獣人族達は目と口を開いて固まっている。
お構い無しのミリア台風は選手達をドンドン場外に吹き飛ばしていく。
『クックックックッ。ミリアはホントに滅茶苦茶だな』
退屈しないなミリアは。
きっとトウカお嬢様も喜んでいるに違いない。
ある程度の人数を吹き飛ばしたら掴んでいた馬の人は場外に投げ捨てた。
その出来事を目の当たりにした他の選手達の矛先はミリアに向いた。
集中して攻撃されだしたのだ。
避けては正拳突き。避けては上段蹴り。避けては回し蹴り。
次々と場外に吹き飛ばされていく獣人族達。
「あの子の攻撃綺麗じゃないか?」
「あぁ、なんだか蹴りの形とかカッコイイよな」
「なんだか、舞っているみたいだ」
そう。ガルン流空手を修めたミリアのは演舞をしているような。攻撃を避ける動作、攻撃をする動作に無駄がなく。蝶のように舞い蜂のように刺すとはまさしくミリアにピッタリの言葉に思えた。
ステージ上に残りの人数が少なくなってくると、みんな警戒しながら離れて行く。
バトルロイヤルは一人になるまでは終わらない。時間稼ぎというものは通用しない大会だ。
そうなって来ると撃沈覚悟で向かってくる者がいる。
ただまっすぐ突っ込んでくる猪の獣人族をスルリと横に避けてコメカミに引き絞った突きを放つ。重量感のある音をさせてステージに倒れた。それを片手で持って場外にヒョイと避けてあげるミリア。
もはや前前世の時にいた猛獣使いのようにも見えてくる。
迫り来る獣達をヒラリと躱してステージにまた一人沈めた。
こうなってくるとミリアの独壇場である。
最後にステージに立っていたのはやはりミリアだった。
『なんとなんとぉぉぉぉ! このブロックの通過者は人族の女の子だぁぁぁぁぁ! 一体誰が予想できたでしょうかぁぁぁぁ!?』
この武闘大会に巻き起こったミリア台風はもっと大きくなって観客の心に旋風を巻き起こす。
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