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55.他種族国家トイロ
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俺達はアントの巣から出た先で街のようなものを見つけたのでそこに向かって歩いていたのだが、異変に気づいた。
門番が虎とリビングアーマーなのだ。
モンスターがなぜ?
「お前達どこから来た?」
二足歩行の虎が喋った。
『えーっと、この先の荒野地帯の向こうです』
「ほぉ? そいつは珍しいあそこを超えてくるとは相当の手練だな。んっ? あんた人族か?」
ローブのフードを外して顔を見せる。
『いえ、俺はスケルトンです。こっちは人族のミリア』
「はぁぁ。人族とは珍しい。人族は弱いから気をつけるんだぞ? あんたはスケルトン族だな。あれ? あんたローブの中は何か着てるか?」
ん? 骨だけど、なにか着る必要があるのか?
『いや、そのままだが?』
「おいおい。この国の常識は知ってるだろう? 全種族服は着る決まりなんだから、守ってくれよ?」
そんな話になってるんだな。この国。
っていうかモンスターも生活する街なの?
『あ、あぁ。そうだったな。着るのがなくてな。街で買うよ』
「そうしてくれ。ちゃんと伝えたからな? 言っておかないと、後で貴族たちにドヤされるからな」
貴族もいるんだ。
街に入るとそれはそれは仮装パーティーかと思うような光景であった。
犬、猫、馬、虎、ライオン、熊。
動物が居るかと思ったら、スケルトン、ゾンビ、リッチ、リビングアーマー、ゴブリン、オーガ等いるわいるわモンスター達。
なにこの街?
キョロキョロ見てしまうが、街の人達も人族が珍しいようでミリアをチラチラと見ている。
「私ってそんなに珍しいのかなぁ?」
『そりゃ、この光景の中では目立つだろうな』
街をフラフラと歩いていると服屋を見つけた。
服を買っておかないとな。
中に入るとそこに居たのは熊の店員さん。
「あらあら。人族は珍しいわね。あなたはスケルトン族ね、何をお探しで?」
『あー。動きやすい服が欲しいんですが』
「はいはい。スケルトン族はこっちの服ね。細いからねぇ。良いわよねぇ、細くて!」
細いっていうか、骨だからね。
肉がないから細いっていうのかこれ?
『あっ、はぁ』
「これカッコイイじゃん!」
ミリアは服を嬉々として選んでいる。
取り出した服は白い襟なしのシャツだ。
バンドカラーシャツと言うやつか。
動いたら破れない? それ?
『動きやすいのがいいんだが』
「えぇー!? ワガママだなぁ」
なんだかこんな日常の会話に幸せを感じるとは。俺も服を着る日が来たか。
「これなんかどう?」
白いTシャツだが、胸にはよく分からないマークがプリントされていて半袖から先が黒い革のアームが縫い付けてある。
わー。なんかパンクゥー。
『これ、似合うか?』
「あっ、下はこれね!」
それは黒い革パンであった。
『お、おぉう』
「私も選んでいい?」
少し横に傾げながら聞くミリアは少し色気があって可愛らしい。
だからその笑顔は反則なんだって。
『おう。好きなのを選ぶといい』
と言ってカッコつけてしまう俺。
ミリアの背負っていた袋に金はある。
あれ? 金って一緒か?
ミリアが服を選んでいる隙に熊さんに聞く。
『あのー。ここの料金って、これで払えます? ちよっと向こうの国から来たもんで……』
「大丈夫だよ。金貨だろ? ここの服屋はそんなには必要ないけど、お釣りはあるから安心しな」
『あっ、ありがとうございます』
良かったぁ。使えたよ。
「ねぇ? これ似合うかな?」
ミリアが選んだ服はシンプルな素材のブラウスの肩口にフリルが付いているものであった。
『似合うぞ。それを着たらみんな振り向くな』
「ふふふっ。ここでは人族ってだけで振り向かれるからなぁ」
こんだけ他種族いたら人族が珍しいだろうな。
俺まで普通に住民として接せられるあたりが慣れないが、受けいられている感じがあって少し心が踊る。
「これも買おー」
フレアスカートも取り出すと自分に当ててウンウンと頷いている。
少し大人な清楚系お姉さんみたいじゃないか。
それを着たミリアを想像する。
うん。いい。なんか妖艶な感じがあって。
けど、その笑顔は無邪気さがあって。
なんかギャップがあって。
「──────ル? ナイル!?」
『お、おう!? どうした?』
「どうしたじゃないよ! どうしたの? クネクネしてて気持ちら悪かったよ? これが欲しいから一緒に買おう?」
『わ、わかった』
「あっ、あの、ここで着替えて良いですか? あと、あれも買うので、着ていいですか? そこのスケルトンがお金払うんで」
指さした方向は少し華やかな肌着が並んでいた。そういえばミリアの服、最近買ってなかったな。
「はいはい。良いですよ。この数だと、さっきの金貨を貰えれば丁度だよ」
『こんなに買ったのにいいんですか?』
「あぁ。大丈夫さ。あんた、人族と居るなんて珍しいね? この国には滅多にいないよ」
『そうなんですか? 荒野を抜けた先の国から来たんですけど』
「あぁ。シュアルズ王国から来たのかい。だから人族がいるんだね。あんたはスケルトン族だから、アンダータウンの出身なんでしょう?」
『えっ? えぇと。なんと言いますか、気がついたらシュアルズ王国?にいたので』
「なんだい。捨て子だったのかい? 可哀想にねぇ。アンダータウンに行ったらなにか思い出すかもしれないよ?」
『あっ、そうですね。ありがとうございます! ちなみに、ここってなんていう国ですか?』
「ここは他種族国家、トイロよ」
『トイロ。ありがとうございます!』
「お待たせぇー」
目に飛び込んできたのはメリハリのある体のラインが出たフリルの着いたブラウスにフレアスカート。なんて可憐なんだ。
「あぁよかった。着れたんだね。ゾンビ族用だけど入ってよかったよ」
なんか複雑な気分。
「じゃあ、これでお願いします!」
金貨を出して会計を済ませると俺も着替えてローブを羽織り店を出た。
ミリアは久しぶりに服を着て出掛けているためルンルンとした気分を隠せないのだろう。街をスキップして進む。
「おい! 骨の分際で俺様に当たってんじゃねぇよ!?」
えっ? 俺?
門番が虎とリビングアーマーなのだ。
モンスターがなぜ?
「お前達どこから来た?」
二足歩行の虎が喋った。
『えーっと、この先の荒野地帯の向こうです』
「ほぉ? そいつは珍しいあそこを超えてくるとは相当の手練だな。んっ? あんた人族か?」
ローブのフードを外して顔を見せる。
『いえ、俺はスケルトンです。こっちは人族のミリア』
「はぁぁ。人族とは珍しい。人族は弱いから気をつけるんだぞ? あんたはスケルトン族だな。あれ? あんたローブの中は何か着てるか?」
ん? 骨だけど、なにか着る必要があるのか?
『いや、そのままだが?』
「おいおい。この国の常識は知ってるだろう? 全種族服は着る決まりなんだから、守ってくれよ?」
そんな話になってるんだな。この国。
っていうかモンスターも生活する街なの?
『あ、あぁ。そうだったな。着るのがなくてな。街で買うよ』
「そうしてくれ。ちゃんと伝えたからな? 言っておかないと、後で貴族たちにドヤされるからな」
貴族もいるんだ。
街に入るとそれはそれは仮装パーティーかと思うような光景であった。
犬、猫、馬、虎、ライオン、熊。
動物が居るかと思ったら、スケルトン、ゾンビ、リッチ、リビングアーマー、ゴブリン、オーガ等いるわいるわモンスター達。
なにこの街?
キョロキョロ見てしまうが、街の人達も人族が珍しいようでミリアをチラチラと見ている。
「私ってそんなに珍しいのかなぁ?」
『そりゃ、この光景の中では目立つだろうな』
街をフラフラと歩いていると服屋を見つけた。
服を買っておかないとな。
中に入るとそこに居たのは熊の店員さん。
「あらあら。人族は珍しいわね。あなたはスケルトン族ね、何をお探しで?」
『あー。動きやすい服が欲しいんですが』
「はいはい。スケルトン族はこっちの服ね。細いからねぇ。良いわよねぇ、細くて!」
細いっていうか、骨だからね。
肉がないから細いっていうのかこれ?
『あっ、はぁ』
「これカッコイイじゃん!」
ミリアは服を嬉々として選んでいる。
取り出した服は白い襟なしのシャツだ。
バンドカラーシャツと言うやつか。
動いたら破れない? それ?
『動きやすいのがいいんだが』
「えぇー!? ワガママだなぁ」
なんだかこんな日常の会話に幸せを感じるとは。俺も服を着る日が来たか。
「これなんかどう?」
白いTシャツだが、胸にはよく分からないマークがプリントされていて半袖から先が黒い革のアームが縫い付けてある。
わー。なんかパンクゥー。
『これ、似合うか?』
「あっ、下はこれね!」
それは黒い革パンであった。
『お、おぉう』
「私も選んでいい?」
少し横に傾げながら聞くミリアは少し色気があって可愛らしい。
だからその笑顔は反則なんだって。
『おう。好きなのを選ぶといい』
と言ってカッコつけてしまう俺。
ミリアの背負っていた袋に金はある。
あれ? 金って一緒か?
ミリアが服を選んでいる隙に熊さんに聞く。
『あのー。ここの料金って、これで払えます? ちよっと向こうの国から来たもんで……』
「大丈夫だよ。金貨だろ? ここの服屋はそんなには必要ないけど、お釣りはあるから安心しな」
『あっ、ありがとうございます』
良かったぁ。使えたよ。
「ねぇ? これ似合うかな?」
ミリアが選んだ服はシンプルな素材のブラウスの肩口にフリルが付いているものであった。
『似合うぞ。それを着たらみんな振り向くな』
「ふふふっ。ここでは人族ってだけで振り向かれるからなぁ」
こんだけ他種族いたら人族が珍しいだろうな。
俺まで普通に住民として接せられるあたりが慣れないが、受けいられている感じがあって少し心が踊る。
「これも買おー」
フレアスカートも取り出すと自分に当ててウンウンと頷いている。
少し大人な清楚系お姉さんみたいじゃないか。
それを着たミリアを想像する。
うん。いい。なんか妖艶な感じがあって。
けど、その笑顔は無邪気さがあって。
なんかギャップがあって。
「──────ル? ナイル!?」
『お、おう!? どうした?』
「どうしたじゃないよ! どうしたの? クネクネしてて気持ちら悪かったよ? これが欲しいから一緒に買おう?」
『わ、わかった』
「あっ、あの、ここで着替えて良いですか? あと、あれも買うので、着ていいですか? そこのスケルトンがお金払うんで」
指さした方向は少し華やかな肌着が並んでいた。そういえばミリアの服、最近買ってなかったな。
「はいはい。良いですよ。この数だと、さっきの金貨を貰えれば丁度だよ」
『こんなに買ったのにいいんですか?』
「あぁ。大丈夫さ。あんた、人族と居るなんて珍しいね? この国には滅多にいないよ」
『そうなんですか? 荒野を抜けた先の国から来たんですけど』
「あぁ。シュアルズ王国から来たのかい。だから人族がいるんだね。あんたはスケルトン族だから、アンダータウンの出身なんでしょう?」
『えっ? えぇと。なんと言いますか、気がついたらシュアルズ王国?にいたので』
「なんだい。捨て子だったのかい? 可哀想にねぇ。アンダータウンに行ったらなにか思い出すかもしれないよ?」
『あっ、そうですね。ありがとうございます! ちなみに、ここってなんていう国ですか?』
「ここは他種族国家、トイロよ」
『トイロ。ありがとうございます!』
「お待たせぇー」
目に飛び込んできたのはメリハリのある体のラインが出たフリルの着いたブラウスにフレアスカート。なんて可憐なんだ。
「あぁよかった。着れたんだね。ゾンビ族用だけど入ってよかったよ」
なんか複雑な気分。
「じゃあ、これでお願いします!」
金貨を出して会計を済ませると俺も着替えてローブを羽織り店を出た。
ミリアは久しぶりに服を着て出掛けているためルンルンとした気分を隠せないのだろう。街をスキップして進む。
「おい! 骨の分際で俺様に当たってんじゃねぇよ!?」
えっ? 俺?
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